2019年08月04日

没入感(VRで教育効果が高まる理由1)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も異世界でスライムに転生していますか?

【なぜ VR には教育効果があるのか】
さて、 VR には教育効果があるという実証的な研究をいくつもご紹介してきましたが、これらは結果だけであって、その理由についてはまだあまり詳しい研究はされてないように思います。

ですのでこれはあくまでも僕の個人的な考えなのですが、なぜVRには教育効果があるのかというと、一番大きいのはやはりその没入感ではないかと思っています。たいへん残念なことにこの没入感は文章や二次元の動画ではお伝えすることができません。実際に VR のゴーグルをつけてみないと、僕自身も理解できませんでしたし、多分ほとんどの人がそうだと思います。あえて文字にしてみると「自分のいる世界とは違う世界に突然入る」ということで、イメージとしてはテレポーテーションとかタイムスリップに近いものがあります。 大事なことなので何度も繰り返しますが、これは大画面スクリーンに動画などを表示するのとは全く違う体験です。

その例の一つとして、Zoomで話している時との違いをご紹介したいと思います。Zoomで話していても相手は画面の向こうにいる感じですが、VR空間では同じ部屋にいるという認識になるんですよね。この感覚を最初にインドの蟻末淳さんから聞いた時は半信半疑だったのですが、僕も「Rec Room」などのVRアプリでその辺を遊び回っている子どもたちと話してみたら、実感しました。 Zoomと違ってアバターを使っているので、その本人らしさという感じはないのですが、その場に一緒にいるという感覚は確かにビデオ会議システムよりはずっと強く感じます。

【VR酔い】
もう一つの根拠として、「VR酔い」というのがあります。 VR の性能が悪い時代には、例えば右を見てもゴーグルの中で表示される映像が右の方に移動するのにわずかな遅れがあって、体の動きと実際に見える世界の間に違いがあることが VR 酔いの原因になっていました。このようなことは二次元のスクリーンで360度の YouTube 動画を表示しながら矢印キーやマウスなどで見る方向を変える時には起きません。

現代の VR 酔いは少し原因が違っていて、移動する時にVR 世界の中では移動をしているのに、実際の体は加速度を感じないような時に起きます。ですので「ビートセイバー」などのようにプレイヤーが一つの場所に立っていて、走ったり止まったりしない時には現代の VR 酔いはほとんど起きません。 その一方で、強い加速や減速があるはずのレーシングゲームなどではかなり VR 酔いは強くなるようです。僕も含めて一般人の中には、歩く程度の加速や減速でもそれがないと VR 酔いを感じてしまう人もいます。この場合、VR 酔いを感じてしまうのは、ジョイスティックのようなもので前方に押し続けると前に少しずつ移動して右に傾けると右の方に曲がるようなタイプの移動方法です。 これとは別に「テレポーテーション」という、移動先を指定して瞬間的にそこに移動するタイプでは、加速や減速がないので、 VR 酔いを感じることはありません。

そして留意したいのは、「このようなことは、どれほど大画面スクリーンでも、 VR ではない動画やゲームなどを楽しんでいる時には全く起きない」ということです。どれほどそのゲームに熱中してそのスクリーン以外の世界が目に入らなかったとしても、 VR 酔いをしないということは、「実は自分はその世界にいない」ということをちゃんと認識しているということを意味しています。「ハマっている」と言っても実はハマってなんかいないのです。

一方で、 VR の世界では例えば無料の「Red Room」のようにシンプルすぎて現実感のほとんどない世界であっても、移動方法をテレポーテーションに指定しないと、簡単に VR 酔いは起きてしまいます。これは、理性では自分は「Rec Room」 ではなくて 現実に存在する自分の部屋にいるのだということを理解していても、 もっと本能的な部分では、 VR 側の世界に自分がいるのだと認識していることを意味しています。

【人々の反応を見れば没入感が理解できるかも】
さて、さきほど、「没入感は動画ではお見せできない」と書きましたが、初めて体験した人の反応から想像することはできるかもしれません。例えば以下のビデオは「リッチーズプランク」というアプリです。

Richie's Plank Experience Trailer - YouTube
https://www.youtube.com/embed/4M92kfnpg-k


単に高いビルから空中に板が突き出しているだけで、 これが没入型の VR でなければ何の意味もないゲームだと思います。 しかし VRゴーグルをかけてその世界に入ってしまうと、理性ではまったく危険がないとは分かっていても、あまりにもリアルなのでこのような反応になってしまうのです。 もしかしたら「やらせ」じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、このビデオに出ている人たちはむしろ勇気があるほうで、実を言うと僕はこの板の上に足を乗せることができませんでした。いや、足を乗せることぐらいはできたかな? でも板の上に体重を乗せることはできませんでした。そのぐらいリアルなんです。

では、没入感があるとなぜ教育効果があるのかということですが、これはもう「実際に体験して下さい」としか言えないかもしれません。体験してみればすぐにわかります。

例えば「教師のためのVR活用術」という Facebook のグループに、以下のようなワークショップの動画がありました。
https://www.facebook.com/groups/251823582267942/permalink/532266887556942/
(公開グループなので、グループのメンバーではなくても Facebook のアカウントさえあれば見られるのではないかと思います)
コメントにも書きましたが、多分 VR を体験したことはない人には、「何だ、これ?」の世界ですよね。「こんなもん、わざわざゴーグルをかけなくても写真で見せてばいいじゃないか」 と思う人が多いでしょう。しかし全く違うのです。自分がエッフェル塔の前に立っていて、その巨大さなどを実感しながら「tower」という言葉を学ぶのと、教室の中で写真などで同じ言葉を学ぶのでは、そのインパクトの深さなどは全く違うのです。 だからこそ、前回までの記事でご紹介したように、 VR にすると学習効果が高まると言う研究結果が出ているのでしょう。

さて、 VR に学習効果がある理由の一つとして、体の動きと一体化していると言うこともあると思うのですが、今日も長くなってしまったのでここまでにしたいと思います。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 仮想現実が語学教育を変える! (2017)
http://mongolia.seesaa.net/article/452046082.html

むらログ: VRゴーグルの教育的効果
http://mongolia.seesaa.net/article/468489344.html

むらログ: 外国語教育における VR 技術の応用の実践例
http://mongolia.seesaa.net/article/468521705.html

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タグ:VR 仮想現実
posted by 村上吉文 at 22:53 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加