月刊日本語からいらした方はこちらへ!

2017年02月05日

A.J. Juliani 著 ”Inquiry and Innovation in the Classroom: Using 20% Time, Genius Hour, and PBL to Drive Student Success”

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス



冒険家の皆さん、今日もりんごの樽に隠れて海賊の秘密の計画を盗み聞きしていますか?

さて、この本はもうずいぶん前に読んでいてセミナーでは熱く紹介したりもしていたのです​​が、ブログの方ではなかなか書く時間が取れなかったので、内容を忘れてしまう前に備忘録としてもここでご紹介しておきたいと思います。

内容は続きを読む
posted by 村上吉文 at 16:07 | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年09月04日

『140 TWITTER TIPS FOR EDUCATORS』

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も40秒で支度していますか。

さて、先日、日本語教育連絡会議という集まりに出席したのですが、今回は往復に4日もかかるという移動の長い出張でしたので、その間に本を一冊読みました。『140 TWITTER TIPS FOR EDUCATORS』という本です。続きを読む
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2016年08月10日

George Couros『The Innovator’s Mindset』

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


海と本とサンダル




冒険家の皆さん、今日も帆船のマストに登って水平線の向こうに思いを馳せていますか?

さて、おかげさまで一週間あまり、職場を離れてゆっくり休暇を取ることができました。
休暇中はネットに繋がらない環境にいたので、観光などの他に、集中して本を読む時間が取れました。

今回は"The Innovator’s Mindset: Empower Learning, Unleash Talent, and Lead a Culture of Creativity"をKindleで読みました。続きを読む
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2014年07月26日

「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法」

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もたいまつを持って吸血コウモリのいる洞窟に忍び込んでいますか?

さて、明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)を読みました。2008年の本で、すでに続編も出版されているようですが、日本語教育界にとってはまだまだ斬新な目で見ることができます。特に、6年前に広告業界を取り巻いていた状況と、現在の、特に海外の日本語教育を取り巻く状況が非常に似ていることに驚きます。

著者は、ネットが出現する以前、広告はなかなかよく効いていたとしており、その理由を3つあげています。
続きを読む
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2013年12月30日

成毛眞『勉強上手』



冒険家の皆さん、今日もナイフ一本でワニと戦っていますか?

さて、マイクロソフトの日本社長だった成毛眞さんの『勉強上手』を読みました。けっこう、僕の考えに近いところがあったので、ご紹介しておきます。

同業者の皆さんに一番共有したいのは、ある種の語学教師が得意とする、異なる表現の微妙な違いの説明とかにどれほどの意味があるのか、という疑問です。例えば続きを読む
posted by 村上吉文 at 19:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年12月14日

「デジタルネイティブのための近未来教室」の主題は技術ではなく、教授法だった!

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


Digital natives

冒険家の皆さん、今日もロープの切れそうな吊り橋を駆け抜けていますか?

さて、『ディジタルネイティヴのための近未来教室 ―パートナー方式の教授法―』を読みましたので、簡単にご紹介しておきます。この本の著者、マーク・プレンスキーの名前は「テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから」で非常に印象に残っていたので、新作が出たということで、さっそくアマゾンで取り寄せました。残念ながら、現時点ではソニーリーダーストアはもちろん、Amazonキンドルでも電子化されていないようです。

さて、前著の方向性と、今回のタイトルから「教育における技術」が本書の主題かと思っていたのですが、実は違っていまして、良い意味で裏切られました。続きを読む
posted by 村上吉文 at 21:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年11月05日

2013年10月の日本語関係の新刊

冒険家の皆さん、こんにちは。
11月に入りましたので、10月分の日本語教育関連の新刊情報をお届けします。今回はAmazonで探してみました。最後の金田一先生の本が売れそうな感じですね。みなさんはどの本が一番おもしろそうですか?

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posted by 村上吉文 at 14:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年10月08日

9月の日本語教育関係の新刊

先月まではカイロ日本文化センターの業務として中東の先生方に毎月の日本語教育関係の新刊をご紹介していたのですが、10月6日をもって任期の終了に伴い退職しましたので、今月は「むらログ」でご紹介します。来月はハンガリー赴任直前なので、できるか不明です。

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posted by 村上吉文 at 14:42 | Comment(2) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年07月21日

『ウェブで政治を動かす』

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




他者の著作物を二次利用するには「引用」とか「転載」とか、いくつかの方法があります。
「引用」は元の著作者に無断でできますが、いくつか条件があります。
たとえば、引用文がメインになってはいけないというもの。
ですから、ブログで他の人の著作物を引用する場合、全体の半分以上が引用になってはいけません。その引用に対する感想や批判などの方が多くなければならないわけですね。また、元の著作物の半分以上を引用することもできません。詳しくはこちらのQ&Aの3つ目を参照のこと。

ところが、今回ご紹介する津田大介による「ウェブで政治を動かす! 」は著作権が「クリエイティブ・コモンズ」になっているんですよ! つまり、勝手に全文をコピーしちゃってもいいのです。「引用」でなくてもいいので、それに対して解説などを書く必要もありません。これは職業として物を書いている人の、自分の作品に対する扱いとしては非常に画期的なのではないでしょうか。

ということで、面白かったところを抜き書きしてみますね。

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posted by 村上吉文 at 04:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年07月03日

『引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす』

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


宮本亜門の『引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす (NHK出版新書 389)』を読みました。主な想定読者としては、企業や公的機関などで課長職についたばかりの人などかも知れませんが、教育関係者にとっても非常に参考になる本です。

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posted by 村上吉文 at 14:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年05月12日

学ぶ意欲の心理学

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


Digital cameras are a big hit with the kids

学ぶ意欲の心理学』という本を読みました。いろいろ気づきの多い本でしたが、中でも以下の二点は非常に同感です。

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posted by 村上吉文 at 11:56 | Comment(1) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2012年06月11日

『村上式シンプル英語勉強法』

先日中東の某国へ出張したのですが、飛行機の中で『村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける』という本を読みました。あ、僕が新刊を出すというお知らせではありません。Google の副社長、そしてGoogleJapanの会長を務めた村上氏の英語学習法です。ライティングやリスニング、スピーキングはそれほどでもありませんでしたが、リーディングと語彙の増やし方はなかなか参考になりました。

まずリーディングですが、驚きました。続きを読む
posted by 村上吉文 at 15:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2012年02月15日

「9歳の壁」

9sainokkabe.jpg

 「9歳の壁」というのは母語の維持とかバイリンガル教育の点からも非常に重要な概念だと思うのですが、検索してみると日本ではどうも聴覚障害の関係で語られていることが多いようです。海外在住者が少ない時代がずっと続いていたのですから、以前はもちろんそれで当然でした。しかし、最近は我が家も含めて海外で子供を育てる家庭も少なくないと思いますし、逆に日本で日本語を話せない子供に対応しなければならない教育関係者も増えていると思いますので、今日は海外に暮らす健常児の面で第一人者による研究の事例をご紹介します。

 実を言うと、僕自身が自分の娘をカイロの日本人学校に入れたのにも、このグラフが非常に大きく影響しています。「9歳の壁」というのは概念としては知っていましたが、ここまで明瞭な違いがあるとは、しょうじき思っていなかったのです。

 このグラフが示しているのは、簡単に言ってしまえば、「9歳までに海外に出た子供は母語の力が落ちる。10歳以上になってから海外に出れば母語も伸びる」ということです。つまり、9歳までに母語の基礎を作っておけば、それ以降は現地語だけでなく母語も伸ばすことができるが、母語の基礎ができていないうちに母語の使用頻度が少ない環境に入ってしまうと、現地語はともかく母語は衰えていってしまうというわけです。

 このグラフは中島和子先生の「バイリンガル教育の方法―12歳までに親と教師ができること」という本に出てきます。学術論文ではないので、どなたでもご関心のある方にはご一読をお勧めします。うちのように海外に住んでいる日本人はもちろん、外国から来た家庭の子供の発達に関係している日本の先生方も必読ですよ。

 その他、最近ではよく知られるようになってきてはいますが、この本では外国語を伸ばすにはまず母語をきちんと育てることが大切であることなども詳細なデータを紹介しながら説いています。大人ならともかく、日本の学校で子供に「日本語以外は使わないにしようね」などと親切心から言っている先生もいると聞きますが、そういった場所でもこの本は役に立つのではないでしょうか。



posted by 村上吉文 at 14:53 | Comment(2) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2012年01月14日

『CLIL 新しい発送の授業 −理科や歴史を外国語で教える!?−』




なかなか面白い本でした。本書のタイトルにあるCLILとはContent Language Integrated Learningの略で、このブログで何度も取り上げてきたCBI(Content-Based Instruction)などとかなり近い概念です。というか、何が違うのかよく分かりません。もしかしたら同じかもしれません。

しかし、本書『CLIL 新しい発想の授業』は堅苦しい論文集ではないので、CBIなどの専門知識がなくても特に問題なく読み進めることができそうです。
もちろん理論的な説明もあるのですが、実践例なども非常に豊富に収録されているので、具体的にイメージしにくい人にも入門書として最適です。

また、これらの書籍では「成功例だけ紹介されているのでは?」という疑念がつきまといがちですが、本書はマレーシアでの失敗例なども紹介していますので、あまり偏った立場から書かれた本ではないようです。

さて、日本語教育でこのCLILがすぐにも導入できそうなのは、大学入学前の予備課程で行われる日本語教育の現場ではないでしょうか。
たとえばマレーシアのAAJなどでは日本語と同時に数学や理科などの科目も教えられていますし、日本の国内では国際学友会などが同じようなプログラムを実施していました。
また、実際にこういった施設の卒業生たちは日本語でそれぞれの専門を学ぶことになるわけで、卒業前からそういった練習ができていると、大学入学後の生活にもスムーズに移行できることでしょう。

そういえば、この本が出版されるときにツイッターで紹介したら、「母語でやるのと同じ成果が見込めるのかなあ」とコメントをいただきましたが、本書17ページにはそういう誤解を紹介した上で、「ところが、実際には、CLIL授業を受けた生徒の学力は決して見劣りしないし、干渉するどころか、逆に学力を促進する報告もあります」という記述があります。ただし、上に述べたマレーシアの失敗例の章では、目標言語は伸びたものの、数学などの学科では却って成績が下がったという事例も紹介されています。

個人的には、初級前半ぐらいの時点ではちょっと難しいかと思いますが、中級に近づいてきたらこういった試みは充分に可能なのではないかと思っています。「にほんご45じかん」などの簡潔にまとめられた主教材でまずは日本語だけを集中的に学び、そのあとはCLILや自律学習などの方法で日本語を単に目標言語としてだけでなく、学ぶためのツールとしても使いながら、成長していくのが学びの本来の姿に近いように思います。

その他、僕は読んでいないのですが、以下のような書籍もあるようです。

posted by 村上吉文 at 00:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2011年09月03日

英語が上手な日本語教師でも『レバレッジ英語勉強法』は読むべし。



本田直之さんの『レバレッジ英語勉強法』を読みました。この本は、海外で教える日本語教師なら、すでに英語は充分に話せても目を通しておいた方がいいと思うので、簡単にご紹介します。

ここで繰り返し述べられているのは、「偏った英語」ということです。カクテルパーティーのようにさまざまな話題が交錯する場面では広い範囲の英語が必要ですが、「サーフィンで使う英語」などと限定すればそれほどたくさんの勉強は必要なく、三ヶ月の努力で上達が実感できるために次の段階に進みやすいと本田氏は主張しています。(ちなみに、「三ヶ月で上達するか一生上達しないか」のどちらかなんだそうです。こういう決め台詞、かっこいいですね)

この本は読者を「日本にて海外に留学などしたことがない人」と限定していますが、これは日本語を教える場合は「海外で日本語を教えている日本語教師」にとって非常に共通することが多いということでもあります。

日本に来ている日本語学習者の場合はインプットの量も多いし、必要にも迫られているので該当しない場合もありますが、海外で学んでいる日本語学習者は週に数時間程度の日本語学習で、しかも授業時間以外は日本と全く関係ない時間を過ごしている場合が多いですから、こうした対応は本当に大切だと思います。

もちろん、「偏った日本語」というのは学習者によって異なるので、自律学習とかCBIに重なる考え方が大切になります。

特に129ページの「英会話スクールを偏ったアウトプットの場にカスタマイズする」というところは、まさに僕がいつもこのブログで主張していることなので嬉しくなりました。最後の段落の小見出しには「一般的なテキストを使わず、自分で偏った授業を作る」とあります。本田氏はあくまでも学習者側の視点で書いているのですが、教師側の視点でこの主張を読んでみると、要するに一人ひとりのニーズを把握して、それに合った授業をすることが求められているということになります。

それこそが海外の数少ない学習時間で日本語を学んでいる人たちに報いる方法なのではないかと思います。

その他、この本にはこんなことが書いてあります。
・即効性と遅効性のアイテムの配分
・「四感」を駆使し「偏った英単語」を5回転させるレバレッジ英単語暗記法
・「アウトプット」を基準に」インプット」すればムダがゼロに近づく
・「きっかけ語」と「あいづち語」を用意する
・「偏ったリスニング教材」の選び方

レバレッジ英語勉強法』、なかなか刺激的な本ですので、教科書に偏重した従来の日本語教育に疑問を持っていらっしゃる方は、ぜひご一読ください。
posted by 村上吉文 at 18:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年12月25日

『デジタル教育は日本を滅ぼす』わけがない

この本、非常に参考になりました。また、同時に非常に勇気づけられました。というのも、教育のIT化に反対している人のレベルがあまりにも低いことが明示されているからです。


【教師や学校の役割は、問題を解く、正解を出すという作業だけなのか?】

著者の田原総一朗氏はデジタル教科書について、まず以下のように批判しています。
 音楽も聴けるし、算数の解き方もレベルにあわせて音声で解説してくれるだろう。それでもまだ分からないことがあったら、検索すればよい。たとえば「伊藤博文がどういう人か」「アメリカってどんな国か」ということが、その場で検索することができるのだ。
 つまり、問題を解く、正解を出すという作業が自己完結してしまうのである。これは便利で効率がよい。だが実はそのことこそが問題なのである。学校へ何をしに行くのか、教師とは何をする存在なのか。ネットの上で自己完結することにより、教師も学校もいらなくなってしまうのである。

もうこの短い引用の中だけでもいくつもの矛盾や誤解があるので、どこから批判すればいいのか分からないほどです。

まず、田原氏は別の部分では「日本の教育は正解を与えることしかしない」と批判しておきながら、上記の引用では、田原氏自身が「教師も学校もいらなくなってしまう」として、教師や学校の存在意義を「問題を解く、正解を出すという作業」にしか見いだせていません。

また、「問題を解く、正解を出すという作業が自己完結してしまう」というだけで「教師も学校もいらなくなってしまう」のなら、デジタル教科書以前に「図書館」があるだけで「教師も学校もいらなくなってしまう」ことになってしまっているでしょう。図書館だけで小学校レベルの「正解」は見つけられるでしょうから。

しかし、いまどき日本ではこんなレベルの低い授業しかしていないんでしょうか。

僕の専門は日本語教育ですが、まだ教壇に立つ前の学生ですら、こいった「知識を与える段階」が教育の一部分にすぎないことを知っています。僕自身だって二十年前にそのように教わったし、また、現在僕が担当する養成講座でもそのように教えています。

知識だけ与えれば教育が成立するなどという考えは、外国語教育の世界では戦前で終わっていたと言っていいいいのではないでしょうか。戦後はオーディオ・リンガル・メソッドに続いてコミュニカティブ・アプローチなどが盛んになりましたが、これらはいずれも「分かっているだけじゃ話せない」という基本的な認識を共有しています。

考えてみればすぐに分かります。田原氏は「伊藤博文」とか「アメリカという国」という例を出してデジタル教科書が優位な分野だけを話題にしていますが、たとえば数学では「問題を解く、正解を出す」だけなら電卓があればすみます。

では、電卓を小学生に渡せば数学の教育は終わるのか? あるいは、電子辞書を渡せば語学教育は終わるのか?

それでよければ、私たちの仕事もこんなに楽なことはありません。

少なくとも語学教育の分野では、文法や単語の意味などの知識を導入する部分は、デジタル教科書だけでかなりの部分ができるでしょう。「dog = 犬」と文字で教えるよりはさまざまな犬の鮮明な写真や動画、鳴き声の音声などを使うことができれば、今までより、はるかにインパクトのある導入ができます。また、単語帳を繰り返しめくって記憶するような機械的練習でも、デジタル教科書はかなり強力なツールになると思います。

でも、デジタル教科書にできるのはそこまで。日本語教育の世界では「応用練習」などと言うことが多いですが、情報差のある学習者同士で行う練習(たとえばロールプレイなど)は実際の人間同士の練習でないと、少なくとも今の技術では無理です。

もちろん、デジタル教科書では微妙に内容の違うロールカードを大量に作って表示するようなことも可能になりますから、デジタル教科書が普及すれば練習の幅もずっと広がるし、その準備も楽になるでしょう。しかし、あくまでも人間同士の練習の補助として役に立つのであって、その代替が可能になるわけではありません。

要は、教育にはデジタルでやった方がいいところと、アナログでやった方がいいところがあり、それを使い分けることが重要なのだということです。この点については、大分県で情報教育、ICTを活用した授業の研究や相談に取り組んでいるy-mochizukiさんも以下のように言っており、私も同感です。
誤解が多いのは、ICTの活用は1時間を通して行う、と思われていることです。次のPCを使う例でも、1時間中使う理由はありません。
http://twitter.com/#!/y_mochizuki/status/18072088698949632

ちなみに、最近読んだ『Brave New Digital Classroom: Technology and Foreign Language Learning』という本でも、著者のRobert J. Blakeは「技術は教師の代替になるか」という問いに対して以下のように答えています。
A rational response to this question might be that technology will not replace teachers in the future, but rather teachers who use technology will replace who do not.



【ネットでなければ、コミュニケーションできない日本人が増殖?】

さて、田原氏のデジタル教科書への批判としては、上記の「問題を解く、正解を出すという作業が自己完結することにより、教師も学校もいらなくなってしまう」ということの他には、もう一点しかありません。

それは、「ネットでなければ、コミュニケーションできない日本人が増殖」という点です。これに関しては否定しません。だってネットがない時代に「ネットでなければ、コミュニケーションできない日本人」が一人もいなかったのは当然ですから。しかし、ネット以前は「そもそも他者とコミュニケーションできない」という対人恐怖症の人はいなかったのでしたっけね。そういう人たちはネットがなかったので誰ともコミュニケーションできなかったわけです。「誰ともコミュニケーションできない日本人」たちが「ネットでなければ、コミュニケーションできない日本人」に変化しているのだとしたら、それは歓迎すべきことなのではありませんか?

いわゆる「三丁目の夕日」史観な人たちは「ネット以前はそんなコミュニケーション不全は日本になかった」とかよく言いますが、これも完全に間違いです。対人恐怖症というのは日本の伝統であり、海外でもそのまま"taijin kyoufu shou"とか、その略語の「TKS」して通用するぐらいなのです。資料を二つほど紹介します。
The essential feature of a social phobia is a marked and persistent fear of social or performance situations in which embarrassment may occur, and there are many different forms of this condition which manifest uniquely in different environments. One type of social phobia, occurring primarily in Japanese culture, is called Taijin Kyofusho and is translated as "the disorder of fear."
http://www.brainphysics.com/taijin-kyofusho.php

Taijin kyofusho (対人恐怖症 taijin kyōfushō, TKS, for taijin kyofusho symptoms), is a Japanese culture-specific syndrome. The term taijin kyofusho literally means the disorder (sho) of fear (kyofu) of interpersonal relations (taijin). Dr. Shoma Morita described the condition as vicious cycle of self examination and reproach which can occur in people of hypochondriacal temperament.
http://en.wikipedia.org/wiki/Taijin_kyofusho

対人恐怖症(たいじんきょうふしょう)は、恐怖症のひとつであり、患者は社会的接触を恐れ、それを避けようとする症状を示す。また、その結果として、社会的生活に支障をきたしたり、生活において必要な人間関係の構築が十分できなくなったりする。日本特有の文化依存症候群とされ、そのままTaijin kyofusho symptoms (TKS) と呼称されている。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BE%E4%BA%BA%E6%81%90%E6%80%96%E7%97%87

二番目の資料に出てくる森田博士というのは1938年に亡くなっているので、どう考えてもネットの影響を分析したとは考えられません。

繰り返しますが、コミュニケーションが苦手な人が多いのは「日本の伝統」なのであって、デジタル時代の日本人の病理なのではありません。まあ、もしかしたら老害たちが「増殖中」などと書くのは、実感としては嘘ではないのかもしれません。しかしそれは、そもそもそういう人たちが人の目に触れることを嫌うので、気がつかなかったというだけのことでしょう。

その一方で、隣の席の人ともメールやチャットなどでやりとりする一般人が増えているとは思います。ただ、これに関しては、以前、「デジタルネイティブとデジタル移民の見分け方 その一」という記事に書いたので繰り返しませんが、ネットで伝えた方がいい内容と対面で伝えた方がいい内容があるというだけの話ではないでしょうか。長いURLや重要なメールアドレスなど、デジタルデータで渡さなければならない内容を口頭で伝えようとすることこそ、現代のコミュニケーション方法としては非効率であり、はっきり言うと間違いだと思います。

ということで、田原氏の「デジタル教育は日本を滅ぼす」に出てくるデジタル教科書などへの批判は、二点ともまったく的はずれだと言うことができると思います。

この本の中身は、その他は終戦の日の思い出など、デジタル教育に全く関連のない話ばかりです。教育そのものには多少の関心があるようですが、蔭山メソッドの紹介とか、杉並区立和田中学校の藤原校長とか、教育関係者なら知っていることばかりしか出てきません。しかも、わざわざインタビューまでしているのに、蔭山氏や藤原氏がデジタル教科書についてどう考えているのかなどの記述もありません。(それにしても、『デジタル教育は日本を滅ぼす』という本で、日本の教育界では著名人である両氏に、本題とは全然関係のないインタビューするというのはジャーナリストとしてどうなんでしょうか。)

さて、この手の本としては、もう一冊、有名な本があります。『デジタル教科書はいらない』(田中真紀子・外山滋比古)というのですが、これも以下のリンクを見ると読む価値がなさそうです。
http://togetter.com/li/58641








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2010年06月28日

『電子書籍の衝撃』

佐々木俊尚さんの『電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)』を読みました。

この本ではまず、キンドルやiPadのような新しいタブレットについて触れられていますが、これに関してはもちろん、日本語の教科書がここに入るという点で、われわれに関係がありますね。今までの書店の流通とは違う形で教科書が配られることになるのかもしれません。続きを読む
posted by 村上吉文 at 07:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年04月09日

はじめて講師を頼まれたら読む本




この本は『はじめて講師を頼まれたら読む本』というタイトルですが、何度も講師を頼まれる人にも必見です。

自分の経験から見ても、うなづけるところが沢山あります。
たとえば、53ページの
不運で不幸なエピソードが彼の伝えたいメッセージにつながった
という部分。著者は不運な経験でも自分なりに消化した上で、自分のつなげたいメッセージつながえることが大切だとしています。

僕も日本語教師向けのパワーポイントの使い方のセミナーで、「停電でパワーポイントを使えなくなった時に、初めてこういう事に気がついた」というような話をよくするんですが、そのエピソードがまさにこの例に当てはまりますね。

それから、「自分の失敗を話すといい」というのも、まったくそのとおり。僕は以前、当時の自分の所属機関の名前が真っ赤に燃えさかるロゴを作ったことがあるんですが、これを「見た目は派手になるがセミナーの内容としては何の役にも立たない。バカなことに時間をかけてしまった」という例で見せると,かなり受けるのです。もちろん今はもっとシンプルなデザインのスライドを使うんですが。

あと、面白かったのはセミナー講師の「5S」 。
story, simple, special, speed, smile、だそうです。普通は「5S」というと製造業の方向けの「整理、整頓、掃除・・・」と続く奴が有名ですが、それのもじりですね。でも、わかりやすくて役に立ちそうです。

他にもいろいろなことが参考になりましたが、ひとつだけ難点をあげると、これはかなり一方的に講師が話すタイプのセミナーが前提になっていて、最近の「参加型」のものではありません。「参加型」の場合は「話すネタ」ではなく「話させるネタ」が必要になるわけですが、そういった視点はまったく含まれていません。そこがこの本の唯一の弱点かもしれませんね。

そういった形式のセミナーに関心のある方はこちらをどうぞ。
むらログ: 効果10倍の<教える>技術
http://mongolia.seesaa.net/article/83985687.html
タグ:書評
posted by 村上吉文 at 07:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年03月27日

『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』

クリス・アンダーセンの『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』を読みました。このブログでも何度か「ロングテール」について触れましたが、この概念を発表した人の新しい著作です。

「あなたはどうして無料で仕事のアイデアを公開しているのですか」とよく聞かれるのですが、僕は今までどうにもうまく答えられませんでした。でも、そこには「これは必ず自分のためになる」という根拠なき確信がありました。うまく言葉にできなかったその問への答えが、まさにこの本に書いてあったと今は思っています。それは非貨幣経済。第9章に出てきます。
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう

非貨幣経済については本書に譲るとして、私たち日本語教育の世界にも、こういう流れはどんどん押し寄せてくると思うんですよね。今は有料でやっているようなオンライン学習のサイトなんかも、一度元手を取ってしまって、もっといいバージョンを作ることができたら、古いものは公開してしまった方が宣伝になります。しかも維持費は下がり続けているので、閉鎖するよりは広報に利用した方が良くなるでしょう。

また、e-ラーニングと対面授業を組み合わせたブレンディッド・ラーニングなどでも、e-ラーニングの部分だけは無料で公開して、人件費や教材の印刷代のかかる対面式の授業だけ有料にするようなことも考えられるでしょう。

私自身、自律学習支援通信教育プログラムというコースをオンラインでやったことがありますが、内容はすべてパスワードもなく一般公開しています。
http://d.hatena.ne.jp/Murakami/
コースは有料ですが、受講者はうちの機関から添削などを受けることができました。受講者以外はそういうサービスは受けられませんが、一般公開している内容は見ることができます。

日本でも既にそれに近いビジネスモデルはいろいろと走り始めています。たとえば「rarejob」。
http://www.rarejob.com/
マンツーマンの英会話の授業が25分129円という驚きの価格で提供されています。

そして、ラーニングキャッチボール。こちらはなんと無料です。
http://learning-catchball.com/index.php?%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%82%92%E6%95%99%E3%81%88%E3%82%8B

以前から紹介していますが、Lang-8もSmart.fmも無料で語学学習に利用できるサイトですよね。

結局、機械でもできるような機械的な練習しかしない教員などは、やはり機械に淘汰されてしまうということなのでしょう。そして、機械の出来ることはどんどん安くなっていくので、無料で公開して宣伝に使ってしまった方が学校に取ってはお得ということになります。コースデザインなど、機械には今のところ真似のできない仕事のできる人なら、まだしばらくは心配はなさそうです。

【ご参考】
「むらログ: 日本語教育のロングテール」
http://mongolia.seesaa.net/article/143480648.html

「むらログ: 辺境とはロングテールである」
http://mongolia.seesaa.net/article/34054039.html




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2010年01月10日

『インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブックン』島宗理

百式の「この本は良いよねぇ、としみじみ思っちゃう本のまとめ」に同じ著者の『パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学』が載っていたので、ついでにインストラクショナルデザイン―教師のためのルールブックもご紹介します。



インストラクショナルデザインというと、ガニェの堅い本が有名ですが、この本はかなり簡単な語り口です。たとえば、冒頭はこんな感じ。
子供の頃を思い出してほしい。ランドセルを背負って通った小学校時代でも、部活動に明け暮れた高校時代でもいい。

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posted by 村上吉文 at 09:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加