
冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?
今日取り上げたいテーマはタイパによって学習と習得を使いわけようという話です。タイパとは、短縮形で、タイムパフォーマンスを指します。これはかかる時間と、その結果として得られるリターンに関するものです。このタイパの観点から学習と習得を使い分けることが重要なんです。
この話をするきっかけとなったのは、先日、スティーブ・コーフマンさんというYouTuberの動画を見たことです。
この方は単なるYouTuberではなく、言語習得に関して多くの情報を提供しています。
その動画では、英語の基本を勉強するな!とおっしゃっていました。
https://www.youtube.com/watch?v=oFXqrmfi_SU
スティーブ・コーフマンさんは実に20カ国語を操っている方で、その動画でも日本語を使っています。興味がある方は、ぜひその5〜6分の動画もご覧いただきたいと思います。
彼の言っていることには全く反対する要素はありませんが、彼自身も言っているように、この方法ができる人とできない人がいると考えています。
つまり、できない人が無理にこの方法で英語の基本を学ぶのをやめようとすると、英語を身に着けられずに終わってしまう可能性があるという懸念があります。その点について今日は少し話してみたいと思います。
この動画で、スティーブ・コーフマンさんは最初に「第二言語習得にはかなりの時間が必要だ」とおっしゃっています。そのため、時間をかけられない方にはこのコーフマンさんの方法は向いていないと言えます。彼が提案しているアプローチは、基本的に「たくさん聞いてたくさん読む」というものです。これは第二言語習得の基本であり、大量のインプットが求められるわけです。この方法は基本に忠実であり、特別なテクニックを用いるわけではありません。さらに、スティーブ・コーフマンさんは勉強するよりも慣れることが大事で、覚える努力は不要だとも主張しています。
ここからは僕の個人的な意見ですが、スティーブ・コーフマンさんが指摘するように、第二言語の習得は非常に時間がかかると思います。短期間で流暢に話せるわけではありません。しかし、「習得」とは別に「学習」として考えると、短時間で基本的なコミュニケーションが可能になる場合もあると思います。
それは言語の習得とは違い、最初に文法や単語を記憶して、言いたいことを思い出した上で、適切な文法と単語で文章を作る過程を論理的に頭で行い、その後で話すようなものです。このアプローチは、要するに自分の頭の中で翻訳しているような状態です。これは第二言語習得とは異なり、もし僕が別の言葉で表現するならば、これは「学習」に近いと感じます。
要するに、この方法は算数に似ています。算数の公式を覚え、その公式の使い方も覚え、適切な数字を公式の変数に入れて計算すると、特定の数値が出てきます。それに似ています。これはパズルを解く行為にも似ているかもしれません。
これは僕の個人的見解ですが、こういう方法はワーキングメモリーが広い人に特に適していると思います。その理由は、まず自分の言いたいことがあると、それに合った文法と単語を思い出し、それで頭の中で文章を組み立てる必要があります。さらに、発音も日本語とは異なる自分の母語や第一言語にも配慮しながら行うので、かなりのワーキングメモリーを消費します。
繰り返しますが、第二言語の「学習」と「習得」は別物だと僕は感じています。実際、これらは明確に区分できるものではなく、むしろ連続的に変化するものだと思います。それでも、時間の使い方によって、どちらのアプローチを選ぶべきかは非常に重要だと思います。例えば、日本の大学で第二外国語としてフランス語やスペイン語を学ぶ場合、週に2時間程度の授業しかありませんよね。また、日本の小学校や中学校で英語を学ぶのも、週に2時間ほどです。そのような状況では、多読などを通じて大量のインプットをして習得しようとするアプローチは現実的ではありません。その結果、何も身につかないまま時間が過ぎてしまう可能性があります。
ですから、本当に時間が取れない場合や、高度なコミュニケーションが必要ない場合は、文法と単語を覚え、それを使って基本的なコミュニケーションをするしかないのではないかと思います。
しかし、一方で日本に住んでいる人や日本人と結婚している人などは、より高度なコミュニケーションが求められると思いますし、そのような動機もあるでしょう。そのような場合、スティーブ・コーフマンさんが提唱するように、「学習」よりも多くのインプットを通じて自然に「習得」する方が良いと思います。この方法は時間がかかるものの、読むことや聴くことが好きな人には適しています。
具体的にはいろいろな方法がありますが、僕自身も実践しているように、映画を視聴しながら二つの言語の字幕を同時に表示できるGoogle Chromeの拡張機能「Language Reactor」を使用する方法もおすすめです。好きな映画を見ているだけなので、「勉強している」という感覚は少なく、長時間その言語のインプットが可能です。
単に言語を聴いているだけでは効率が良くないと前述しましたが、Language Reactorを使えば、字幕から簡単に辞書を引くこともできます。そのため、単に流して聞いているわけではなく、言語形式にも注目しつつ、物語にも文脈があり、意味のあるコミュニケーションに近いです。この方法は自然な習得に非常に近いと言えます。
文法や単語を頭で考えながら算数の公式に当てはめるような作業をしなくても済むため、高度な内容の話を聞いたりする際に、ワーキングメモリーを多く使えるというメリットもあるでしょう。
ただし、短時間の「学習」の場合でも、単に文型や語彙を暗記するのではなく、意味のある文脈を活用した方が時間効率が良いのは第二言語習得の理論でも明らかになっているとおりです。また、時間が限られている場合は、学習者が必要とする行動をとるためだけの必要な文法や語彙を教えるという、行動中心アプローチ的な考え方が時間効率も良いのではないかと考えています。
読者のみなさんも、教える内容を学習者のニーズと時間に応じて変えてみたいか、または自分自身が学習している第二言語にどれくらいの時間をかけるかによって、勉強方法を変えてみたいかどうか、それを自分自身で考えてみてください。
そして冒険は続く。
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【参考資料】
この記事の音声版
https://listen.style/p/muracas/ht1mtpy9