2021年01月13日

オンラインで思い知れ、KYの痛みを

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日もシェルドン・クーパーに子守唄をせがまれて困っていますか?

さて、今日の記事は過激なタイトルになってしまいまして、申し訳ありません。しかしこれはとても大事なことなので、やはりタイトルはこのままで行くことにしました。この記事で僕が言いたいことはたった一つです。KYではない定型的な発達を遂げてきたコミュニケーション能力の高い皆さんにとって、「オンライン化で空気が読めない」ということはKYと呼ばれている空気が読めない人達の気持ちを知るのにとても素晴らしい機会だということです。

KYというのは色々な定義がありますが、僕は基本的にASDとか発達障害などで相手の微妙な表情やしぐさや声のトーンなどの非言語的コミュニケーションからその裏にある気持ちなどを想像する能力に恵まれていない人たちのことだと思っています。

僕自身もあえて空気を読まない時もありますが、実際にKY的な部分もあるとは思っています。しかし、僕よりもっとKYな人が身近にいたりもします。こちらが忙しいのに好きな趣味の話を延々とされて、こちらがなんとなく忙しそうな気配を示しても全くそういうことは伝わらないので、言葉で明示的に、「ごめん。今忙しい」と言わなければなりません。こういうことを言うのもあまり僕は好きではありませんし、言われた方ももちろん嬉しくはないでしょう。

そして彼らは日常的にそういう世界を生きています。彼らにすれば、言わなければいけないことは、表情や声のトーンなどではなく、明示的に言葉ではっきりと伝えなければいけないのです。そういうコミュニケーションをせずに、テレパシーなんかあるはずないのに、テレパシーで伝えようとしてくる人達ばかりの世界で暮らしているのです。

しかし、これは例えば「日本語が上手ではない人に対して『やさしい日本語』で対応しなければいけない」というほど、僕達の社会の中できちんと認識されているとはとても思えません。「KYがひとりいるせいで、みんなが迷惑している」という声はよく聞きますが、KYの人本人にしてみれば、みんなの中の1人ではなく、世界中の人間がほぼ全てそのような自然な意思疎通の難しい人間なのです。

KYではない人にとって、彼らの立場を体験してみることは、これまで非常に難しいことでした。なぜなら、普段のコミュニケーションの中から微妙なボディーランゲージやタイミングなどが奪われることはほとんどなかったからです。しかし、オンラインでのコミュニケーションが普及するにつれて、イライラした感じで指先がテーブルを叩いているところとか、他の人が話し始めた瞬間に、それに被せるように話し始める意味などが相手に伝わらなくなったり、あるいはタイミングが全く違う意味で現れる事になったりすることが日常的になりました。

これは、それまで問題なくコミュニケーションできていた、定型的な発達の人がいきなり発達障害と同じようなKYになってしまったという捉え方をすることもできるでしょう。

そしてこれは二つの意味でとても良いことだと僕は思っています。

一つは上にも書いたように定型発達の人がKYの人の気持ちを理解できるようになるということです。特に彼らがどのように生きづらい世界を生きているのかを身をもって体験することができることは、今後KYの人に対する対応を変えるのに大きな効果があるのではないかと思います。

そして、もう一つは定型発達の人も、微妙な表情や声のトーンやボディーランゲージのような明示的ではないコミュニケーションを使わずに、明示的に言葉で明瞭にコミュニケーションをすることができるようになるのではないかということです。これはもちろん異文化の人とコミュニケーションをしたり、あるいはここで今日僕が書いてきたようにKYと呼ばれる発達障害やASDの人達とコミュニケーションをするのにも大きな効果があるでしょう。

そしてそれは間違いなく異文化の人や発達障害の人達にとってとても大きな意味のあることになります。なぜなら今までテレパシーもないのにテレパシーで話しかけようとしてきた人達が、突然言葉を持って明瞭に話しかけてくれるようになるからです。

これまでコミュニケーションが上手と言われていた人達にとっては、今回のコロナ禍によるコミュニケーションのオンライン化がとても負担になることはもちろん理解できますが、そのような負担はこれまで社会の弱者が常に強いられてきたことなのです。

包摂的な社会を作るためには、コミュニケーションが上手だった人達がオンライン化で負担に感じていることは必ずしも悪いことではありません。それは社会が成長するために必要な痛みです。そして、今まで知らなかった弱者の痛みを感じることができるのも、社会の主流を占める人達にとって、大きな学びの機会となることは間違いありません。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: キーボード敵視をやめさせるための一提案
http://mongolia.seesaa.net/article/451305728.html
(発達障害の人が生きやすい社会にするためのアイデアです)

発達障害の人のコミュニケーションの困難とは?職場での対処法を解説 | キズキビジネスカレッジ
https://kizuki.or.jp/kbc-column/dd-communication/

【特集】発達障害アバター大集合(1) 自閉スペクトラム症とバーチャル空間 - 記事 | NHK ハートネット
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/276/

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posted by 村上吉文 at 08:45 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加