2008年03月29日

ビジターセッションや日本人との交流会には、これが効く

 先日ご紹介した吉田新一郎さんの本ですけど、実践してみました。やっぱり、いいです、これ。

 私が非常勤で働いている機関の授業で、ビジターセッションというのがあります。実は、ここで教えるまでビジターセッションというのをやってみたことがなく、初めてやってみた前回は、正直、暗中模索というか、行き当たりばったりなことになってしまいました。

 今回、二回目の挑戦で、やっぱりノウハウを仕入れとかなきゃと思って思い出したのが、効果10倍の“教える”技術―授業から企業研修まで (PHP新書)です。
 特に参考になったのが、アイスブレイキングの例と、ディスカッションの例。アイスブレイキングでは「移動する」、ランキングでは「実際に手にとるものを用意する」ということが、ここまで効果があるのか、と驚きました。

 アイスブレイキングでやったのは「今朝、早く起きた順に並んでください」というもの。お互いの名前を覚えるためには「名前の順に並んでください」というのもいいかもしれませんね。ビジターは学習者をまったく知らないわけですが、この活動によって近くの人に何時に起きたかを聞くことになり、そして、それによって自分が立つ位置を決めます。言うまでもなく、全員が並ぶには一人一人が多くの人に起床時間を聞かなければなりませんから、自然にコミュニケーションも生まれます。

 まあ、そんなことは予想できていたことなんですが、驚いたのは参加者の表情です。たったこれだけの活動で、さっきまで見知らぬ他人だった人たちがいきなり楽しそうなコミュニティになってしまったんですから。

 理屈を知っているということと、実際にやってみて効果を確かめることは、ずいぶん違うんですね。

 実は、モンゴルにいたときも在住日本人とモンゴル人との交流会みたいなのも業務としてやっていたんですが、はっきり言って成功していたとはいえず、いつの間にか他の業務に埋もれ、立ち消えになっていました。ああ、この本にもっと早く出会えていたらなあ。

 アイスブレイキングでは、この本に出てくる「三つのコーナー」もやりました。こちらがいくつかの質問をし、「賛成、反対、どちらともいえない」のどれを選ぶかによって、立つ場所を決めるのです。今回は「仕事」がテーマでしたので、「やりがいがあれば給料が安くてもいいですか」などの質問を三つほど用意しておきました。

 ただ、これらの質問は考えずに移動するだけなので、もっと質問を用意しておけばよかったと思いました。最初の「早く起きた順番に並ぶ」は、その質問一つでたくさんのやりとりが生まれ、時間もかかるのですが、「三つのコーナー」は瞬間芸です。十個ぐらい質問があっても、ぜんぜん飽きることはないと思います。

 こうしてアイスブレイキングをした後に、いよいよメインのディスカッションに入りました。

 メインのディスカッションでは、この本に出てくる「ランキング」というのを使いました。四枚(または9枚)のカードに、一つずつ言葉を書いて渡し、それを二人以上のグループで話し合ってダイヤモンドの形にするのです。四枚の場合は、「一番大切なもの」を上に出し、「一番大切でないもの」を下におろします。それで

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というダイヤモンド型になるわけですね。もちろん、9枚の場合は五段階にして
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という形にします。

 今回は仕事がテーマなので「給料」「上司」「成長する機会」「人の役に立つ」という言葉を書いたカードを配りました。もちろん、ここでは「話し合う」ことが目的なので、こちらか「これが正解」などと提示することはありません。

 最初は二人組で一つのダイヤモンドを作り、次に隣のペアと四人組で一つのダイヤモンドを作り、さらにもう一度合体して8人でダイヤモンドを作る所までやりました。

 ここでも、やはり「話し合いながら実際に手が動く」「メンバーは複数なのにカードは一組」というのが非常に効果的であるように思えました。例えば黒板に四つの言葉を板書して、「話し合って、この中から一番大切なものと一番大切でないものを選んでください」と言っても、ここまでスムーズには議論が進まなかったでしょう。

語学教師の中には、言語でないツール(カード)を使うことによって、言語的な活動が損なわれると危惧する人もいるかもしれません。しかし、言語以外のツールに依存することによって、却って言語的な活動が活性化することもあると思いますし、そのためにもこれは非常に有効な活動だと思いました。


 以上の文章は、もう三週間ぐらい前に書いたものなんですが、アップロードするのを忘れていました(俺ってバカ)。ちょっと古くなってしまいましたが、消すのももったいないので、出しておきます。
posted by 村上吉文 at 07:27 | Comment(4) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
村上さん、ご無沙汰しています。研修でご一緒させていただいた大原です。研修時にタイに行く方から、このブログはおもろいで、と言われ読んでみました。僕はてっきり「笑える」面白さかと思っていたら、どうやら「興味深い」面白さだったんですねー!ここ最近の僕はというと、通常の生活に埋もれ、毎日の通勤ラッシュ…。とほほ。そろそろウクラ・・への準備もしたいのですが、5月下旬までこの生活が続きます。(号泣)ではでは、またお邪魔します。
Posted by 大原淳裕 at 2008年03月30日 13:27
大原さん、いらっしゃいませ!
まあ、私が個人的に面白いと持っていることを勉強代わりに書いたりしているだけなんですが、他にもそう思ってくれる人がいてくれたら嬉しいです。

ところで、タイに行く人で関西弁というと、N嬢でしょうか。でも「おもろいでー」まで行くとコテコテすぎて彼女っぽくない気もしますが・・・。
Posted by 管理人 at 2008年03月30日 15:00
ご無沙汰してます。

こちらで吉田氏の著書をご紹介くださったので、あらかた買って読みました。読んだだけで、具体的な応用はこれから考えようと思っていたんですが、今回の記事を拝読して、「授業にそのまま使える!」と思いました。「何時に起きましたか?」を習った段階で使えるアクティビティになりますよね。設定次第で、どの段階にも応用できる活動です。

…良く考えれば使い古された教室活動なんですが、何か自分にとって新しい息吹を持って見直せたかと思います。「移動する」がポイントだったんですね。

ランキングも、活動のポイントが明確で非常に参考になります。「話し合いながら実際に手が動く」「メンバーは複数なのにカードは一組」ですか。すぐ実践してみます!


いいコミュニケーションが生まれて、良いコミュニティができる活動、最高です。日本語を介してそれができれば、結果も評価もついてくるだろうと思います。
Posted by ようすけ at 2008年03月31日 16:17
ああ、なるほど!
この本はビジターセッションのために再読したところだったし、教師研修のセミナーで勧められたので、日本語そのものを教えるときに使うことは実はあまり考えていませんでした。(ハズカシ)

いやー、ブログをやっていると、こういうフィードバックがあるから自分のためにも有益なんですよねえ。
Posted by 管理人 at 2008年04月01日 04:12
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