2007年09月20日

ケータイ小説も悪くない

日本語教師のくせに何てことを言うんだ!と叱られてしまいそうですが、最近はやりのケータイ小説も悪くないんじゃないかな、と思いました。いや、作品としてじゃなくて、教材としてです。

「あんな日本語を教材にするのか!」という更なるお怒りも、まあ、分からないこともありません。教科書的な日本語とは、相当な距離がありますよね。

ただ、ある程度の学習経験があり、これから日本語の本をどんどん読んでいくことになる学習者に対して、最初の一冊目としては、なかなかいい選択ではないかと思うのです。

というのも、ケータイ小説の特徴として、まず語彙数が非常に少なく、そして一文の長さも短い。この二点は、たしかに文学作品としての表現の深みという面では以下のように不満を持たれる原因となるわけですが、教材として考えるとむしろメリットとさえ言えます。
ケータイ小説全般に言えると思うが、語彙数が少なすぎると思う。
『赤い糸』のページにあるマイラさんのレビュー

こういう特徴は、ケータイの画面で読まれることを前提にしていたのが原因ですが、印刷されている場合には違和感をもたれる方が少なくないようです。

そして、こういう本で「なーんだ、日本語で本を読むって、案外簡単だなあ」と思わせることができれば、もっと先に進むことができます。

少なくとも、文法力も語彙力も二級以上ありながら、読むことにまだ慣れていないような学習者にとっては、ケータイ小説は「日本語で読書する」という世界に足を一歩踏み入れるためには、最適といえるのではないでしょうか。

それと、もともとがケータイのサイトで発表されているので、電子データが手に入れやすいというのも、教材としては大きなメリットです。そのままリーディングチュウ太なんかに通せますからね。

ということで、何冊か読んでみたのですが、そういう視点でとりあえず一冊だけおすすめするとしたら『teddy bear』でしょうか。


『teddy bear』
帯には「女子高生がケータイで書き、多くの人が号泣したLove Story」と書いてあります。
内容は、タバコ、化粧、セックスから、リストカット、ドラッグまで、かなり過激です。これって普通の高校生じゃない(ですよね?)ということが誤解されるのはちょっと心配ですので、それは明確にしておいた方がよさそうです。

性描写は他のケータイ小説ほど露骨ではありません。「抱きしめられてそのまま一つになった」とかいう感じです。

ただ、自分の彼女が女友達と遊びに行くことにも反対する男とか、それに従ってデート以外は家から出ない女って相当古いように見えるんですが、今でもこういうのが存在できるんでしょうか。私の知っている世界には、男も女もこういうタイプはいませんので、違和感ありまくりです。

さて、ここではあくまでも教材として考えているので内容も書いておきますが、念のため伏字にしておきます。おおざっぱな流れとしては
恋人との出逢いと別れ
再会
恋人の発病、死。
親友の出産。

という感じです(伏せ字はCTRL+Aで読めます)。先入観があったのかもしれませんが、思ったよりもずっと「生きる」ということをまじめに扱っている印象がありました。それだけ、生きることの実感が得られない時代なのかもしれません。

amazonのレビューでは、満点と1点(0点がないので最低評価)の二つしかありません。六人中二人が最高点、四人が最低点です。
日本語の表記として「つらい」をなぜか「ツラい」と書いていたりもしますが、そういった不自然なものはそれほど多くはありません(文学作品としては多すぎると思いますが)。速読用に、「とりあえず一冊読破した!」という達成感を得るためには最適ではないかと思います。

後二冊ほど読んだ本のメモを書いてみます。

『赤い糸(上)』
主人公が中学二年生女子なんですが、セックス、タバコ、酒、レイプなどが出てきます。両親の離婚や、出生の秘密など、韓流ドラマというか、昔の「赤い〜」シリーズのようなエピソードが満載です。

思ったよりも日本語の問題は少なく、さくさく読めるのではないでしょうか。この本に限らず、大人なら、だいたい一時間ぐらいでケータイ小説を一冊読めます。
性描写はあまり露骨ではないが皆無でもありません。
amazonのレビュー参照。

『恋空』
レイプ、いじめなど、こちらも刺激的ですが、美嘉という作家はいまやスター作家だそうです。

参考資料
出版科学研究所の調査。
@『Deep Love〜』が刊行された02年12月から07年6月の間に、A単行本で刊行された文芸書で、B取次窓口経由の新刊の中に、52タイトル・58点のケータイ小説が確認できた(内藤みかや、Yoshi『翼の折れたエンジェル』(双葉社)など、広義のケータイ小説も含む)。
http://www.ajpea.or.jp/column/column_200707.htm#0810


「デジタルARENA」平山記者によるケータイ小説の共通点
【共通点】
実話をもとにした話で、主人公の恋人(または想いを寄せる相手)が最後に死ぬ。
主人公の人生が波乱万丈。インパクトのあるシーン(レイプ、自殺、妊娠、傷害事件、売春)が頻出。
ストーリーが大味。良く言えば分かりやすい。
主人公は悲惨な体験をしながらも、ポジティブに生きている。
http://arena.nikkeibp.co.jp/article/col/20070301/121061/


その他、ITメディアの「ケータイ小説の「女王」が企業から注目される理由」もなかなか面白かったです。

以下、読んでいないものも含めた、主なケータイ小説のリスト(小説を元にしたコミック版も載せておきます)


これ以上の情報は、もしかしたらこの本に載っているかも知れませんが、私は読んでいません。


さて、学習者のタイプによっては、こういった恋愛小説は受け付けられないでしょうが、そういう場合にはビジネス書でも、実はかなり簡単に読める本があるんですよね。

最近のベストセラーの中では経営者として有名な北尾吉孝さんの『何のために働くのか』なんかも、かなりオススメです。

これに限らず、口述筆記形式のものなら二級レベルで読めそうなビジネス書もかなりありますよ。
posted by 村上吉文 at 06:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加
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