2023年05月22日

ChatGPTで一斉授業からの脱却



冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

今日議論したいのは「ChatGPTで一斉授業からの脱却」というテーマです。僕がこの問題を取り上げる理由は、ChatGPTの最大の利点が何であるかと問われれば、その答えがこのテーマに尽きると感じているからです。一斉授業には数多くのデメリットがありますが、それに対して批判的に考えることなく無条件に受け入れている人が非常に多いのです。しかし、ChatGPTのような先端技術を使用することで、この問題を簡単に克服することが可能です。そのことについて、本日は少しご説明したいと思います。

皆さんは「教育の七五三」というフレーズを聞いたことがありますか。「教育の七五三」については、すでにタイトルとして採用されている書籍も存在します。しかし、それがまだ電子版になっていないため、僕自身はその内容を確認していません。該当の書籍のタイトルは、「教育七五三の現場から 高校で7割、中学で5割、小学校で3割が落ちこぼれ」というものです。祥伝社新書から2008年の6月26日に出版されました。著者は瀧井宏臣さんという方です。僕自身がまだこの本を読んでいないため、その中に具体的な統計データが含まれているかどうかは不明です。しかし、「教育の七五三」というフレーズ自体は僕も以前に何度か耳にしていますし、多くの人が受け入れている数字なのではないでしょうか。

この本のタイトルが示すように、高校では生徒の7割、中学では5割、小学校では3割が学習進度に遅れをとっていると言われています。"落ちこぼれ"という言葉は少々厳しいニュアンスを含んでいますが、それでも実際にはかなり多くの割合の生徒が授業の進度についていけずに困っているのが事実です。この状況を「教育の七五三」と呼んでいます。僕はまだこの本を読んでいないので、これが統計的に正確に裏付けられているかどうかは知りません。しかし、「教育の七五三」というキーワードで検索すると、皆さんも様々な情報に出会えると思います。つまり、この現象についてある程度の実感を持って語っている人が大勢いるということはすぐに確認できると思います。

この「落ちこぼれ」などの問題は、一斉授業が前提になっているからです。今日は、一斉授業がなぜ良くないのかについて、7つの理由を挙げてみます。

まず、クラス全体を一人の先生が受け持つこと、その進度についても責任を持つこと自体が無理である、ということ。僕は個人面談をかなり行っていますが、教師が授業の中だけで学習者一人一人に気を配ることができないことが、実際の問題です。教師はクラス全体のなんとなくの理解度は把握できるつもりにはなるかもしれませんが、しかし、声を出せない人などに注目すると、そのバランスは崩れます。僕も最初のうちは、顔が見えていれば理解できると思っていましたが、それは教師側の傲慢な誤解で、学習者の本当の気持ちは顔を見ているだけでは全く把握できません。教師も学習者として語学の教室に参加してみると、すぐに昔の学生だったときの感覚を思い出すと思うのですが。

なぜなら、学習者はわからないことに困っていたり、退屈に思ったりしている人もいますが、それらの感情を上手に隠す人も多いのです。そして、教師が学習者が質問したいと思っていることに気づかない場合もあります。そして、たとえ気づいたとしても、7割もの学習者が落ちこぼれているときに、一人一人の学習者に時間をかけることは、物理的に無理です。

しかしこれがChatGPTであれば、学習者は気軽に、「よくわからない」、「退屈だ」などと伝えることができ、それに対してChatGPTは対応することができます。

また、これは2番めの理由ですが、学習者のニーズというものも存在します。ニーズは非常に多様ですが、一斉授業ではその多様性に対応することができません。例えば一般的な日本語学校では、オーディオリンガルの教科書に限らず、一冊の同じ教科書で、コンビニで働く人、ITエンジニア、子供が日本の学校に通っているお母さんの日本語など、様々なニーズが存在するにも関わらずそれを一つの教科書だけで、また一つの教室で同じ内容を教えるというのは、大きな無理があるのです。それぞれの学習者が抱えるニーズは多種多様であり、一斉授業ではそれらを適切に満たすことは難しいのです。

例えば、コンビニで働く人にとって必要な日本語と、ITエンジニアに必要な日本語、子供が日本の学校に通う親が必要とする日本語は、それぞれ異なる可能性が高いです。それにもかかわらず、一斉授業では同じ内容を同じ教科書で教えるという方法が採られていることが多いです。

同じ文法でも、例えば文型シラバスを用いるとした場合、一つの例文、一つの文型を教える際に、その受け取り方は学習者の興味により大きく左右されます。冒険映画が好きな学習者や恋愛映画が好きな学習者など、その興味に対応することができれば、印象的な例文、忘れられない例文となり、その効果は大きく変わるのです。

しかし、一斉授業では一般的で、誰にでも理解できる例文を用意しなければなりません。しかしこれは、結果的に誰のためでもない例文になってしまうという問題があります。これに対しChatGPTを活用すれば、冒険映画のセリフ風の例文、つまり「この文型を含む冒険映画のセリフ風の例文を3つ出してください」、あるいはそれを10個、20個出してくださいなど、個々のニーズに応えた指導が可能になります。これに対し一斉授業では、一人一人のニーズに応えることは難しいのです。

そして、3つ目の問題点として、学習者の参加や取り組み、関わりが非常に限られてしまうということが挙げられます。一斉授業の中でもグループディスカッションやペアワークなどを活用すればある程度改善可能ですが、それでも学習者は学習の内容や方法を自分で決めることができません。与えられた内容、与えられたタスク、ロールプレイにしても、与えられたタスクをこなすだけで、積極的に関与できる立場にはないのです。関与できないということは、責任も低く、動機も低下してしまうという問題があります。

これに対しても、ChatGPTを利用すれば、勉強の方法や内容自体も、学習者自身がある程度コントロールすることが可能になります。つまり、自分で決めることができるということです。従って、この問題点もChatGPTのような人工知能を用いれば、容易に改善できるということになります。

それから、4番目ですが学習スタイルの違いに対応できないというのも、これも一斉授業の問題の一つです。例えば、学習スタイルも多様で、僕のような人間は、大雑把でも構わないから全体を把握してから、それから細部を勉強していきたいというタイプの人間です。全体像が見えないと、今ここで勉強していることがどのくらい意味があるのかなど、そういったことが分からず、非常にストレスを感じてしまいます。しかし、人によっては、きちんとその一つ一つのステップを完璧にこなせるようにしてからではないと先に進みたくないという人もいます。そういう人は逆に、僕みたいに「大雑把でいいから全体を把握しましょう」というアプローチに対しては非常にストレスを感じてしまいます。

それから語学の勉強に関して言うと、まず文法を最初に説明してもらわないと納得できないタイプの人もいるし、逆にたくさん聞く、インプットをたくさん得て聞いてから、それで自分で「ああ、この文法だったのか」と気が付く、そういうタイプの方が好きな人もいます。第二言語習得の理論では後者の人の方が習得ができるということになっているので、どちらかをお勧めするとしたら僕は後者の方をお勧めしますが、少なくともそういう複数のタイプが存在するのは事実です。

また、静かでないと集中できないタイプの人もいるし、みんなでにぎやかにしないと集中できないタイプの人もいるし、それから音楽を聞きながらでないと集中できなくて寝てしまうタイプなど、そういったタイプの人たちもいます。一斉授業の場合は教室でそんなにたくさんの環境を準備することができないので、これも一斉授業の大きなデメリット、限界の一つです。

しかし、例えばChatGPTのように個別に勉強できる環境を用意すれば、いくらでも音楽を聞きながらも勉強できるし、また静かなところで集中して勉強したい人は、そういった場所で勉強するというように、その人に合わせた勉強ができるということになります。

この点に類似しているところがありますが、第五に、授業の伝え方の柔軟性というのが非常に不足してくるという問題が存在します。これは特に一斉授業の場合、時間割という制約があるからです。時間割通りの時間、そして定められた教室でしか教えてもらえないのです。この問題も先述のものと似ていますが、図書館で勉強したい人もいれば、カフェで勉強したい人、家で勉強したい人、あるいは仲のいい友達と一緒に楽しく勉強したい人もいます。一斉授業ではこれらのニーズに対応できませんが、ChatGPTなら可能です。さらに、複数の人でChatGPTを見ながら学習するのも非常に楽しいです。だからChatGPTは個人だけでなく、友達同士でも学習できます。例えば、仲のいい友達同士で、「今度はこういう質問をしてみよう」とプロンプトを入力し、それで変な回答が出たらみんなで笑うという楽しみ方もあります。もちろん、これを学習の方向に活用することも可能です。

さらに、次に述べる第六と第七の問題が最も大きいと思います。第六は、学習ペースの多様性に一斉授業が対応できないという問題です。これは先ほども触れましたが、「落ちこぼれ」と言われている人たちが発生する問題です。一斉授業では同じ学習ペース、同じ進度で進むしかないのです。

まず、落ちこぼれ以前に「浮きこぼれ」という問題も存在します。飲み込みの早い学習者が自分の能力に合った早いペースで学習を進められれば、非常に高いレベルを達成できるはずなのに、一斉授業ではその人の能力に合わせたレベルまで学習を進めることができず、本来の能力を開花できないという問題です。

逆に、時間が必要な人もいます。こういった状況で「落ちこぼれ」という言い方は適切ではないかもしれませんが、授業中に先生の話や他の生徒の発言が理解できず、ただ座っているだけの状況になってしまう人たちもいます。先生もそのような生徒に質問をすると恥をかかせてしまう可能性があるため、なるべく指名しないようにしています。その生徒自身もただ、指名されないことを切に願っている状態で時間を過ごします。これはまさに時間の無駄と言えます。

このような状況を考えると、確かに一斉授業の進度に合っている生徒であれば問題ないかもしれません。先生の話を聞きながら同じ進度で進める生徒たちと楽しく学習するのも素晴らしいことです。しかし、進度が早すぎる、あるいは遅すぎると感じる生徒にとっては、ChatGPTを活用して、自分のペースに合わせて学習を進めることが最善の選択となります。つまり、理解できない部分について質問を続けながら、自分自身の学習ペースで学習を進めることが可能となります。

また、7番目で最後となりますが、一斉授業の場合、クラスメイトが全員いるため質問が難しいという問題が生じます。質問ができない理由としては、自身の知識不足が明らかになることが恥ずかしいと感じるためであり、これは一斉授業の大きな問題点の一つです。

知識が豊富な生徒は、自身の知識を示すために高度な質問をすることがあります。その場合、教師が一人でその難しい質問に答えている間、他の生徒は理解できないために困惑することがあります。質問をすることが恥ずかしいだけでなく、それが他の生徒に対して迷惑をかけることになると感じるためです。

特に成績が低い生徒が質問をしようとした場合、他の全員の時間を無駄にしてしまうと感じるために質問できないことがあります。自身が理解していない点について教師が基本的な説明をしている間、他のクラスメイト全員の時間を無駄にしてしまうと感じ、そのことを申し訳ないと思ってしまうのです。

これについては、OECDが行っている学力調査「PISA」が一例として挙げられます。2018年の調査結果では、日本では特に女子生徒の間で上記の問題が顕著であることが明らかになりました。

従って、現在の一斉授業の方式を続けることは、ジェンダー格差の拡大にもつながっていると言えます。男子生徒は自分が理解していないことが明らかになっても恥ずかしく思わずに質問できますが、上記の調査によると女子生徒はそれができない傾向があるのです。このことから、現在の一斉授業の方式はジェンダー格差を直接的に引き起こすフェミニズムの問題でもあると言えます。

しかし、ChatGPTを利用していれば、誰にも見られずに任意の質問をすることが可能となります。このため、女子生徒であっても恥ずかしさを感じることなく、自身が理解できない点について質問をすることが可能です。ChatGPTの場合、ユーザーに対して「あなたはそんな簡単なことも知らないのですか?」などという反応をせず、非常に丁寧に説明を行います。従って、ChatGPTは個々の学習者が自由に質問を行い、必要な知識を身につけるのに非常に有用なツールであると言えます。

このように、現行の一斉指導には実に多くの問題が存在します。これまではこれらの問題を解決するために、1対1のマンツーマンの家庭教師を雇うなど、あるいは個人面談の回数を増やすなどの方法がありましたが、それらは非常に高コストとなります。僕も個人面談を行っていますが、一斉指導を行っているとそれによりコースの数が限定され、結果として僕の給料に対するコストパフォーマンスが低下することになります。

しかし、ChatGPTの使用がより広まれば、個人面談の時間を減らし、一人一人にChatGPTが各個人の問題に対応できるようになり、コストを大幅に下げることが可能になると思います。

こうした理由から、一斉指導の多くの問題を解決するには、ChatGPTのような人工知能を活用するのが最良の手段であると僕は考えます。必ずしもChatGPTだけではありませんが、人工知能がこのような問題を解決する一つの手段となるのは間違いないでしょう。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
この記事の音声版
https://listen.style/p/muracas/onp0ogpy


posted by 村上吉文 at 21:46 | TrackBack(0) | 人工知能と日本語教師 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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