2020年11月29日

『超コーチング式英会話上達法』

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

僕は自律学習の時などに個人面談をよくやっていて、これは非常に学習者からの評価も高く効果的だと思っているのですが、あまり個人面談の方法などを体系的に勉強したことがありません。コーチング全般に関しては前から関心を持っていたので、このブログでも関係する書籍を紹介したことがあります。しかしコーチングと語学教育の重なる分野に関しては、吉田由美さんのブログぐらいしか読んだことがありませんでした。

それでたまたま、 Amazon の月替わりセールに出ていたのでダウンロードしてみたのがこれです。まさに読みたかった本でした。

超コーチング式英会話上達法〜「学習が続かない」をついに解決! Kindle Edition
https://amzn.to/2JpBTuS
(定価1650円のところ、11月いっぱいは771円です)
【勉強になったところ】

まずこの本を読んで勉強になったことを書いていきたいと思います。最初はGROWモデルというコーチングに使う枠組みです。
「目標(Goal)、現状(Reality)、選択肢(Options)、行動計画(5W1H)」


目標を設定する時に結果目標と行動目標の二つに分けるというアイデアもとても参考になりました。
「「結果目標」 と「行動目標」 の2つを設定するのがお勧めという話です」


それから ODCAサイクルを語学学習の生活の中に組み込む方法もとても具体的で勉強になりました。長いので特定の箇所は引用しませんが、かなり具体的なアドバイスなどが書いてあります。

さて、この本では特に英語学習者を「山登り型」と「波乗り型」の二つのタイプに分けています。 目標を決めてその目標を達成するために一歩一歩着実に進んでいく人たちが「山登り型」です。その一方で「波乗り型」はあまり先のことを計画せず、目の前のことに熱中して取り組むタイプで、好きなことや夢中になれることを大事にしながら力を伸ばしていく人たちです。

これは僕の冒険家メソッドで提示している「言語オタク型」「アニメ型」「ソーシャル型」とは違う視点で、特に言語オタク型の中には、この本で言う山登り型や波乗り型の人達がいるのではないかと思います。一方で、教科書を全く使わない「アニメ型」や「ソーシャル型」は、この本で言う「波乗り型」に分類されることは明らかです。

僕も個人面談でアドバイスをする時に相手がどういうタイプかを考えて話しますから、この本の著者の考え方にも非常に賛同できます。

【波乗り型の多様性については疑問】

ただ残念なことがひとつだけあります。それはこの著者の考える「波乗り型」の学習方法がとても幅の狭いものだということです。

これは著者自身がこのように言っていることからも理由が想像できます。
「私は、もともと典型的な「山登り型」、明確な目標を立て、そこに向かって逆算して計画を立てて積み上げていくタイプです。」

つまり著者自身が典型的な山登り型なので、楽しみながら語学学習を行う人たちの考え方などが実体験としてないので、あまりよく把握できないのではないかと思います。

それがよく表れているのが以下のような記述です。
「「波乗り型」の組み合わせ例
【1〜3カ月目】「場面別定型フレーズ」を覚える
【1〜3カ月目】「1人練習」を行い、実践のイメージを持つ
【1〜3カ月目】「オンライン英会話」で実践を積む
【2〜3カ月目】「シャドーイング」でリスニング力を磨く
【3カ月目】「英文法が身につく例文」を学び、「単語」の力を磨く」

これは僕の目から見れば立派な「山登り型」です。著者の言うとおり波乗り型を「好きなことや夢中になれることを大事にしながら力を伸ばしていく」とするのなら、 このような学習者は教科書を買って勉強などしません。これだけ複数の教材を購入してやるのでしたら、これは紛れもなく「明確な目標を立て、そこに向かって逆算して計画を立てて積み上げていくタイプ」、つまり「山登り型」です。

それでは「あまり先のことを計画せず、目の前のことに熱中して取り組むタイプで、好きなことや夢中になれることを大事にしながら力を伸ばしていく人たち」、つまり「波乗り型」の学習者にコーチはどのように言えばいいのでしょうか。

このブログでは何度も書いていますが、少なくともアニメなどのコンテンツを通してどんどん第二言語習得していく人たちや、人との交流が好きでチャットなどで交流しながらそこで必要な文法や単語を習得していく人たちもいます。冒険家メソッドでは前者を「アニメ型」、後者を「ソーシャル型」と呼んでいます。これについても参考文献のところに過去の記事をリンクしておきますので、是非ご覧いただければと思います。向後千春さんなどの研究では、僕の言うアニメ型とソーシャル型の他に、「活字メディア型」というタイプも紹介しています。

阿部真由美
向後千春
「英語自律学習者の学習方法に対する「好み」の構造と傾向 および学習行動への影響」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaems/27/1/27_1/_pdf

多分、山登り型の教師の方には自分自身の感覚からは想像しにくいのだろうと思いますが、語学の学習というのはいくらでも楽しいやり方があります。そしてそれは効率も悪くなく、日本語能力試験のN1に合格してしまうような人も少なくないのです。そして山登り型ではない、楽しみながら勉強したい人たちに対して、このような方法もあるというアドバイスができることは、こうした英会話コーチの皆さんにとってもとても重要な知見なのではないかと思っています。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 独習者の3つのタイプ 「アニメ型」
http://mongolia.seesaa.net/article/453831491.html

むらログ: 独習者の3つのタイプ - ソーシャル型
http://mongolia.seesaa.net/article/454076600.html

むらログ: LLNで映画が「初級」教材に!
http://mongolia.seesaa.net/article/477884160.html

むらログ: YouTubeを語学教材にする拡張機能「LLY」
http://mongolia.seesaa.net/article/475952184.html

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2014年以降のこのブログの内容はKindle本にもまとめられています。2020年中にこちらの本をご購入になると、その収益は全額が「海外にルーツを持つ子どもと若者のための日本語教育・学習支援事業」を実施しているNPO法人YSCグローバル・スクールに寄贈されます。ココ出版の『冒険家メソッド』は初版の本体価格の5%が同センターに寄贈されます。
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posted by 村上吉文 at 15:47 | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加