2023年07月18日

ChatGPTが合っているのは言語オタク型冒険家

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

今日お話ししたいのは、ChatGPTが合っているのは言語オタク型冒険家ということです。これを話そうと思ったのは、先日のハナキンで、ChatGPTが合う学習者と合わない学習者ということで皆さんと一緒にブレインストーミングをしたからなんです。

実は僕にとって、これは嬉しい誤算だったんですが、僕の予想と外れていたことがあります。皆さんから一番多く、本当にびっくりするぐらい多く出てきたのが自律性ということだったのです。自律的に学習できる、そういう人が、このChatGPTに向いているということでした。

僕は、もうちょっと「デジタルに抵抗がない人」とか、あるいは「デジタルのリテラシーが高い人」とか、「パソコンに慣れている人」とか、そっちの方がたくさん来るかなと思っていたんですが、実はそうじゃなくて、自律性というのが一番多かったんですね。

やはりそうして考えると、僕が2018年に出版した「冒険家メソッド」という本があって、そこではソーシャルメディアを使って自律的に第二言語を習得する方法について書いたんですが、これとChatGPTとの親和性は非常に高いということが、この辺からも言えるんじゃないかと思います。

こうやって自律的にその第二言語を習得する人たちを僕は「冒険家」とこの本でも呼んでいるんですが、この冒険家にも、3種類あると僕は書いています。(正確には3つの要素があって、それを複数持っている人もいるのですが)

人によっては4種類と分類する人もいますが、その中の2つを僕の場合は統合して、3種類と言っています。

1つは「言語オタク型」と僕は呼んでいるんですが、要するに言葉そのものが好きというタイプですね。その言葉で何をするかが好きなどじゃなくて、その言葉で何かを読むのが好きとか、見るのが好きとか、そういうのではなくて、その言葉そのものが好きという人です。それが言語オタク型。

2番目はアニメ型というふうに僕は呼んでますが、日本語で何らかのコンテンツを楽しむのが好きな人たちですね。その中の代表がやっぱりアニメなどゲームなどそういうサブカルチャーなんですが、中には映像とは全然関係ない村上春樹の文章とか、最近では川上三映子さんなども随分人気ありますけど、そういう文章を楽しむのが好きという方ももちろんいらっしゃいます。

3つ目はソーシャル型と僕は呼んでいますが、外交的で友達がたくさんいて、それはリアルの友達でもいいし、オンラインの友達でもいいんですが、そういう友達がたくさんいて、その友達との交流を通して第二言語を習得する人たち、そういう人たちを僕はソーシャル型の冒険家と呼んでいます。

この中で、やっぱり今日のタイトルにもある通り、言語オタク型の人がこのChatGPTには一番向いてるんじゃないかなと思うんですね。

言語そのものに興味があるという人は、ChatGPTで初級の文法など、あるいは言葉の意味とか、日本語だったら漢字の意味とか、漢字の発音とかを聞くことが多いと思うんですが、そういうものはかなりChatGPTで自分の好きなときに24時間いつでも聞いたら教えてくれるわけですよね。

それからその言葉を使った例文、あるいはその文法を使った例文をたくさん出してくださいとかも直ぐにできますし、しかもそれが自分の興味に合った分野の例文など、例えば冒険小説っぽい例文を出してくださいとか、そういうのをいくらでもChatGPTは作ってくれるので、そういう意味で非常に言語オタク型冒険家とこのChatGPTの親和性は高いと思います。

次にアニメ型というのがありますね。アニメ型はさっきも言いましたが、日本語のコンテンツを楽しむことによって日本語を習得するという人たちです。この人たちは本当にコンテンツが好きだから
日本語に触れていて、気がついたらいつの間にか日本語がわかるようになっていたりします。頭の中でリハーサルなどたくさんしている人は、気がついたら日本語が話せるようになっていたという人もいるんですよ。本当にびっくりしてしまうんですが、ルーマニアのジョルジアナさんなど、あるいはカザフのカリーナさんなどという人と僕はインタビューしたことがあります。

僕のYouTubeチャンネルの「冒険家インタビュー」という再生リストの中にその人たちのインタビューも入ってますが、特にルーマニアのジョルジアナさんという人は特徴的で、僕が日本語で話す人は3人目だったって言うんですよ。しかも最初に実際に日本語を話したのが、1週間前とか2週間前とかなんですが、でも普通に流暢に、これまで自分がどうやって日本語を勉強してきたか、実は勉強もしてなかったんだけど、どうしていつの間にか日本語が話せるようになったのかなど、そういうことを非常に流暢に話してくれています。皆さんもぜひ興味のある人は、僕のYouTubeチャンネルの「冒険家インタビュー」の中のルーマニアのジョルジアナさんのビデオを見ていただければと思います。

ただですね、こういう人たちはやっぱり日本語のコンテンツを楽しむのが好きなんですよね。
日本語の勉強のためにChatGPTにコンテンツを作ってもらうという感じの人はあんまりいないと思うんです。それから、やっぱりChatGPTはまだ、少なくとも本当に読者の心を捉えて離さないような、本当に魂が震えるような、そういうコンテンツを作るのにはちょっとまだ時期尚早かなという感じもしますね。

というのも、やっぱり短い文章は書けて、N4などN5ぐらいの人たちが楽しめるぐらいの短い文章は書けるんですが、それ以上の長い文章を書くのはまだChatGPTには難しいような感じがします。

最初の方の設定と最後の方の設定がずれていたりとか、そういうこともあったりしますね。
ただ、自分の好きなコンテンツ、「私はこういう本を日本語で読みたいんだ」という、そういう強烈な欲求などそういうのを持っている人から見たら、もしかしたらこのChatGPTは本当に自由にコンテンツを作ってもらえますし、あるいは自分で、例えば英語なり自分の母語でコンテンツを書いて、それをChatGPTに自然な日本語に翻訳してもらうとか、そういうことはできますね。

なので、そういう楽しみ方はできますけど、それは多分アニメ型みたいに本当にコンテンツが好きで、いつの間にか喋れるようになっていたというタイプの人たちは、そういう感じの努力は実はあんまりしないような感じがするんですね。ですので、それほどアニメ型の人はChatGPTの人との親和性は高くないかもしれないと思います。

最後にソーシャル型の冒険家ですね。

これは人との交わり、人とのコミュニケーションを通して第二言語を習得するタイプの人たちなんですが、やっぱり一番ChatGPTとの相性は低いと思います。

これを僕は何回も言ってますけど、ChatGPTというのは本当の人間ではないので、コミュニケーションや交流をしてるという喜びなどというのは、少なくとも僕は感じられないんですね。

少なくとも今の段階のChatGPTもGoogleBardも、もう僕の属性のことなんか全然覚えてないんですよ。

僕の名前とか住所とか年齢とか、そういうことをちゃんと教えてあげても、それも次の日には忘れちゃってるんですね。ですので、こういう相手とはやっぱり心の温まるような、心のこもった交流というのは実際無理だと思います。だって毎回会っても初めて会った人なわけですから。そういう意味でソーシャル型の人たちとChatGPTとの相性はかなり低いんじゃないかと思っています。

最後にまとめです。
ChatGPTに合う人というと、まず「自律性が高い人たち」というイメージを持っている人が非常に多いということが先日のハナキンで分かりました。
僕が「冒険家」と呼んでいる、そうやって第二言語を独習でやる人たちの中には「言語オタク型」と「アニメ型」と「ソーシャル型」という人たちがいると僕は分類していますが、その中でも特に言語オタク型という人にとってのChatGPTの親和性は高いんじゃないかと思います。
つまり、そういう人たちがこのChatGPTを使うと、伸びるのではないかなと思っております。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
この記事の音声版
https://listen.style/p/muracas/cdxmagsp

「冒険家インタビュー」 - YouTube https://www.youtube.com/playlist?list=PL8xNAgRaT_iSBuawM8nI5MJYsps0pCYwf
posted by 村上吉文 at 01:00 | TrackBack(0) | 人工知能と日本語教師 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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