
冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?
さて、10日前のブログでも触れましたが、ここ3週間ほど「エンタメ多読」というのを毎日やっています。毎日1つずつ面白さを最優先にした多読用の教材を作っています。
どうしてこういうことを始めたのかと言うと、
最近の AI 、特に Google gemini の2.0 experimental というバージョンが非常にエンターテイメント的な文章を作る能力があることに気がついたからです。
最初に作ってみたのがこちらのテキストです。
https://docs.google.com/document/d/12GraqtWzbRpN7lBRu4tyuXtW8bOegh82lsEMLPwKcrU/edit?tab=t.0
これはあくまでも単なる実験として作ったので、特に多読用の教材ということは意識していません。実際に内容も日本語教育の現場とは全く関係ないものになっています。
そしてこれが非常に面白かったので、この時点で僕は「これは日本語の教材としても非常に強力なツールなのではないか」と思いまして日本語学校を舞台にした短編小説を作ってもらいました。それがこちらです。
https://x.com/Midogonpapa/status/1887509343387721873
全文は長いので、さすがに転載はしませんが、是非ご覧いただければ幸いです。これって普通に面白いですよね。もちろん、プロの作家さんから見たらいろいろ穴もあるのでしょうが、僕のような単なる消費者から見るともうこれはプロの作家さんが書いたのと、変わりがないぐらいの面白さになっているように感じます。そして、日本語学習者の多くも、特に作家を目指していたりしない限り、こうしたコンテンツを楽しんでくれると思います。少なくとも、日本語を第一言語とする平均的な話者よりも、この Google Gemini 2.0 experimental の生成する日本語はずっと面白いと思います。少なくとも、僕はここまで面白い内容をこの文体で書くことはできません。
そして、この時点で「この世界はもう少し探求してみる価値がある」と思いまして、それ以降、毎日1本ずつのエンタメ多読の教材をTwitter や Facebook などでシェアしています。
時間がある時は僕の方からAI に「こういう物語を読みたい」というリクエストを出します。その後のプロセスは以下の通りです。
1.まず最初にプロットを複数書いてもらいます。
2.その中から一番面白そうなものを僕が選びます。
3.そして、そのプロットに基づいて複数の章立てを提案してもらいます。
4.そして、その中からさらに僕が面白いと思うものを選びます。
5.そして、その後は1章ずつAI に書いてもらっています。
一章ずつ書いてもらうのは、テキストの中に修正して欲しい部分なども出てくるからです。
6.AI の精製したテキストに初めから問題がなかったり、あるいはこちらのリクエストに応じて、まあ十分に面白いと思えるようになったら次の書を書いてもらいます。
7.僕は一章ごとに納得のいくものができたら、 Google ドキュメントにペーストしていきます。
8.そして最終章まで行ったら、その時点でタイトルを考えてもらいます。もちろん、これも複数の案を出してもらって、その中から一番いいと思うものを僕が選びます。
9.以前はこの時点で終わりにしていたのですが、最近は AI に編集後期も書いてもらったりしています。
最初のうちはGoogleジェミニの2.0 xperimental バージョンは公開リンクを生成できないものだと思っていたのですが、実はなぜかスマホからアクセスすると公開リンクを取得できることがわかりました。ですので、最近は制作過程全ても全部公開しています。
なお、初めに申し上げた通り、これは比較的時間のある時に採用する方法で、時間がない時にはプロンプと一発で生成してもらっています。プロンプトの全文はこのブログの前回の記事をご覧ください。
さて、どうしてこういうことをやっているのかと言うと、単に書いてしまうと「面白いから」です。僕が読みたいストーリーをAI が作ってくれるのです。僕のためにAI がこれまで世の中に存在しなかった小説を書いてくれる。これってすごいことだと思いませんか。
でも、もちろんそれだけではなくて、やはり多読の世界にもっとエンターテイメントを追求した教材があってもいいのではないかと思っているからです。
すみません。ちょっと嘘をつきました。もちろん今は本当に心からそう思っていますが、実は僕がこの試みを始めるまで、「多読の教材はそれほど面白くない」とか実は一度も思ったことがありませんでした。でも作り始めてみると、今の AI は本当にエンターテイメント的なテキストを生成するスキルも高いのです。
次に日本語のレベルについて。僕が共有しているものは全て日本語学習者が主人公で、その舞台もほとんどが日本語学校になっていますが、日本語のレベル自体は指定していません。ですので、中級後半ぐらいからは普通に他の教材として使えるとは思いますが、初級の皆さんにはちょっと難しいだろうと思います。
しかし、 AI を使うとこの問題は簡単に回避することができます。今、皆さんが授業で使っている教材の読解のページを AI に読み込ませて、「このぐらいの日本語で書き直してください」と言えばいいのです。実はJLPTとかCEFRのレベルで指定するよりも具体例を1つ読ませて、「このレベルで書き直してくれ」と言った方がかなりレベルを統一することができると思います。
なお、最初にレベルを指定して、このレベルの日本語で面白い小説を書いてください」と言ってしまうと、実はあまり面白い小説ができません。ですので、順番としては特に日本語レベルを指定しないで面白さ最優先でテキストを生成してもらい、その後でご自分の必要とするレベルに書き直してもらうというのがいいのではないかと思います。
おとといの 「#zoomでハナキン0221」の乾杯の音頭に登壇してくださった中林くみこさんはご自分の本の中でAI による面白い読解教材の生成について触れていない理由について、「もうすでに多くのリーダーの心を掴んでいる作品がたくさん世の中にあるから」ということをおっしゃっていました。もしかしたら、人によってはあまり自分の現場に近い内容のコンテンツを読みたいという欲求を感じる人がいないのかもしれません。しかし、僕のように日本語教育機関が舞台のエンターテイメント小説を読みたいなどと考えている人間にとっては、こうした AI による読解教材の生成はかなり強力なツールになるのではないかと思います。
中林さんの多読と多聴を中心とする英語学習の話と、それから今僕がやっているこのエンタメ多読の教材も、両方とも第2言語習得の面から見ると、インプット仮説と情意フィルター仮説を重視したものだと言えることができるでしょう。面白いものだと、とにかくたくさんの量を読むことができるので、そこがインプット仮説に関わるところです。そしてとにかく楽しさ優先にするので、緊張などによるフィルターで習得にダメージを与えてしまうこともなくなるわけです。
このような意味でも、こうした方法は第二言語習得のど真ん中の直球ストライクの学習方法ではないかと思っています。
さて最後に、現時点でこれまでに18本の物語ができていますので、途中経過としてリストをあげておきたいと思います。
01 『白紙のキャンバス』(最初に生成した物語なので、これだけは日本語教育とは関係ない内容です)
https://docs.google.com/document/d/12GraqtWzbRpN7lBRu4tyuXtW8bOegh82lsEMLPwKcrU/edit?tab=t.0
02 『鬼の棲む日本語学校』
https://x.com/Midogonpapa/status/1887509343387721873
03 『モンゴリアン・バートル 渋谷で大暴れ!〜日本語学校は、事件のニオイ?〜』
https://docs.google.com/document/d/1qyCsogIvAVVd3o6R2WirVCHm8Y44eEsUbJwXaEjMYRI/edit?tab=t.0
04 『言の葉とメロディー』
https://x.com/Midogonpapa/status/1888250002071519271
05 『プラ・パトム・チェーディー鉛筆と日本語能力試験』
https://x.com/Midogonpapa/status/1888606704566522201
『プラ・パトム・チェーディー鉛筆で、マジ卍なN1合格!?』
https://x.com/Midogonpapa/status/1888608979410206878
06 『遺産相続は日本語勝負!〜どん底青年の逆転劇〜』
https://docs.google.com/document/d/1v8gnevgi_3bxNW4z1XVGn3M2_M2TBJ0uq8c-nRPMXc4/edit?usp=sharing
07 『先生、AIが嫉妬しています!』
https://x.com/Midogonpapa/status/1889315861581987958
08 『メイドカフェから始まる恋と友情:サワディークラップ!僕のニッポン留学』
https://x.com/Midogonpapa/status/1889652041548702014
09 『血染めのガラベイヤ:エジプト砂漠の冒険』
https://x.com/Midogonpapa/status/1890039663924269488
10 『幽霊はラオラオがお好き? ビエンチャン真夜中の人情噺』
https://x.com/Midogonpapa/status/1890404123314618436
11 『濁流の誓い 〜あの日の手を、今〜』
https://x.com/Midogonpapa/status/1890735808837234824
12 『包帯だらけのN1 〜母の命と私の未来〜』
https://x.com/Midogonpapa/status/1891109557059092584
13 『先生、信長が降臨しました。〜時空を超えた日本語レッスン〜』
https://x.com/Midogonpapa/status/1891485322992816526
14 『しゃべるチョークと僕の日本語大冒険!』
https://docs.google.com/document/d/1mEyhAl5IgvSSEnk_AVHAlcDWhCK6lKA0CF_rn_PAzhg/edit?usp=sharing
15 『ドナウに燃ゆ 愛と復讐の宝石』
https://docs.google.com/document/d/1pg-mdXZZ6cfgU-_wftaS94rG-ejyg7wItoSaj8K5DhQ/edit?usp=sharing
16 『渋谷古文書盗難事件:AIは人間の心を守れるか』
https://x.com/Midogonpapa/status/1892603020476809676
17 『時間旅行と日本語教師』
https://gemini.google.com/share/a3e6deb39317
18 『日本語教師 vs. 助詞ハンター』
https://x.com/Midogonpapa/status/1892862663405052129
そして冒険は続く。
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