2008年05月06日

論文誌・IT活用教育方法研究 ネットで全文読める!

先日「この本、読みたいんだけど高い。何とかしてくれ」と書いたら、何と編集の方が著者の加藤由香里先生に連絡してくれて、献本していただけました。うひゃあ、ブログってすごいですねえ。加藤先生、ありがとうございます。

で、後ほどそちらの本についても書かせていただきますが(厚くてまだ読みきれていないので)、今回は同封されていた「IT活用教育方法研究」という論文誌をご紹介します。こちらは40ページほどの薄いものですが、薄い割には刺激的なポイント満載です。社団法人 私立大学情報教育協会 というところが出しています。もう第10巻ですね。

以下に、面白かったところをリストアップしてみます。

全体的に感じたこと。やはり語学の時代!
掲載されている7本の論文(うち一本は研究ノートとされていますが)のうち、三つが語学関連だったこと。一つは日本人学習者のための中国語e-ラーニング、もう一つはドイツ語、そしてもう一つはわれらが日本語教育です。著者は前述の加藤先生。前にも書いたことがありますが、やはりこれからのe-ラーニングの中心は、語学なんですね。

初心者に学習しやすい中国語e-ラーニング教材
「新しい授業形式」として、以下のように書かれています。
Blended Learningへの移行、小テストによる学習効果の確認、学習進度の早い学生に対する対応、e-ラーニング教材による授業外学習の指導、中国語検定試験受験者への対応
「改善成果」としては以下のように書かれています。
学習意欲の向上、個人指導の改善、自習回数と学習時間の増加、リスニング力の向上、中国語検定試験受験者の増加

複数のソフトウェアとチームティーチングによる効果的な外国語授業の試み
LMSにmoodleを使っています。
教室にいないドイツ語の母語話者教員と、教室の日本人教員がビデオ通話ソフトを使ってチームティーチングをしています。
こうしたツールを使って母語話者を入れると、その他のe-ラーニングの部分についても評価が高くなるとのことです。ここでも、コンピューターでなく「人」がカギになると言えそうですね。

科学文献読解のための日本語教育コンテンツ
同じ大学の理系教員との共同作業が面白いです。まず理系教員が二分程度のレクチャーをして、日本語教員が理系の教員にインタビューするそうです。これはビデオとスクリプトになっているらしい。理系の大学ならではの強みですね。なお、こうした理由の一つに著作権の許諾が容易であるいことが挙げられていますが、理系の教員がいない教育機関の場合は、ウィキペディアの利用も同じ意味で有益です(著作権の許諾が不要なので)。
ここでもLMSはMoodleが使われていました。そろそろ勉強しないといけないかなあ。

情報リテラシー授業におけるケース教材とピアレビュー導入の試み
ストーリーベースの授業(主人公がカフェで働いていて、売り上げ分析や注文票作成にエクセルを使う。この物語を通して、エクセルの使い方を学ぶ)。この手法は「ストーリーベースのWeb教材を使った入門統計学のeラーニングコース」というタイトルで論文になっているらしい(発見しました)。「映画の予告編を模した授業予告」でも、この手法の効果が実証されているとのこと。(竹内俊彦:映画の予告編を模した授業予告 powerpoint教材の実施実験。 市立大学情報教育協会,平成18年度全国大学IT活用教育方法研究発表会予稿集,pp.68-69,2006)
Kellerの「ARCS動機づけモデル」というもの。Attention, Relevance, Confidence, Satisfactionが重要だとするモデル。

アセンブラプログラミング演習におけるセルフラーニング方の補修と人的支援による学習活動の促進
コンピュータによる三回の小テストと、ペーパーテストによる通過試験の併用。
ここでも、コンピュータによるセルフラーニングと「人的介助」の二つがあったことが、コースを有効にしたと述べられています。
前述のKellerとは別人らしいですが、ここでもKellerのPSIという面白そうな考えが引用されていました。PSI(Personalized System of Instruction)とは以下のようなものです。
1 教員、助手、補助指導員からなるチームを組む。
2 小単元、完全習得方式と即時フィードバック
3 学生の自己ペースで学習を進める。
4 講義への出席または欠席は受講者の自由である。
参考文献を見ると、"GOOD-BYE TEACHER"というかなり刺激的なタイトルの資料があげられています。Journal of Applied Behavior Analysis, Vol.1, No.1, pp.79-89, 1968 全文はこちらで読めます。

と、ここまでは印刷された論文集を読みながら出先で書いたんですが、検索してみると何と!全文ネットで公開されていて読めるじゃないですか!
http://www.juce.jp/archives/ronbun_2007/index.htm
タイトルだけ、以下にコピーしておきますね。
研究論文
初心者に学習しやすい中国語e-Learning教材 (12.2MB)
  郭 海燕  
病理学教科における動画教材コンテンツの開発と自学自習向けのWeb配信 (6.1MB)
  佐藤かおり,島津徳人,青葉孝昭  
複数のソフトウェアとチームティーチング による効果的な外国語授業の試み (5.68MB)
  里村 和秋,オリファ バイアライン  
情報リテラシー授業におけるケース教材とピアレビュー導入の試み (4.66MB)
  笠見直子  
アセンブラプログラミング演習におけるセルフラーニング型の補習と人的支援による学習活動の促進 (4.46MB)
  高井久美子,荒井正之,古川文人,及川芳恵,渡辺博芳,武井惠雄  
遠隔学習支援システムを用いた教育・保育実習の実践 (5.33MB)
  平野真紀,恒川直樹,卜田真一郎,輿石由美子,糠野亜紀,新谷公朗,植田 明研究ノート
科学文献読解のための日本語教育コンテンツ (8.7MB)
  加藤由香里  

私のブログを面白いと思ってくれる人には、けっこう刺激的な内容だと思いますよ。おすすめです。

なお、上で紹介したストーリーベースの日本語教材としてはこんなものも市販されています。
posted by 村上吉文 at 12:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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