2008年02月13日

勉強すれば怖くない著作権

 以前クリエイティブ・コモンズについてご紹介したことがあります。そのときの記事を読んだ方からの反応で、どうもクリエイティブ・コモンズ以外の著作物について「なんでもかんでもコピーはだめ」とか思い込んでいる人がいるように思えたので、ちょっと書いておきます。

 海外の場合はベルヌ条約などもでてきますが、少なくとも日本で作られた教材を日本国内で扱うには関係ないので、ここでは無視します。ここで関係してくるのは日本の著作権法です。

 著作権法はもちろん著作者の権利を守るためにも役立っていますが、公共の役に立てるためにも武器になります。つまり、正当な範囲内なら、著作者に無断でコピーすることはできるのです。

 著作権法の第35条は、以下のように述べています。
著作権法第35条第1項 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
(ちなみに、法律の条文も著作権で保護されませんのでコピーできます)

 ここでは、無断で複製できる条件を以下のように六つ挙げています。

1,非営利の教育機関であること
2,授業の担当者かそのクラスの学生がコピーすること
3,授業の過程で使うこと
4,必要な限度を越えないこと
5,すでに公表されている著作物であること
6,不当に作者の利益を害さないこと

 ここでよくある誤解は、「非営利」についてです。よく「公立の学校は非営利団体、私立の学校は営利団体だ」とか、あるいは「教育法の一条校(小学校、中学校、高校、大学、大学院など)は非営利だが、日本語学校や専門学校は営利団体」などと理解されている場合が多いようです。この理解だと、普通の日本語学校での市販教材のコピーはすべて違法ということになってしまいます。

 でも、これ違いますよね?

 営利団体というのは、その所有者が営利を目的に資本を投資しているもので、たとえば株主が株数に応じて配当金をもらえる株式会社などがそれにあたります。実際、株式会社は営利法人です。

 しかし、学校法人は非営利法人です。ちょっと面倒くさいんですが、学校法人の前に、民法第34条の公益法人の定義を見てみましょう。
(公益法人の設立)
第34条 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。
http://www.houko.com/00/01/M29/089.HTM#s1.3

つまり、公益法人が非営利なわけですが、この公益法人に学校法人も入っているわけです。ウィキペディアによると、主なものだけでも公益法人にはこんなにたくさんあります。
公益法人(民法の法人)
社団法人
財団法人
学校法人(私立学校法)
宗教法人(宗教法人法)
医療法人(医療法)
社会福祉法人(社会福祉法)
職業訓練法人(職業能力開発促進法)
特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法)
協同組合
農業協同組合、農事組合法人 (農業協同組合法)
漁業協同組合、漁業生産組合、水産加工業協同組合 (水産業協同組合法)
生活協同組合、消費生活協同組合 (消費生活協同組合法)
信用協同組合、事業協同組合、火災共済協同組合 (中小企業等協同組合法)
相互会社(保険業法に基づくもの)
中間法人(中間法人法に基づくもの)
有限責任中間法人
無限責任中間法人
管理組合法人(建物の区分所有等に関する法律)
各士業法に基づく法人
監査法人(公認会計士法)
特許業務法人(弁理士法)
弁護士法人(弁護士法)
税理士法人(税理士法)
土地家屋調査士法人(土地家屋調査士法)
司法書士法人(司法書士法)
社会保険労務士法人(社会保険労務士法)
行政書士法人(行政書士法)
ウィキペディア


最近はソフトバンクやLECなどの株式会社も大学に参入してきていて、営利法人で教える日本語教師もいるかもしれませんが、まだまだ少数でしょう。それ以外の普通の日本語学校は、国際交流基金やJICAなどでなくても、要するに民間の学校でも非営利なのですから、非営利以外の五つの条件さえ満たしていれば、無断で複製はできるのです。

 しかし、ソフトバンク大学やLEC大学は、一枚たりとも他人の著作物をコピーしちゃいけないかというと、そんなこともありません。先日ご紹介したクリエイティブ・コモンズのうち、商用可としているものなら正々堂々とコピーできるわけですね。これは著作権法が、許可なく複製することを禁じているからであって、クリエイティブ・コモンズの場合は既に公開と同時に二次利用(複製)が許可されているのですから、違法とならないのです。

 ということで、著作権者の権利は守らなくてはなりませんが、かといって複製は全て違法だと決めてかかる必要もありません。法の範囲内で、しかし臆することなく、学習者の利益のために正々堂々とコピーをしましょう。

本ブログ内での関連する記事
「日本語教育機関用カレンダー無料贈呈!」
http://mongolia.seesaa.net/article/82011920.html
タグ:著作権
posted by 村上吉文 at 00:00 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
数年前にこの件では相談にのっていただきましたが…難しい問題ですよね。分からないまま見切りでやってる人、わたしも含めて海外には特に多いと思います。
Posted by 沼 at 2008年02月13日 15:09
 著作権法については人によって解釈が違うので私も悩みます。
 私なりの判断としましては「複製したものを無断でビジネスに使わないこと」・・・釈迦に説法ですがそれにつきると思います。
 
 
Posted by 金港人 at 2008年02月14日 06:04
日本にある日本語学校の大多数が会社組織だと思うのですが・・・。
Posted by なか at 2008年11月28日 01:54
ご指摘ありがとうございました。

今は会社の方が多いんですねー。
日振協のサイトで「あ」で始まる学校だけを調べてみたら、38校中、22校が株式会社か有限会社でした。ただ、残りの16校では非営利として使えるわけです。


Posted by 村上吉文 at 2008年11月28日 08:01
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