2008年04月25日

日本語教育能力検定試験

ときどき、日本語教育能力検定試験のことを「知識があっても、いい授業ができるかわからない」と非難する人を見かけるので、一言。

本論の前に、この試験が完璧だと思っているわけではないことは念のため明記しておきます。特に、合格者の割合がなぜか毎年一定で、どうも合格する知識の基準というものがないらしい、ということ。このあたりは学習者用の日本語能力試験などと比べても、ずいぶんヘンテコな制度設計ですよね。

ただ、それでも、何点以上が合格したかと、その出題範囲は講評されているので、少なくとも「あの試験でこれ以上の得点を取った」ということだけは保証されているわけです。

この点だけは、採用する側の視点をおさえて理解しておく必要があります。

たとえば、大学で日本語教育専攻とか副専攻といっても、その内容はさまざまです。特に、学術的には質が高くても抽象的なテーマを卒論にしているような場合は、実践的な即戦力がない場合もあります。

では、養成講座は実践力があるかというと、こちらは更に差が広いのです。千駄ヶ谷やヒューマンなどは優秀な卒業生を知っていますが、大量に宣伝をしている養成講座の中にも、独自の教授法のレベルが低すぎ、まったく使い物にならないところもありました。実習をうたいものにして長時間の実習をカリキュラムに入れている講座も、実習を指導する人間にあまり実務経験がない場合は、単純に「それ以外のコンテンツがないから」という理由だけで実習時間を長く取っていたように見受けられることがあります。

つまり、大学の専攻や副専攻、養成講座などに比べて、検定は「何ができて何ができないか」が明確になっていて、最低限の知識があることだけは保証してくれるのです。これは、新人の教師を採用する側としては、場合によっては非常に魅力的です。特に、新人教員を大切にして、じっくり育てたいと考えている現場に、そのような傾向が強いように感じます。

確かに、日本語教育能力検定試験の合格者は「知識があっても、いい授業ができるかわからない」のですが、実は「いい授業ができるかどうかわからない」のは養成講座でも学部専攻でも同じなのです。それどころか、検定以外の場合は「実務に必要な知識があるかどうかすらも分からない」場合があるのです。

また、単純に「学部で専攻しているが検定には合格していない人」と「学部で専攻していて検定も合格している人」のどちらかを採用するとしたら、答えは当然後者ですよね。前者にも豊かな知識がある可能性はもちろんありますが、最低限の知識があると保証されているのは後者なのですから。私自身、大学では日本語学専攻でしたが、二年生のときに検定は取りました。

少なくとも、検定対策で勉強する内容のほとんどは、現場に出て無駄になるものではありません。これから日本語教師として就職する人は、有資格者でない人はもちろんのこと、有資格者であっても、検定を受けてみることをおすすめします。

何といっても、日本語教師の有資格者になるための、もっとも経済的な方法が検定合格なのです。受験料は一万円ちょっと。あとは、図書館においてある本だけでも、きちんと読めば合格できます(強制されずにきちんと読むのも難しいという人は、まず生活習慣から見直しましょう)。

とは言っても「何を読めばいいかも分からないよ!」という人もいるかもしれません。そういう人にガイド役として一冊だけおすすめするとしたら、毎年この時期に発売される「合格する本」です。正式には、今年の場合「日本語教育能力検定試験合格するための本 2009年度版―日本語教師を目指す人のバイブル (2009)」です。



もちろん、この本で勉強さえすれば合格できるという保証はありません。しかし、一つだけ確かなことは、勉強しないと合格はできないということです。

この秋の日本語教育能力検定試験に合格して、志望者のみなさんが日本語教師として教壇に立てる日が来ることを、お祈りしています。
この記事へのコメント
先日こんなことがありました。
新しく採用された学校で、新任者向けのオリエンテーションがあったんですが、
そこに同席した方が養成学校出でまだ未経験でして、
オリエンテーションの端々に出てくる文法用語がわからない様子。
聞くと「実習はたくさんしたけれど、文法の授業なんてなかった」とのこと。
えええ〜!そんなのあり?
動詞のグループ分けすら初耳だった彼女は早々にリタイアしました。
かわいそうに。
Posted by こ at 2008年04月25日 21:46
あれ!なまえが!
上のカキコは「こみみ」です。失礼しました〜。
Posted by こみみ at 2008年04月25日 21:47
こみみさん、こんにちは。
そうなんですよね。「そんなのあり?」な養成講座が本当にあるから困ったものです。
ちなみに、その方の出た養成講座ってどちらですか?

Posted by 管理人 at 2008年04月27日 07:22
うふふ。
ここで名前をあげてもいいのかしら〜。
Posted by こみみ at 2008年04月27日 19:30
ああ、やっぱりあそこですね。
うすうす感じていながら、お客様の口から語らせようとしてしまって、ちょっとズルかったですね。失礼しました!
Posted by 管理人 at 2008年04月28日 06:14
まあ、HPに「独自に開発した教授法で」とか書かれていたら、要注意ですよね。
でもわかっているから言えることで、門外漢の方々には見抜けないんでしょうねえ。
Posted by こみみ at 2008年04月28日 20:20
先生は学生時代に合格されたのですね!
お勉強が苦手な私は、日本語主専攻なのに3度目でやっと合格…(涙) でも、そういった経験も誌面づくりに生かせたのではないかと思います。

巻頭カラーでは、「検定試験に合格して現在は日本語教師」という人たちも紹介しているので、そちらもご注目ください! 皆さん、本当にイキイキとされています。
Posted by 編集( I ) at 2008年05月01日 18:04
村上先生、こんにちは。

『合格するための本』、私もライターとして取材にかかわりました。合格された方の体験記をお聞きしてまとめる、というコーナーです。

その中のお一人も、勉強中、「こんな知識ばかりアタマに詰め込んで、本当に教えるのに役立つんだろうか」と思われたということ。でも、実際に合格して教壇に立ってから、知識は必ず役立つ、と実感されたそうです。

私も(今は教えていないですが……)同感です。勉強中、疑念を持たれる方も多いですが、無駄にはならない知識だと思います。
Posted by 編集者A at 2008年05月02日 06:21
こんにちは。
以前こちらでご意見いただいた
『どんな時どう使う 日本語表現文型辞典』
の編集を担当した、たていしです。
その節は、大変貴重なお話、ありがとうございました。

検定試験の是非を問う場面、確かにありますね。
これについては、やはりわたしも「必要」に1票です!

村上先生がおっしゃるように
「『何ができて何ができないか』が明確になっていて、
最低限の知識があることだけは保証してくれる」
ということがまず第一。

それから、「日本語教師」という仕事の
社会的認知を、より確かなものにしていく、
という役割も担っていると思います。

以下、最近わたしが担当した書籍から
一部引用させていただきます。

「職業としての日本語教師が社会的な認知を受けるためには、
一定の水準の人材を揃えることが大切です。
検定は個々の教員の持ち味や技術を否定するものではなく、
むしろそれを公的に認め、
業界の外に訴えていくための有力な機能ですから、
必ず合格しておくことが必要です。」
(荒川洋平著『悩める日本語教師たちに贈る こぐまのお助けハンドブック』)

プロとしての日本語教師という仕事の専門性、そして必要性は、
社会的にも、もっともっと認知されなければならないと思います。

日本に住む外国人がどんどん増えてく中で
検定合格者から、
たくさんの優秀な日本語教師の方々が輩出することを祈ります!


たていし

Posted by たていし at 2008年05月02日 14:46
私も毎晩眠い目をこすりながらお勉強してます。今年こそ合格したいです。
Posted by shibarie at 2010年07月27日 00:35
応援してます!
Posted by 村上吉文 at 2010年07月27日 07:16
村上先生、お元気ですか?今年やっと合格できました!ボランティア活動を中心に日本語教育に携わっていますが、活動の場を徐々に広げていこうと思います!応援ありがとうございました!
Posted by shibarie at 2010年12月22日 07:47
おめでとう!
よかったですね。これからも是非がんばってください。応援してますよ!
Posted by 村上吉文 at 2010年12月22日 10:53
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