2023年06月06日

初級の学習者がChatGPTに添削してもらうときの注意点



冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

さて、今日僕が話したいトピックは初級学習者がChatGPTに添削してもらう際の注意点です。特に、日本語の学習者の場合、英語の学習者と比べて注意すべき点が多いかもしれません。

これを書こうと思ったのは、僕自身が最近、初級の日本語学習者がChatGPTを利用する様子を頻繁に観察しているんですが、学習者が意図した通りの意味に添削されない場合があるという事に気づいてきたたからです。と言っても、僕が英語の文章を添削してもらっている時には、そのような状況を感じたことはほとんどありません。しかし、日本語学習者がChatGPTによる添削前と後を見てみると、どうもそのような状況が頻繁に起きているみたいなんですね。

これは主に、タイピングのミスと漢字変換が複合的に発生した時に起こるようです。例えば、「ヨーグルト」と入力するつもりが長音符を忘れてしまい、「yoguruto」とタイプした場合。「夜グルト」に漢字変換されることがあります。これは、漢字変換ソフトの種類によりますが、少なくともそのような事例を見たことがあります。

これをそのままChatGPTに添削してもらうと、「夜グルトを買った」が「夜にヨーグルトを買った」のような形で添削されることがあります。ChatGPTは「グルト」が「ヨーグルト」を意味することを理解していますが、漢字の「夜」がそのまま残っているため、そのような添削結果になってしまうわけです。これは僕が実際に見た例です。

別の分かりやすい例として、「犬がにゃーにゃーと鳴いている」のような文章があった場合を考えてみましょう。これはちょっと変ですよね。普通、犬が鳴く場合は「わんわん」と鳴き、猫が鳴く場合は「にゃーにゃー」と鳴くわけですから。しかし、この一文だけでは、犬がわんわんと鳴いているのか、猫がにゃーにゃーと鳴いているのかは明確には判断できません。したがって、正確な添削をするための方向性は一つに限られず、その結果、期待通りに添削されない可能性が出てくるわけですね。

もう一つ、注意しなければいけないことがあります。表記を間違って、実在する別の言葉を書いてことです。たとえば、よく僕が例として引用する"スパマーケット"の事例です。

スーパーマーケットの長音符を忘れ、単に「スパマーケット」と書いてしまった場合を考えてみてください。「スパ」や「マーケット」といった単語も実在しますよね。「スパ」といういのは、もちろん例えば温泉や、リラクゼーション施設などのことです。「スパ」というこのような言葉が存在しているため、もし誤って「スパマーケット」と書いてしまったら、文脈からの情報が乏しい場合は、「スパ」と「マーケット」という単語があるのでChatGPTは誤りに気づかないかもしれません。

したがって、学習者のことをよく理解している人なら、「本当はスーパーマーケットと言いたかったのではないか」と想像できるでしょうが、この表現が添削されず、正解とみなされてしまう可能性もあります。つまり、ChatGPTがこの誤りを訂正せずに返答してしまう可能性もあるのです。

しかし、このような問題を防ぐための簡単な方法が一つあります。それは、プロンプトに翻訳のお願いも含めてしまうことです。例えば、もし日本人が英語を学んでいるとしたら、「あなたは英語の教師です。次に、僕の英文を添削して、その添削した文章を日本語に翻訳してください」と、指示を入れるだけで良いのです。

その後、英語の文章をどんどん書き続けると、誤った箇所は添削してもらえますし、また、添削後の英文の意味も日本語で書いてもらえるため、添削の誤りに気づくことも簡単になります。僕自身もヒンディー語で試してみましたが、確かに、この方法は明らかに楽です。

というのも、僕のヒンディー語のレベルでは、ChatGPTが正しく修正したヒンディー語が正確なのかどうかを一瞬で判断するのは難しいのです。もし正確であれば、理解できなかった場合はそれを学ぶだけで良いのですが、正しくない場合には時間をかけて熟考し、結果的に「これは僕が伝えたいことではない」と結論を出さなければなりません。したがって、ヒンディー語が最初から僕の慣れている言語に翻訳されていれば、そのような無駄な時間を使わずに済むのです。

今日の話をまとめますと、
1.全ての添削が正しいわけではないという前提でChatGPTを使用すること、
2.それをすぐに確認するためには、ChatGPTによる添削が自分の希望する内容や書きたいこととは異なる方向に行っていないかを確認するために、同じプロンプトで、添削だけでなく媒介語にも翻訳するという指示を入れておく
という内容をお伝えしました。

中級や上級だったらけっこう簡単に添削の間違いは気がつくかもしれませんが、初級レベルの日本語を教えている方が学習者に添削の課題を出したり、あるいは自分で初級レベルの第二言語を学んでいる場合は、この提案がお役に立つかもしれません。ぜひ参考にしてください。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
この記事の音声版
https://listen.style/p/muracas/fxyq1u6f
posted by 村上吉文 at 08:06 | TrackBack(0) | 人工知能と日本語教師 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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