2007年10月19日

マンガを教材にするメリットとデメリット

判断に迷う時って、よく自分の中でディベートみたいになりません?
マンガを教材にするかどうかで、ちょこっと考える必要があり、メリットとデメリットをまとめてみました。なんか文体が違いますが、ご容赦ください。

 うちの学校は頭が固い上司が多くってね。困っちゃうよ。今日も「授業でマンガを使いたい」って言ったら、怖い顔で怒られちゃった。でもねえ、別にふざけて提案したわけじゃないんだけどなあ。マンガって、教材としても、すごくいいと思うんだよね。
 だってさ、まず文脈があるでしょ。どんな性格の人物がどういう状況で言う言葉なのか、すごく具体的。何の文脈もなくいきなり例文が出てくる教科書が多いけど、文脈から切り離して言葉だけ勉強するなんて、意味があるのかな。特に日本語って、文脈依存型の言語って言われてるでしょ? 
 それから、マンガは日本の文化がすごくよく分かると思う。確かに茶道とか生け花みたいな伝統文化はあんまりマンガには出てこないけど、日本文化ってそれだけじゃないでしょ。どういうときに日本人は怒るのかとか、どんな時に喜ぶのかとかも大切だし、登場人物の服装を見ているだけでも日本文化の勉強になる。それにマンガ自体が日本の文化じゃないか。ディズニーが描いたマンガとは全然違う。
 文化だけじゃなくて、社会の勉強にもなるよ。最近の流行では「働きマン」なんていうのもあるけど、日本の漫画にはけっこう職場が舞台になっているものが多いからね。昔は「課長・島耕作」なんていうシリーズもあったし。あの漫画なんて、最初はヒラのサラリーマンだった島耕作が、最後の方じゃ社長になってたもんね。俺、あんまり好きじゃないんだけど、あの漫画。
 もちろん、ビデオやDVDでも同じようなことはできるけど、でも、それって機械が必要でしょ? マンガは一度プリントしちゃえば、電車の中でも勉強に使える。DVDなんて、家にもない学生がずいぶんいるんだよ。教室でしか使えない教材と、どこでも使える教材とどっちがいいと思う? それに、DVDプレイヤーを買う値段とコピー代では、どっちが高いと思う?
 それに、何と言ってもマンガを使ったら授業が楽しくなると思う。日本語教師の仕事って、学生の動機を維持することもその一つだと思うんだよね。太宰治とか読ませてる先生がいるけど、本当に学生は楽しんでいるのかな。勉強を嫌いにさせてるだけじゃないの?
 たぶん、マンガを使うなって言う人は、マンガのことをあんまり知らないんじゃないかな。マンガも文学も、質の高いものもあれば低いものもある。エロマンガを指さして「マンガはだめ」っていうのは、エロ小説を指さして「小説はダメ」っていうのと同じぐらい変な話だと思う。エロ小説を授業に使う先生がいるわけないでしょ。それと同じように、質の高いマンガだけを授業に使えばいいんだから。


 昨日は、私の学校の若い先生が「授業でマンガを使いたい」と言い出しました。授業にマンガですよ? 信じられますか? 当然、私は許可しませんでした。授業でマンガなどもってのほかです。
 まず第一に、授業の品格の問題があります。どんな学校であっても、学生は真剣に自分の人生の可能性を開くために来ているのです。したがって、授業とは神聖で品格のあるものでなければなりません。しかし、電車の中で漫画を読んでいる学生やサラリーマンのニヤニヤした顔を見てください。まったく品格がありませんね。また、女性の身体を強調して描写したマンガも数多くあります。その意味でもマンガが授業に使えるはずがありません。
 次にコストの問題があります。マンガは絵が多くて文字が少ないですから、文字だけの教材に比べて、1ページあたりの言葉が少なすぎます。つまり、同じ量の日本語に触れるためには、マンガは文字教材に比べてコピーが大量に必要になります。言葉の授業なのに、絵をコピーすることにお金をかけていいのでしょうか。
 三つ目の問題として、マンガに出てくる言葉は基本的にくだけた会話文です。したがって、読みの授業に見えても、扱っている内容は会話の日本語です。フォーマルな日本語が身に付くとは思えませんし、会話の授業なら文字や絵ばかりのマンガでなく、音声のある映画やテレビ番組の方が適しています。
 四つ目の問題として、マンガは言葉が分からなくても絵だけでストーリーが分かってしまいます。これでは言葉の勉強になりません。言葉が分かって初めて達成できるタスクがあってこそ、言葉の授業です。
 以上のような理由から、私は日本語の教材としてマンガを利用することは賛成できません。
posted by 村上吉文 at 04:33 | Comment(7) | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
お久しぶりです.

私も漫画を使うことは大賛成です。別に漫画だけでクラスをする訳ではないし,現に上級クラスで美味しんぼや金田一少年の事件簿,中級クラスでもドラゴンボール,そして,初級では文字の紹介などでちょっと使ったりしています。上の4つの理由はただの個人の嗜好の問題のような気もしますが、、
Posted by しんじ at 2007年10月19日 10:27
私はモンゴルの大学で日本語を教えていますが、今私が勤めている大学の授業ではとてもじゃないですが、まんがを教材としては使うことはできません。理由はモンゴルではまんがやアニメは子供が読むものという固定概念があるからです。まんがにもかなりの利点があるというのは私もよくわかっていますが、授業で使用したらきっと教師の中からも学生の中からもクレームがわんさかでることでしょう…。

もし私が今の職場でまんがを使うならば、教材としてはなくて、自主学習用の補助教材として使う道はあるかなと。

まあ、まんがの内容にもよりますけどね。

私は時事ねたを使った4コマまんが(モンゴル人にも受け入れてもらえそうなもの、時事ネタ系)を授業で使ったことが2度ぐらいあります。ふきだしの部分を修正液でつぶして使いました。4コマまんがはおちがはっきりしているのでわかりやすかったです。学生にふきだしの部分に日本語で言葉を入れさせて、あとで発表させて。笑点みたいになってなかなかおもしろかったのですが、授業で20分ほど使ってみただけです。

個人的にドラゴンボールやスラムダンクなどを入手して、娯楽としてまんがを読んでいた学生はたまにいますね。
Posted by shibarie at 2007年10月19日 15:30
しんじさん、お久しぶりです! やっぱりアメリカだとその辺オープンですねえ。正直うらやましいです。実は読解の授業で漫画を使おうかと思っていたのですが(もちろん一部で)、私のいるセンターはshibarieさんの国からの参加者もいるし、けっこう頭の固い国の人もいるので、なかなか踏み切れません。

shibarieさん、shibarieさんの研修、私も講師陣に加わることになりそうです。モンゴルで参加していただいた研修(私がやってたやつ)に比べたら、ずっと内容も洗練されているし、予算も数百倍ぐらい違いますので楽しみにしていてください。(でも、けっこうハードですよ)
Posted by 管理人 at 2007年10月20日 05:44
おお!そうですか!日本でもよろしくお願いします。けっこうハードなくらいが私にはちょうどいいかもしれません。研修、楽しみにしています!
Posted by shibarie at 2007年10月20日 18:19
初めて投稿します。
現在日本国内で教えておりますが、漫画を教材に使ったことはありません。
漫画を教材に使うことについては慎重であるべきです。
日本人のなかでさえ、ある種類の漫画は好きな人は強い関心を抱くが、そうでない人は拒絶反応を示すのです。
男性が読む漫画(サラリーマンや学生が車内で読んでいる漫画雑誌など)の性描写や暴力シーンなどは女性には見るに耐えません。また女性が読む漫画(レディースコミック、少女漫画)も「恥ずかしく読めない」という男性がほとんどです。
「日本の漫画に興味があったから日本語の勉強を始めた」という学習者を教えたことがありますが、同じクラスに「漫画には全然興味がない」
という学習者もいました。
漫画はオタク文化の際たるものなんでしょう。オタクは自分の感性に素直ですが、違った感性を持つ人にメッセージを伝えようとはしないのです。
普遍的な内容を持つ漫画があればぜひ教材に使いたいですが、そのようなものはきわめて少ないのです。「ドラえもん」や「サザエさん」や「宮崎アニメ」くらいでそれ以外は特定の読者しか対象にしていません。
私たちの多くは小学校から大学まで授業で漫画を読んだことはありません。むしろ親や教師から「漫画を読むな」といわれてきました。でもそんな親や教師に反発して読んできました。漫画は授業で取り上げるまでもなく、自分の興味の趣くままに読めばいいのです。
Posted by さすらい人 at 2007年10月27日 17:31
おっしゃるとおり性描写や暴力的な物は授業では扱うべきではありませんよね。
また、学習者のマンガに対する感じ方も考慮する必要があるのもご指摘のとおりです。

ただ、私の知っている限り、マンガを嫌っている人の中には「食わず嫌い」な例も結構ありまして、その辺に対してどのように対応すべきか悩んでいるところです。



Posted by 管理人 at 2007年10月29日 09:19
私も実はおっぱい大好きなんです。ぜひうちのサイトにも遊びに来てください。
Posted by ideal_man at 2007年12月22日 17:50
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