2019年12月09日

チャットを深夜に送るのは非常識?

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も敵陣から放たれた伝書鳩を自慢の弓で射落としていますか?

さて、前回に続いて今回もまた怖い話を聞いてしまったので、それについて書いてみたいと思います。というのも、2019年にもなって、まだ「チャットを深夜に送るのは非常識」などと言っている人がいるというのです。

「非常識なママ友から深夜のLINE……通知で目が覚めることも(2019/10/27 18:00)」
サイゾーウーマン(3ページ目)
https://www.cyzowoman.com/2019/10/post_255303_3.html

【結論:それは間違いです】
はっきり言いますがそれは違います。

確かに、インターネット時代以前には、深夜に電話をかけたり FAX を送ったりするのは非常識なことだと認識されていました。 だって単純にうるさいですよね。寝ているところを叩き起こされて、それが緊急の用件でもなかったら、あまり愉快な経験ではないことは理解できます。

しかしインターネット時代に入って決定的に変わったのは、こうしたコミュニケーションを送り手ではなく受け手がコントロールできるようになったということです。若い人はご存じないかもしれませんが、インターネット時代以前の黒電話や FAX などには、「呼び出し音を鳴らさない」とか「この相手からは通知音を鳴らさない」というような機能はついていなかったのです。 2019年に「深夜にチャットを送るのは非常識」というようなことを主張するのは、そのような時代のしきたりをそのまま引きずっていてアップデートできていないという、かなり悲惨な状況ではないかと思います。

「インターネット元年」と呼ばれた1995年ぐらいから、このような変化は顕著でした。しかし決定的にこれが社会の通念として認知されたのは、2008年のクレイ・シャーキーの講演「情報洪水などない。それはフィルタリングの失敗だ」ではないかと思います。

埋め込み動画が表示されていなかったら、以下のリンクを開いてみてください。
Web 2.0 Expo NY: Clay Shirky (shirky.com) It's Not Information Overload. It's Filter Failure. - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=LabqeJEOQyI

全文の翻訳があればいいのですが、 もし見つからなかったらこちらのリンクで要約を見ることができます。

クレイ・シャーキー曰く「情報洪水などない。それはフィルタリングの失敗だ」
https://blogs.itmedia.co.jp/akihito/2009/08/post-a72f.html   (2009/08/11)

この講演の行われた2008年に比べると、今はさらにきめ細かく受け手が情報をコントロールできるようになっています。この講演から10年以上経って、今でも「情報の送り手がコントロールすべき」という前提に立って、「深夜にチャット送るのは非常識」などという人がいるのは、とても残念なことです。 このようなことを言う人の多くは、もしかしたら今は中高年という立場かもしれませんが、このように時代が変わったのは1995年で、今からもう四半世紀も前のことです。今はベテランの人も、その頃はまだ中堅とか若手だったはずで、その当時の時代の社会の変化を知らないだけでなく、それから四半世紀経ってもこうした時代の変化をご存じなく、しかもそのような状況でありながらメディアに記事を書くような立場にあるというのは非常に恐ろしいことです。

【ビジネスチャンスを逃すリスク】
なぜそれが恐ろしいのかと言うと、その一つの根拠が、そのような発言をする人はどんどんビジネスチャンスを逃していると言うことです。例えば以下のコメントを見てください。
スマホのリテラシーが高そう人なら夜中でもコメントします。
低そうな人は何かと面倒なので欲しいものでも見送ることが多いです。
2017/07/11 00:48
「深夜のコメントは非常識?」 - メルカリボックス 疑問・質問みんなで解決! https://www.mercari.com/jp/box/q43e985681a8eb31a/ 


これはメルカリの関係者の相談用の掲示板にあった書き込みですが、情報のコントロールができない人は、相手に対してそのコントロールを要求することになるので、簡単に言ってしまうとここに書いてあるように「面倒な相手」になってしまうのです。

日本語教育の現場は昔から労働力の流動性が高かったので、職場は色々と選ぶことができましたが、今はほぼ全ての業種でそのような状況になっています。メディアリテラシーが高く、情報の受け取り方をコントロールできて、相手にそれを要求することがないような現場と、いちいち面倒な上司の考え方によってチャット送る時間すら考えなければいけない現場があったら、良い人材を集めることができるのはどちらでしょうか。

【コントロール方法】
では情報の受け手として、僕たちはどのようにコントロールすればいいのでしょうか。
一番簡単なのは、 受信したくない時には、携帯をマナーモードにしたり、 フライトモードにしたり、あるいは電源を切ってしまうことです。誰でもできますよね。

しかし中には、病気の家族がいたり、緊急の連絡を待たなければいけない状況の人もいるでしょう。そのような場合には携帯を丸ごとマナーモードにしたりできません。だからといって、相手に「こちらは病人がいるんだからチャットを送るな」などと要求するのではなく、緊急の連絡が必要な相手を残して 、通知音を切るような設定をすればいいのです。

例えば日本で最も普及していると思われるLINEでも、グループチャットごとに、あるいは相手ごとに通知をオンにしたりオフにしたりすることができます。ビジネスで使われるSlackなどのチャットではもっと細かく、例えば毎日特定の時間になったら自動的に通知をオフにするような設定することもできます。

【変化の背景】
このような変化には主に二つの背景があります。

一つの変化は多様化です。

技術が発展する以前は、日が昇ったら起きて、日が沈んだら寝るという生活パターンを村人たちはみんな同じように過ごしていたことでしょう。工業が発展して、工場などで働くようになっても、基本的にこうした生活パターンは変わらず、日本は紅白歌合戦の視聴率が8割を超えるような、非常に均質的で、多様性の低い共同体でした。テレビでさえ深夜は放送されていなかったのです。

しかし日本の産業構造が第二次産業から第三次産業中心へと移行してくると、24時間営業のコンビニなどは珍しくなくなりましたし、その時間に起きている人たちのためにテレビの放送も24時間になりました。インターネット時代にはもちろん深夜でも情報が飛び交っています。

つまり、「夜は寝るものだ」という認識自体がすでに常識ではないのです。

もう一つの変化はグローバリゼーションです。

今は多くの仕事で、世界中の様々な地域に住んでいる人がオンラインで協力し合うようになっています。今僕がこの記事を書いているのは日曜日の朝8時ですが、日本ではちょうど日付が変わる頃ですし、中央ヨーロッパ時刻は午後4時です。このような状況で「深夜にチャットを送るな」などと言ったら、チャットを送ってもいい時刻など存在しません。

例えば、このブログの読者の多くは日本語教育関係だと思いますが、オンラインで教えている人も今では全く珍しくありませんよね。そのような場合は顧客や学習者が日本の国内にしかいないなどということはほとんどないでしょう。

仕事関係以外でも考えてみてください。日本語教師にとっては、世界各国に知り合いや友達が同業者がいますよね。もし、深夜にチャットを送るのが非常識なのでしたら、相手の住んでいる地域の時刻をいちいち確認してからチャットするのでしょうか?  相手の起きる時刻が、こちらの深夜だったらどうするのでしょう。

【自分の評価が下がってしまうリスクを考慮しよう】
情報の伝達には「プル型」と「プッシュ型」という2種類があります。
「プル型」というのは、要するに引っ張るという意味ですから、受け取る側がその情報に対して働きかけるわけです。その一方で 、「プッシュ型」は情報を発信する側が働きかけます。積極的に検索したりするのがプル型で、特に目的もなくテレビをだらだら見ていたりするのがプッシュ型ですね。

残念なことに2019年のように高度に情報化された時代において、自分で積極的に情報を取りに行かず、送り手側から押し出されてくる情報を受動的に受け取っているだけでは、簡単に相手にコントロールされてしまったり、 情報の審議を見極めることができない状況になってしまいます。要するにネットリテラシーが低いということですね。

そして、「深夜にチャットを送るのは非常識」というような発言は、まさにこのプル型ではなくプッシュ型の情報にしか慣れていないという状況を端的に表しています。つまり、「自分はネットリテラシーが低いです」と言っていることに他なりません。このような発言は、ご自身の評価を下げる結果にしかなりませんから、少なくとも職場でリーダーシップをとるような立場の人が口にしてしまうと、致命的です。

実際に、友達や同僚の行動をコントロールしようとするよりも、自分の携帯をコントロールする方がはるかに簡単です。普段から僕のブログをご覧になっている皆さんにはそのような方はいらっしゃらないだろうと思いますが、もしたまたまこの記事にたどり着いた方が、この記事をきっかけにして、自分の受け取る情報をコントロールできるようになってくれたら幸いです。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
非常識なママ友から深夜のLINE……通知で目が覚めることも(2019/10/27 18:00)|サイゾーウーマン(3ページ目) https://www.cyzowoman.com/2019/10/post_255303_3.html

Web 2.0 Expo NY: Clay Shirky (shirky.com) It's Not Information Overload. It's Filter Failure. - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=LabqeJEOQyI

クレイ・シャーキー曰く「情報洪水などない。それはフィルタリングの失敗だ」
https://blogs.itmedia.co.jp/akihito/2009/08/post-a72f.html (2009/08/11)

深夜のコメントは非常識? - メルカリボックス 疑問・質問みんなで解決!
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posted by 村上吉文 at 02:16 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加