2019年12月12日

アナログな一斉授業を前提にした資格化に反対します。(パブコメ)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

また空港で時間ができたのでこれを書いています。
現在、と言っても明日までですが、日本語教師の資格についてパブリックコメントが求められています。
こちら。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/ikenboshu/nihongoiken_hanteihoukoku/index.html

先日1つ出したのですが、やっぱり、ちょっとこれはありえないと思ったので、また書いてみたいと思います。

この資格化は今後の日本語教育の枠組みをかなり固定化するものと想定しています。そのためには「過去どうであったか」と言うことを考えるのではなく、「これからどうなるのか」ということを考えなければなりません。「今」を基準に考えても、それに基づいて日本語教師養成講座がデザインされ、それが実際に開講され、受講生が卒業し、試験に合格した若い日本語教師の皆さんが現場に立つのはさらに数年後になります。それを考えると、現状に合わせるだけでも、すでに時代遅れなのです。ですから過去日本語教育がどうであったかということに関してはむしろ忘れた方が良いのではないかと思います。

特に僕が懸念しているのは、「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」を見る限り、アナログな一斉授業を念頭に資格化が検討されているように思われる点です。

たとえば「教壇実習」という言葉が「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」に出てきますが、日本語教師は、教壇で教えない人もたくさんいます。「双方向通信可能なメディア等を利用した遠隔による教育実習については,採用しないこととする。」「クラス型式の授業を経験することを要件とし,5名以上に対する指導を標準とする」という文言もあります。

ありえない。

昨年2月の時点で、日本語教師の3分の1は個人でも教えていて、学校でしか教えていないのは3分の2に過ぎません。オンラインスクールがこれだけ普及しているので、個人で教えている先生の割合は今ではもっと増えていることでしょう。
(この数字に関する参考資料はこちら。 http://mongolia.seesaa.net/article/458407580.html

この辺の現実が資格化を考えている人たちには見えていないのではないかと懸念しています。

かつては一斉授業が最も効率的な教え方でしたが、これには多くのドロップアウトや浮きこぼれを生み出してしまうという問題もありますし、時間の使い方としてはあまりにも非効率です。

以前はこれ以上に効率的な方法が取れなかったので、昔は一斉授業が中心だったのは全く自然なことだったとは思うのですが、現時点でもう既に廉価になったICTを使って個別学習をするスタイルは普及していますし、また、限られた予算で高い成果を上げるには、そのような効率が求められることも言うまでもありません。そのためには、今のような生産性の低い一斉授業を前提にしたように見える資格化には非常に大きな問題があると考えています。

1度でもいいので、自分のペースで勉強できることを体験してしまった人間が、再び一斉授業の教室に帰ると、そのあまりにも低い生産性に驚いてしまうでしょう。何もしていない時間があまりにも長すぎるのです。


実際にアメリカでもカナダでもオーストラリアでも、同じ内容を勉強するのなら学校に行かない方が成績が伸びるという研究結果があります。

アメリカ
むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠 http://mongolia.seesaa.net/article/464194014.html

オーストラリア
むらログ: オーストラリアでもホームスクーリングのほうが学力が高い http://mongolia.seesaa.net/article/469312435.html

カナダ
”Canadian Journal of Behavioral Science”という学術誌に掲載されたChanという研究者のものですが、出張中で今は手元にありません。

今後は学習者の多様化がますます進み、オンラインのリソースもさらに豊かになっていくでしょう。この傾向が今後、反転するとは全く思えません。そのように考えると、ICTを利用しないアナログな教室での一斉授業を前提にした(ように見える)日本語教師の資格化にはとても賛成することができません。過去に追従するのではなく、現時点にふさわしい資格化を考えていただきたいと思っています。それでもその前提のもとに勉強した人たちが活躍するときには時代遅れになっているのですから。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/ikenboshu/nihongoiken_hanteihoukoku/index.html

むらログ: 個人の日本語教師は3万人? http://mongolia.seesaa.net/article/458407580.html

むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠 http://mongolia.seesaa.net/article/464194014.html

むらログ: オーストラリアでもホームスクーリングのほうが学力が高い http://mongolia.seesaa.net/article/469312435.html

むらログ: カナダでもホームスクーリングの方が成績がいい http://mongolia.seesaa.net/article/469502097.html


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posted by 村上吉文 at 09:50 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加