2007年08月28日

疑惑の銃弾と朝青龍

「疑惑の銃弾」というのは、「ロス疑惑」について初めて報道した週刊文春の記事ですが、もう23年も前の出来事です(事件自体はその数年前)。若い人は知らないと思いますが、今回の朝青龍関に関する社会の動きと非常によく似ている点があるので、メモしておきます。

さて、「ロス疑惑」自体は三浦和義さんという人が妻に多額の保険金をかけて殺したのではないかという疑惑が大規模に報道され、本人も逮捕されたものの、最高裁まで争った結果は結局無罪だったという事件です。

では当時、彼が無罪だろうと思っていた人、いますか?

東京地裁の判決の頃には、「これじゃ有罪は難しい」と思っていた人もいたかもしれません。だって、誰が殺したのかも分からないのに、「三浦が依頼した」なんて、無理がありましたからね。が、少なくとも週刊誌をにぎわせていた84年、85年の時点で、無罪を予想していた人はいなかったはずです。

実を言うと、私もそうでした。

私も、三浦が殺したんだろうと思っていました。だって、その根拠はたくさん報道されていたし、「あいつはいいヤツだ」なんていう人は一人もいませんでしたから。「警察はどうしてまだ逮捕しないのか」「三浦からカネでももらってんじゃないのか」と思ってました。判決結果から見ると、明らかに間違っていたわけです。

しかし、当時、普通の日本人がマスコミを通して与えられていた情報だけでは、「実は無罪かもしれない」などと想像することは、事実上不可能でした。

では、その報道は正しかったのでしょうか。判決後の三浦自身の名誉毀損訴訟では、以下のようにほとんどのケースで三浦側が勝訴しています。
名誉毀損訴訟
三浦はマスコミに報道された名誉毀損報道に対し、弁護士を立てない本人訴訟を起こす。マスコミに対する名誉毀損の訴訟は476件にものぼり、その80%で三浦が勝訴している(15%は時効による却下、5%は三浦の敗訴)。
ウィキペディア

つまり、その当時の報道が正しいかどうかは、報道で判断する限り、分かるはずがないのです。評価の分かれる場合は「こちらの評価が正しい」などと個人が判断することができますが、マスコミがバッシング一色に染まっているときは、読者にはそれ以外の判断材料がないのですから、その報道が正しいのかどうか判断できないのです。

ずいぶん昔のことを書いてしまいましたが、こんなことを持ち出したのは、朝青龍を巡る一連の出来事が、あまりにもロス疑惑の初期の段階に似ているからです。

まず、バッシングの遠因について。
「ロス疑惑」は他人の不幸を喜ぶ日本人の嫉妬心から生まれた。整った顔立ちに長身、会社を経営して外車を乗り回し、妻も美人・・・。マスコミはそんな三浦が怪しいと騒ぎ立てた。
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/giwaku.htm


今回の朝青龍の件も、少なくとも彼が若くして頂点まで上り詰めてしまったのが原因の一つです。
「報道番組や情報番組も朝青龍の恩恵を受けていますが、笑いが止まらないのがワイドショーです。この時期はいつもネタがなくて四苦八苦しているのに、今年は朝青龍がいるからね。番組で朝青龍を取り上げると視聴率が3%近く伸びる。彼は最高のヒール(悪役)です。視聴者は頂点に上り詰めた大物が転落する姿を興味深く見ているのです」
http://news.livedoor.com/article/detail/3281782/


そして、その処分が合理的な判断というよりも、マスコミやら世論に押されてしまっていること。(まあ、マスコミに迎合するのも合理的な判断かもしれませんが)
ロス疑惑では以下のように述べられています。
凶器などの直接証拠がなく、検察は状況証拠を積み上げる捜査方法を採ったが、マスコミの過熱報道が先行し、捜査はその報道の影響を受けている。
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/giwaku.htm

この「検察」を「協会」に読み替えてみると、今回の件にそっくりですよね。以下は処分を発表したときの北の湖理事長の反応です。
関係者によると、出席した理事は世間の厳しい批判に配慮した意見が出た模様で、北の湖理事長(元横綱北の湖)も、これを認めた。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/sports/72589/

朝青龍の帰国問題に関しても、理事長の発言から、医学的な理由による判断ではなく、政治的な判断であることがわかります。
 「1度は何らかの形で(国内の病院に)通院するとかできないか。すぐにモンゴルに帰る、では世間も納得しない。検討してみてください」
http://www.sanspo.com/sports/top/sp200708/sp2007082203.html


そして、世論というものがどのように形作られるか。先日の「国家の罠」に出てくる外務官僚の台詞をもう一度引用しておきます。
「日本人の実質識字率は5%だから新聞は影響力が無い」「日本の世論は週刊誌の中吊り広告とワイドショーで動く」

そして、そのワイドショーは前述のとおりです(終戦の日にも朝青龍のことばっかり放送していて、それでいいんでしょうかねえ)。

つまり
・視聴率が取れるので、ワイドショーは視聴者の嫉妬を利用する。
・悪役の情報しか与えられないので、世論もバッシングに染まる。
・世論に押されて、責任者(検察なり協会なり)が不当な処分を下してしまう。
このような構造ができてしまっているわけですね。

こういう問題を防ぐには、
・マスコミは視聴率よりも事実を公正に報道することを優先する。
・市民がメディアリテラシーを上げるための教育を行う。
・責任者は自分が血祭りに上げられても毅然とした判断をする。
といったことがあげられますが、どれも現状では簡単に実行できることではなさそうです。


このエントリーに関連する「むらログ」内のエントリー
こうして悪役に仕立てあげられる朝青龍
捏造なのか、誤報なのか。朝青龍が処分された理由
posted by 村上吉文 at 05:53 | Comment(14) | TrackBack(3) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
ガタガタ言ってないで、さっさとモンゴル帰れ!
Posted by いいから! at 2007年08月28日 11:36
朝青龍の日頃の行いはモンゴルでも意見が分かれるところですが、
そういうのは別として、
今の日本のマスコミと、それによって動く視聴者には、私もどうかと思います。
自分の判断力をあげていかないと、なかなか難しいとは思うのですが…。
Posted by 15-1mongol at 2007年08月28日 12:54
今回の件で比べられるべきケースは、
松本サリン事件だと思います。

マスコミの中にも良識のある方はいると思いますが、ほとんどはより激しく自己の間違いを隠すためにも突っ走るでしょう

マスコミのやりたい放題。実際、この日本はマスコミのものです。

僕は、どうすることもできずに民放を見ない、
スポンサーの商品はごみ箱に捨てるということしかできません
Posted by コバチェビッチ at 2007年08月28日 18:08
管理人も、もちろん今日の便でモンゴル行くんだよね?
しばらくブログ書けないね。
Posted by ノロマ? at 2007年08月29日 15:44
朝青龍関の成田空港の映像を見ると、7/30の帰国時には顎が3重だったのに、今日は1重でした。
あきらかに痩せていて、覇気が無く、生気を欠き、肌に張りがなく、顔色も悪く、病状の深刻さがうかがえました。心配です。
Posted by 同情します at 2007年08月29日 17:45
いい加減、自分に有利な情報ソースだけを引っ張るような、マスゴミと同じ手法をとるのはやめましょう。
あなたの今までの朝青龍に関する情報の出し方は、そのまま今回のあなたの記事に返りますよ。

更に
>世論に押されて、責任者(検察なり協会なり)が不当な処分を下してしまう。
これに関しては、営利目的であるビジネスであれば当たり前の事です。
不当なのかどうかはどのように判断するのですか?朝青龍が「不当な処分」であれば、その不当な理由と情報ソースを提出しましょう。
あなたが信じられる情報ということで引用している「相撲協会」の下した処分のはずですがね。

メディアリテラシーとは「情報を評価し識別する」ことです。あなたのように、自分に有利な情報ソースだけを取り出し、意図的に改変・誇張して発信することではありません。管理者自身が、メディアリテラシーを勉強するべきです。
Posted by kei at 2007年08月29日 20:40
keiさんこんばんは
ではkeiさんは朝青龍の罪はいったいなんだと思われますか?
少し整理して、箇条書きにしていただけないでしょうか。
すみませんがお願いします。
Posted by 悪魔くん at 2007年08月29日 21:41
そうそう。情報ソースに事かかないように、

http://www.asahi.com/sports/spo/TKY200708270137.html
朝青龍さんは、1億円も申告漏れしたようですねw 一般人の経理の私には、「1億円」も、さらに「テレビの出演料」など、あきらかに申告対象のものを申告漏れするなんて信じられませんね。意図的に申告漏れをしたとしか思えませんわ。

いやー、ベットに潜り込んで出てこれない方が、いざ「帰国容認」となると、次の日には成田空港でマスコミの真っ只中を帰れるんですねwww
ぜひぜひ、精神病についても擁護してやってください。
Posted by kei at 2007年08月29日 22:02
悪魔くん様
まず最初に、私が「断罪」を出来る立場のものではないことをご理解ください。

処分内容に関しては「妥当」と感じています。
理由は、個人の想いとして「横綱にはそれ相応の品格を求めるべきである」と考えているからです。
品格が必要か必要ではないか、に関しては内規に「大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績を上げた力士」というものがありますので、個人的な勝手な考えだとご理解いただいて問題ありません。

どの部分に品格が足りないのか、に関しましては、
・現時点で朝青龍本人の記者会見が行われていない。親方から連絡があり、4日後に帰国している。現在の精神病状態が、親方からの連絡後すぐにその状態になったとは考えにくい。その為、品格のある行動とは思えない。
・「巡業」あくまでも「業務」にはいる事柄であり、怪我をし治療をするために休むのならば理解できるが、サッカーを行なえるのであれば、土俵に入らずとも巡業には参加するべきであると考える。
・そもそも母国への帰国は親方へ伝えていない。社会人であれば、病気怪我で会社を休む場合でも国外に出るのであれば上長に連絡をいれる事が普通と思います。横綱がそれを怠るのは信じられません。

また、初期の医師が「本田昌毅氏」であること。業務内容からみても、今回の朝青龍の状態を診断する医師としては、納得のできる医師、診断内容を信じれる医師ではなかった。その為、「診断書を何かしら偽装でもしたかったのか?」と疑わざる得ない。(「3、4日もすればうつを発症する」なんて言葉には失笑しました)

もちろん、品格のある力士になるよう親方・協会が教育するべきであるが、だからといって朝青龍がまったく悪くないわけではない。自分自身で横綱になった時点で勉強を行うべきであった。それを怠っている事は今回の件で明白である。

ですので、協会の処分は“妥当”と考えます。
また、横綱は番付が下がることがありませんので、「引退」をしてもらいたいとも考えています。横綱になってから「品格」が備わっても良いと思っていますが、2003年3月に横綱になり、数年の歳月があったので「品格」を養うには十分あったはずである。ですので、「品格」を養うつもりがないと思われるので、横綱であって欲しくはありません。
Posted by kei at 2007年08月29日 22:52
keiの言い分だと日本の医者はみな
無能というわけですかね。
これはまた大変なことが浮き彫りになりましたね。
相撲よりこっちのほうが問題かもね。

Posted by FX at 2007年08月30日 06:30
keiさんの言い分だと日本の医者はみな
無能というわけですかね。
これはまた大変なことが浮き彫りになりましたね。
相撲よりこっちのほうが問題かもね。

Posted by FX at 2007年08月30日 06:30
はあ、申告漏れですか。じゃあこの辺りもあげつらってもらわないとね。
いやあ、相撲界悪者だらけだ。

1995年6月 元横綱千代の富士の九重親方が約1億3000万円の申告漏れを指摘された
 96・7 二子山親方と横綱貴乃花、大関若乃花が計3億円余りの申告漏れを指摘された
 96・11 初代・横綱若乃花の花田勝治氏が3億円を所得申告していなかったとして修正申告
 98・6 日本相撲協会が約3億5000万円の申告漏れを指摘された
 99・4 元大関霧島の陸奥親方が約2億2000万円の申告漏れを指摘された
Posted by 十九世紀梨 at 2007年08月30日 10:00
FX様
どこを縦読みしたのか分かりませんが、日本の医者すべてが無能とは一言も言っておりません。
また本田昌毅氏が無能とも言っていません。「今回の件を診断するのには妥当ではないと思われる」と言っているだけですよ。

十九世紀梨様
本当に相撲界悪者だらけだと思っておりますよ。
年寄株の売買や、後援会からの祝儀など、「伝統」と「文化」という言葉で隠された悪行も見えないところでいろいろあると思いますが。
弟子いじめの問題もありましたし、過去殺人などの疑惑もありますので。
それがなにか?
Posted by kei at 2007年08月30日 10:26
それが何か?といわれたなら、
相撲界の悪者の主役、相撲協会が処分と偽って朝青龍に不当な行為を行った件についてどう思いますか?

それから
今まで、品格のあった横綱なんていません。
誰か例を挙げて下さい。全て彼は品格には問題があると反駁して見せます。(こんな事は誰にも出来ることです。いいがかりをつければ良いわけですから)
刑事事件を在位中に起こした横綱が複数います。
朝青龍は何も犯罪や、反社会的行為などしていません。
にもかかわらず、前例のない異常な厳罰が下されたました。この伏線となる理由も明らかです。
その前に旭天鵬が車を運転してはいけないという規則にふれたため一場所の休場と一ヵ月の謹慎処分を受けた処分とバランスをとったつもりなんでしょう
今回の処分は、朝青龍の過去の不行跡に対する「感情的な面での対応」があった、と処分を発表した伊勢の海は公言しています。しかし処分の理由は「誤解を招く、軽率な行動」あるいは「軽率な行動」としか言及されてません。具体的な内容も示さず過去の不行跡も「併合」しての重罪なら、単に処分に名を借りた犯罪行為です。

これでは、朝青龍ならずとも、「何でこんな厳罰をうけるのか?」と思うのは当然です。日本人なら以心伝心、要するにムードでしょう。そういう言葉で表せない納得の仕方があるのかも知れません。しかし、本当のところ「良くわからないけれど、謝った方が」という判断基準で行動するのでしょう。
朝青龍もそういう対処方法は学習したでしょうが、「どうして、こんな事になるのか」とモンゴル語で考え出したら出口は、ありません。

こんなところで記者会見をするチャンスはありません。
自分で、「どうしてこういう事になるのか?」と高砂親方に何度も尋ねたそうですが、結局わからなかったのでしょう。
また、こんなときに記者会見を要求するのは人権侵害もいいとこです。
Posted by かっちゃn at 2007年09月06日 22:23
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