2020年08月10日

「雑談ができる」は細分化しよう

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

さて、「行動中心アプローチで雑談力を向上させるのにはどうすればいいか」という質問をいただきました。長くなりそうですので、こちらに書いてみたいと思います。

まず最初に、「雑談」に限ったことではないのですが、行動中心アプローチでどうすればいいか途方に暮れてしまう場合は、たいてい具体化とか細分化が足りないことが多いです。例えば「よりよく生きることができる」とか、「日本語で仕事をすることができる」とかもそうですね。

行動が具体的ではないと、当然それを目標とした授業をデザインすることはできません。

「よりよく生きることができる」についてはあまりちゃんと考えたことはないのですが、「日本語で仕事をすることができる」については、それぞれの職種によって教えなければならない日本語も全く違うことは、どなたにでも理解できるのではないかと思います。

雑談についても同じです。雑談という行動があまりにも幅広く、曖昧なので、何を教えればいいのか分からないのです。しかし仕事の日本語と同じように、細分化すればごく簡単に教えることができます。

ちなみに、今年の春まで働いていたカナダの行政機関では、昼休みによくみんなでキッチンに集まって、それぞれが弁当などを食べながら、仕事とは全く関係のない雑談に花を咲かせていました。

ちなみに僕自身の英語も仕事の方でそれほど苦労しなくなってからも、雑談もトピックによってはなかなか話についていけず苦労した記憶があります。

その職場の昼休みの雑談のトピックとしては以下のようなものが典型的でした。

・アイスホッケー
・テレビのリアリティショー
・テレビのドラマ
・職場の近くのレストランの評価
・それぞれの家庭で最近起きていること

この中で僕がそれなりに自分の意見などが言えたのは、テレビドラマに関してだけでした。それも当時流行していた「ゲームオブスローンズ」などを視聴し始めた、任期の後半になってからのことです。

それでも、任期の後半は雑談に困ったという印象はあまりないんですよね。というのも、自分の詳しくないトピックの時は、「それっておいしいの?」などと質問すると会話に参加することができたからです。あ、でも人数が多いときは、そのトピックに詳しいスタッフの間で話が盛り上がっていて、話がちんぷんかんぷんということは最後までありました。でも人数が少ない時は、「それっておいしいの?」などという明らかに基本的なことから分かっていないという質問を発すると、そういうトピックが大好きな人達は初歩的なことから喜んで教えてくれるので、こちらが話さなくてもそれほど気まずい雰囲気にはならないんですよね。

ということで、自分の知らないトピックについては、「その分野の基本的な事柄を質問できる」という行動を目標にすれば良いのではないかと思います。実際にカリキュラムに落とし込むには、「ゆっくりとはっきり発音してもらえれば」のような条件を追加してレベルの調整をしたり、「その分野の基本的な事柄」を具体的に挙げていく必要もあります。レストランだったら、場所とか、フレンチや中華と言った種類や、値段や家族向けかなどの雰囲気などがここに含まれるでしょう。

つまり雑談をひとくくりに捉えるのではなく、雑談はこうした多様なタスクの複合体であることをきちんと認識し、雑談を構成する特定のタスクごとに細分化して、練習する必要があります。

テレビドラマや映画の場合は、ちょっと考えるだけでも以下のように細分化することはできるでしょう。

1.その作品について短く説明することができる
2.面白かったかなどの簡単な感想を言うことができる
3.まだ見ていない場合は見てみたいかどうかの意見を言うことができる
4.相手にお勧めするができる

これでもまだ何を教えればいいかよくわからない場合は、例えば一番上の「その作品について短く説明することができる」をさらに細分化するといいでしょう。
1.アクション映画やコメディなどの分野を言うことができる
2.5W1Hの枠組みでストーリーを短く説明できる
3.監督の名前を言うことができる
4.主演俳優の名前を言うことができる
5.公開された時期を言うことができる
6.視聴できる媒体(ネトフリなど)を言うことができる

ただ、コミュニカティブ・アプローチに強く影響を受けている先生がたは、こういう時に「こうした情報の交換ができれば良い」と考える傾向があるようです。しかし雑談の場合は単なる情報交換だけではなく、チームビルディングなどの社会的な意味もありますから、以下のような「共感を示す」タスクも必要になってくるように思います。

1.相手の感情を言語化して共感を示すことができる。「それはくやしいですね」など。
2.相手の好きなものを評価することができる。「ハリソン・フォードが出ているんですね。彼はいい俳優ですよね」など。
3.自分との共通点を上げることができる。「僕も見たことがあります」「彼は日本でも人気があるんですよ」「最近うちの息子がハマってますよ」など。

僕は雑談に特化したコースを開いたことはないので、もしかしたら他にまだ見落としてることもあるかもしれませんが、少なくとも行動中心アプローチの視点から雑談を扱うとすれば、大体このようになるのではないかと思います。時々、タスクシラバスや行動中心アプローチでは雑談が使えないという誤解を見かけますが、「雑談する」というのも行動の一つなのですから、行動中心アプローチで扱えないということは全くありません。その行動の定義が曖昧な時は、細分化すると具体的になりますから、簡単にコースデザインができるようになります。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 多様性に対応しよう! 日本語教師の収入を上げるための一提案 (2,017年)
http://mongolia.seesaa.net/article/449002533.html

むらログ: 行動中心アプローチのオンライン日本語教師研修の資料 (2018)
http://mongolia.seesaa.net/article/458939259.html

むらログ: 行動中心アプローチでは文型が多すぎて大変? (2018)
http://mongolia.seesaa.net/article/457955833.html

むらログ: 行動中心アプローチでA1レベルの退職届の書き方を教える
http://mongolia.seesaa.net/article/470982092.html

むらログ: 行動中心アプローチは攻略本
http://mongolia.seesaa.net/article/470313581.html

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posted by 村上吉文 at 11:46 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加