2020年02月12日

モンゴルに学ぶ学級閉鎖対策

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もフタコブラクダに揺られて灼熱のゴビ砂漠を横断していますか?

さて、新型肺炎による犠牲者の数が残念ながら1000人を突破してしまいました。1日あたりの死者の数も高止まりしていて、まだ収束の気配は見えていません。僕は医療関係者ではないので、日本でどのぐらいの被害が今後出るのかはわかりませんが、少なくとも教育関係者が長期間の学級閉鎖に備えて、児童生徒が通学しなくても勉強を続けられる体制について学んでおく必要があるのはもはや間違いのない段階に来ているのではないかと思います。たとえ今回の新型肺炎が日本で大きな被害をもたらさないとしても、文部科学省が生徒達に一人一台のパソコンを供給しようとしている今、 こうした知識が無駄になることはありえません。

これは本当に偶然なのですが、先週の土曜日に海外日本語教育学会の研究例会で、モンゴルの日本語の先生方からまさにこうしたお話を伺う機会がありましたので、今日は関係する部分だけを抜粋して皆さんにご紹介したいと思います。

実際の発言は録画の1時間56分あたりから見ていただけるとありがたいです。以下のリンクを開くとちょうどそこから再生が開始されます。(最初の僕の質問の部分はスキップしてくださって結構です)
https://youtu.be/tG9Zwj1WOSE?t=6986

まずはウランバートルの「ノムトナラン学校」という中等教育機関のエルデネソブダさんですが、学校閉鎖の対応を以下のように話してくださいました。

1月28日から3月2日まで閉校になった。
第28チャンネルで政府が各科目のテレビ授業を放送している。
しかし、日本語はそのテレビ授業に含まれていない。
だから自分たちの学校で学校でビデオを作っている。
完成したビデオはFacebookメッセンジャーでクラスの担任の先生に出してもらっている。
宿題も同じように出している。宿題の採点もオンラインでやっている。
前から作っていたビデオを再利用しているわけではない。閉校になってから一週間で作って用意した。


学校閉鎖になってからたった一週間でビデオを作る準備ができたのには実は背景があって、その前の学校紹介のところでおっしゃっていたのですが、ノムトナラン学校では生徒の進度に大きな差があって、それを解決するためにそれぞれの生徒の進度に合ったビデオを作って見せていたんですね。 つまり、 危機が訪れる前にきちんと問題に向き合って対応策を高じていたからこそ、学級閉鎖になってもそれに対応する体力があったわけです。

モンゴルに行ったことがない人の中には、遊牧民や朝青龍ぐらいのイメージしかないかもしれませんが、少なくても教育機関の ICT 化に関しては、日本より進んでいるかもしれません。日本語教育に関しても、2013年には行動中心アプローチの教科書の開発が始まっていますし、進取の気性は少なくとも教育界に限ればずっと日本より豊かなのではないかと思っています。

次にモンゴル国立大で教えていらっしゃるをオノンさんのお話の抜粋です。
国立大学でも閉校になっている。
講義の授業はZoomで配信している。
他の演習の授業は大学で開発した「シシ」というLMSで課題を出したりしている。


科学技術大学の牧久美子さんは以下のように話してくださいました。
科学技術大学ではFacebookグループでやりとりをしている。
文法の導入などは私たちがビデオを作って流している。
宿題の添削などはしていない。
教師の側からビデオで課題を与えて学生は自分でやってもらうという状態。
質問があったらそれに答えたりはしている。
ただ作文の授業だけは中止になってしまった。


最後に国際交流基金の専門家としてモンゴル日本センターに派遣されている三本さんの発言もご紹介したいと思います。
そうですね。やっぱりこの決定になった時に「どういう風な教育を行えるか」という話になると、どうしてもオンラインという話しかなかったんですね。それで「じゃあ、どのようなリソースがあって、どういう風に使っているか」と教師の間で情報交換がけっこうされるようになりました。「やってみて、こうだった」とか「これは使いやすい」とか「それはちょっといまいちだった」っていうことが経験則として先生方に溜まってくのが、この1ヶ月だったと思います。日本語学校とかでもオンラインのコースを立ち上げた学校もありますし、そういった学校がうまく行くのか、行かなかったのか、行かなかった場合は「どうしたらいいのか」と次につながる行動や活動が盛んになっているという面では、ある意味でこういう難局にあってもいい循環が起きるんではないかと思います。そう前向きにとらえて先生方は毎日頑張っているかと思いますし、逆にこの時期に何もしないでいると、ちょっと取り残されるっていうことも出てくるんじゃないのかなっていう風にも感じています。


こういったモンゴルの非常事態への対応について、海外日本語教育研究学会のライブ配信を視聴した人たちからは以下のようなコメントが多く寄せられました。 中には「涙が止まらなかった」というような感想もあり、配信に関わった人間の一人として非常に嬉しく思っております。










教育とは関係がありませんが、日本はモンゴルの危機管理能力にも多くを学ばなければいけないと思っています。全国で公立の学校を閉鎖してオンライン化するという劇的な体制を整えているモンゴルが、実は国内では感染者がまだ一人も出していないということが、これらのインタビューを聞いていて想像できるでしょうか。日本はもう100人を超える感染者が出ていて、中国に次いで世界で第2位です。 それでいて、新型肺炎を防ぐための学級閉鎖をまともに考えている人はほとんどいません。変化できない日本、危機の最中であっても動けない日本に対して、焦燥を禁じえません。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 感染爆発による学級閉鎖にそなえよう
http://mongolia.seesaa.net/article/473309748.html

むらログ: 教員のためのSlack超入門【学級閉鎖対策】
http://mongolia.seesaa.net/article/473491767.html

むらログ: 学級閉鎖対策としての初心者のためのZoom入門
http://mongolia.seesaa.net/article/473333238.html

むらログ: オンラインで作文の添削をしましょう【学級閉鎖対策】
http://mongolia.seesaa.net/article/473350406.html

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posted by 村上吉文 at 12:06 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加