2019年09月02日

カナダでもホームスクーリングの方が成績がいい

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も惑星カミーノに潜入して大量生産される全員同じ顔のクローン兵を目撃していますか?

実はこれはオリジナルの論文が確認できていないのでブログには掲載していなかったのですが、 子供達の自殺のピークの時期なので、載せておきます。タイトルの通りカナダでもホームスクーリングの方が成績がいいという記事です。

元の記事は今年の5月にAMPという媒体に細谷元さんという方が書いた「米国では200万人以上の子供が「ホームスクーリング」、教育に求められる変革と多様化」という記事です。その中に以下のような記述があります。

学術誌Canadian Journal of Behavioral Scienceに寄稿された論文によると、カナダの学校に通う子供とホームスクーリングの子供のテストの点数を比較したところ、ホームスクーリングの子供の方が点数が高いという結果になった。


ここに書いてある「Canadian Journal of Behavioral Science」を Google で検索してみると、引用されている論文などは見つかるのですが、公式サイトが出てきません。 Wikipediaには「http://www.cpa.ca/membership/membershipbenefitsandservices/cpajournals/CJBS」が公式サイトとして記載されているのですが、僕の環境からはこのページを開くことができず、もしかしたらここで検索したら元の論文などが見つかる可能性もあるのですが、今のところ確認できていません。

さて、実はこの記事には、上で引用した部分の次にこのような一文があります。
調査対象となったホームスクーリングの内容は、「ストラクチャード」と呼ばれ、よく練られたカリキュラムで学習が行われていたという。カリキュラムがストラクチャードでない場合、ホームスクーリングの子供たちの点数は平均を下回った。

カナダだけに限定されないと思うのですが、ホームスクーリングにはカリキュラムに従って学校のスピードと同じように勉強するタイプと、関心に従って自分の好きなコンテンツをどんどん勉強していくタイプがあります。 カリキュラムは親が独自に考えることもありますが、学校のカリキュラムをそのまま使うことも多いです。その方が楽といえば楽ですし、認定試験の基準も学校のカリキュラムにそっているからです。

ご紹介した記事では、カリキュラムに従っていないこうした子どもたちの成績が平均より悪かったということですが、それは決して悪いことではないと僕は思っています。というのも、こうした研究で行われる評価は、大体は学校のカリキュラムを前提にしているからです。例えば小学校の最高学年の成績を見る場合は、その学年のレベルのテストが利用される事が多いでしょう。

カリキュラムに従っていない場合は、やはり凹凸があります。一つの科目では同学年の子供が勉強していることをホームスクーリングでは勉強していないということもあるでしょう。ですから、その学年の基準で試験をしたら、カリキュラムに従っていない子供の方が成績が悪くなってしまうことがあるのは当然です。

しかしその一方で、小学校卒業時に、 たとえば中学校卒業レベルの試験をしてみたら、学校で勉強する子供よりもカリキュラムに従っていない子供の方が成績は高くなるのではないかと思います。なぜなら、同一カリキュラムで勉強する場合は中学校卒業レベルの内容を知っている小学生はほとんどいないと思われる一方で、カリキュラムに従っていないホームスクーリングではそういうことは全く珍しくないからです。

つまり、今回ご紹介した「カリキュラムがストラクチャードでない場合、ホームスクーリングの子供たちの点数は平均を下回った」という統計は、凹凸のあるホームスクーリングの子供達の能力のうち、「凹」の部分でマイナス評価している一方で、「凸」の部分をプラスに評価していないのではないでしょうか。 一般的な評価の基準はそういうものですから。

しかし、それって問題でしょうか。大人になるまでに一定の能力を身につける必要はあると思いますが、その順番は多様であっていいはずです。というよりも、子どもの発達段階は非常に多様なので、平均的なごく一部の子どもを除き、学ぶ順番やスピードをこのように一律に決めてしまうと、必ず無理が出てきます。それがドロップアウトとか浮きこぼれとか不登校などの問題になって顕在化してきているわけですね。(不登校に関してはもちろん他にも原因はありますが)

この問題に関してケン・ロビンソン卿は以下のようにTEDで話しています。

So I think we have to change metaphors. We have to go from what is essentially an industrial model of education, a manufacturing model, which is based on linearity and conformity and batching people. We have to move to a model that is based more on principles of agriculture. We have to recognize that human flourishing is not a mechanical process; it's an organic process. And you cannot predict the outcome of human development. All you can do, like a farmer, is create the conditions under which they will begin to flourish.
ですから 教育のモデルを変える必要があります 教育を 工業的 製造業的モデルから 脱却させる必要があります このモデルは 直線的 画一的であり 人を一緒くたに扱います このモデルを 農業的原理に基づくモデルに変えねばなりません 人がその才能を花開かせるのは 機械的で自動的なプロセスではなく 「有機的」なプロセスだと捉える必要があります 人の成長の結果を予言することなどできません できることは 農夫のように 花開く条件を 整えることだけですhttps://www.ted.com/talks/sir_ken_robinson_bring_on_the_revolution/transcript#t-862506


工場で自動車などを大量生産する場合は、部品や材質などを最初からコントロールできるからいいのですが、人間の遺伝子は多様ですし、それぞれの家庭環境も多様です。このような違いがある状況では、やはり「同じ内容を同じスピードで勉強する」という工場での大量生産モデルを教育に応用するのは無理です。

また、女工哀史のように誰もが同じ作業をしていた時代には、人材の多様性よりも互換性が重要視されていたので、少なくとも教育目標が「標準的な人材を大量に育成すること」でもよかったのだろうとは思いますが、現代ではそのような人材は機械に置き換えられるだけですし、社会ももっと多様な才能を必要としています。

ですので、「児童/生徒は多様である」という前提からも、「多様な人材が必要である」という社会からの要請からも、伝統的な教育現場で採用されている一成授業のモデルはもはや卒業するべき段階なのではないかと思います。

もちろん、今回は引用している方の背景がよく分からない上に、オリジナルの論文を読めていないので、どのように成績を比較しているのかは分からないのですが、少なくともこの記事を見て「やはりカリキュラムに従わなければいけないのではないか」とホームスクーリングのご家庭の皆様が心配することはないとお伝えしたいと思いますし、 むしろ子供の発達のあり方が多様であることを考えると、無理にカリキュラムに従わせることが却って子供の成長にダメージを与えてしまうリスクも考えておかなければならないのではないかと思います。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
米国では200万人以上の子供が「ホームスクーリング」、教育に求められる変革と多様化
https://amp.review/2019/05/22/homeschooling/

むらログ: オーストラリアでもホームスクーリングのほうが学力が高い
http://mongolia.seesaa.net/article/469312435.html

むらログ: 学校に行かないとなぜ学力が上がるのか
http://mongolia.seesaa.net/article/469265567.html

むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠
http://mongolia.seesaa.net/article/464194014.html


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posted by 村上吉文 at 01:41 | ホームスクーリング | このエントリーをはてなブックマークに追加