2007年12月30日

志向性を増幅させるスゴイ勉強法

梅田望夫さんが「ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)」という本で「志向性」の大切さを論じていますが、これを語学の勉強法に応用してみると、こんな感じではないでしょうか。

まず、最初は何でもいいので、学習言語の中からとにかく一つ知りたい単語を選びます。どちらかというと最初の言葉は抽象名詞は避けた方がいいかもしれません。

次に、その単語で画像検索します(抽象名詞だと、ここでいい結果が出ない)。初級の場合、画像の下に表示される説明のほとんどは理解できません。逆に中級以上なら理解できる場合も多いと思うので、画像検索でなくてもいい可能性もありますが、ここでは留保しておきます。

そして、面白そうな画像をクリックしてみます。自分で主体的に選んだ対象なので、「これは何のページなんだろう」と見出しなどを辞書でどんどん調べられます。そこにあるのは強いられた学習ではなく、未知の森を探検するドキドキ感です。

電子辞書などでは、検索した言葉の履歴が残っているものもありますから、そういう場合はとりあえずどんどん辞書を引きながら自分の興味のある内容を見ていきます。履歴が残らない場合は、面倒でも手動でリストを作っていきます。訳語までは書く必要はないでしょう。

一日に学習できる量には限度がありますから、とりあえず面白そうなページを理解したら、そこで辞書を引いた言葉のリストを振り返り、覚えるべき重要な語彙を選びます。また、理解が間違っているかもしれない場合は、リストから除外します。(独学でなければ、教師にチェックしてもらうのがいいですね)

そこでできあがったリストは、他人にはともかく、少なくとも自分にとっては自分の志向性にピッタリあった内容の語彙リストになっているはずです。こうした内容を蓄積していくことで、語彙を増やすことができるはずだし、なんと言ってもスピードが違います。

最初にこの方法を試してみたのは、ベトナム語を勉強している私の場合、「フォー」という料理の名前でした。調べなければ「フォー」が分からないぐらいですからまるっきりの初心者です(日本語学習者だったら「すし」も「さしみ」も知らないレベル)。その時点で学習した語彙数も200足らず。

しかし、そんなレベルでもこの方法は充分役に立つんですよね。何気なく画像検索してみると、業者のいろいろなサンプル写真に混じって、一人のベトナム人が料理の前に座っているスナップがありました。そのページを開いてみると、アメリカに留学しているベトナム人留学生で、「ここのフォーもおいしいが、自分はやっぱりハノイのフォーが好きだ」という感想がベトナム語で短く書いてありました(たぶん)。

それまで東京外大のサイトでしかベトナム語に触れていなかった私にとって、リアルな文脈を伴ったナマのベトナム語に出会った気持ちというのは、久しぶりに語学学習の喜びを思い出させてくれるものでした。このときの、「うむ、読める、読めるぞ!」という感動・・・。ラピュタの中枢でムスカが辞書をめくりながら叫んだ気持ちが手に取るように分かりますね。

まあ、何回かやると、「こんなド初級でも現地語のウェブが分かるんだ!」という感動は薄れてしまいましたが、それでも以下の2点は語学学習において有効ではないかと思うので、再確認しておきます。

1.語学学習において、自分の志向性に沿った素材を選ぶには、ネットは最適である。
2.少なくとも初級段階では、志向性に沿った素材を選ぶときに、画像検索を使うと効率的である。

ネットでメジャーとはいえないベトナム語ですら、検索するといろいろ見つかるのです。ブログの数では英語よりも日本語の方が多いという調査結果もあるぐらいですから、日本語学習者にとって、こうした学習方法は無限のリソースを備えているといってもいいのではないでしょうか。

実はこの点について、「フューチャリスト宣言 (ちくま新書 656)」における梅田さんとの対談の中で、脳科学者の茂木健一郎さんも触れていて、そこではまさに志向性と教育の関係について、次のように述べています。
特にネット時代においてはそこ(村上注:志向性のこと)が非常にクリティカルです。結局、サーチ・アンド・チョイスのチョイスの場面で、どういう志向性をもてるか、ということが大事だという気がするんですね。そこにおける選択肢が「可能無限」になるのだから。(中略)今までの教育というのは、学校で学ぶように定められた内容について100点を取れるように向けてあげることでした。そうでなくて、今は学びうる範囲が無限に広がったから、選択することこそ教えなくてはならない。
『フューチャリスト宣言』p.107

上記は茂木さんの言葉ですが、梅田さん風に言い直すと、教育(つまり学習)において、いかに「好きを貫け」と励まし続けることができるかが成否を決することになる、と言ってもいいのではないでしょうか。

参考文献

posted by 村上吉文 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加
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