2019年07月31日

引用は泥棒ではない

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も王家の財宝を狙ってピラミッドの地下に潜入していますか?

さて、ここのところ立て続けに「引用」に関する誤解を目にしているので、今日はその件について書いてみたいと思います。 「勝手に引用するのは泥棒だ、金を払え」と主張しているブログもありますし、僕自身も前回の記事で引用したツイートの投稿主から事前に承諾を得なかったことを非難されてしまいました。

まず最初に押さえておかなければいけないことは、「引用」と「転載」は違うということです。 「引用」は無断でできますが、「転載」は事前に著作者の許可が必要です。繰り返しますが「引用」は無断でできますので、当然お金を払う必要もありませんし、事前に相手に知らせる必要もありません。

皆さんも見たことがあると思いますが、多くの本の奥付の部分によくこんなことが書いてありますよね。
「本書の一部あるいは全部について、著作者から文書による承諾を得ずに、いかなる方法においても無断で転載、複写、複製することは法律で固く禁じられています」
ここでは「引用」が含まれていないことにも留意してください。なぜならそれは法律で禁止されていないからです。

そもそも相手の許可がないと引用できないのでしたら、議論というもの自体が成り立ちません。少なくとも正確な議論は成り立たないでしょう。というのも、相手の意見を勝手に解釈してそれに対する批判などを行うことになるからです。 引用であれば、元の著作物を解釈抜きでそのまま読者に紹介することができるので、より正確な議論ができます。

【引用は泥棒?】

先日、フランスの「ライシテ憲章」について読んでいた時に、こんな記事を見つけました。

「フランスにおけるライシテとは何か?学校におけるライシテ(laïcité)憲章」|ジャスミン男|note
https://note.mu/echinodermes/n/nbdb9b511cf07

この記事自体は質が高く、僕自身にとってもとても勉強になりました。著者の方にお礼を申し上げたいと思います。ただ、 最後にこのような部分があったことが非常に残念でした。

引用などの形でご自分が公表される書き物に利用される方のみ有料ですので、下のボタンからお支払いください。黙って使うのは泥棒さんです。


これは世界で一番厳しいと揶揄されている日本の著作権法においても、間違いとしか言えないでしょう。日本の著作権法でも引用は32条で正式に認められています。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。


法律でこのように「公表された著作物は、引用して利用することができる」とされているのですから、引用されたくない場合は、そもそも公表しなければいいのです。著作物を公表するということは、すなわち引用される可能性があるということです。例えば Twitter などであれば、「鍵垢」などと一般に言われていますが、共有範囲を非公開にすればいいでしょう。その場合は本人が許可した相手にしか投稿が表示されないので、プライベートなことも書くこともできますし、技術的にもそのツイートを外部のブログなどに埋め込むことはできません。 (少なくとも現状では埋め込み用のコードを取得することはできません)つまり、著作物を公表している以上は、それが引用されることを受け入れなければなりません。逆に言うと引用される覚悟もなしに、公表された場所に自分の意見などを書いてはいけないのではないかと思います。

さて、それではこの著作権法第32条で書かれている「公正な慣行に合致するもの」とは一体どのようなものなのでしょうか。これについては文化庁が以下のように書いています。

(注5)引用における注意事項
 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
「著作物が自由に使える場合 | 文化庁 」http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html


一点目の「必然性」については主観的な表現ですが、2点目から4点目に関しては、前回の僕の記事でも明確に該当することが分かるのではないかと思います。

【詐欺罪に問われる可能性も】

このような状況がありますので、正当に引用する行為を「泥棒」と呼び、金銭を要求することは、逆に自分が法的なリスクを負うことになります。例えば詐欺の要件を見てみましょう。 弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二さんが監修した記事には詐欺行為の要件について以下のように書かれています。

1.人を欺く行為(欺罔行為)
2.欺く行為によって被害者が騙される(錯誤に陥る、事実と認識が一致しなくなる)
3.財産の引き渡しや処分が行われる、または財産上の利益が加害者へ移転する
4.@ABの間に因果関係がある
上記4つの要件を満たした場合に詐欺罪が成立します。Bに至らない、つまり、実際に加害者へ財産の引き渡しが行われなければ、詐欺未遂罪です。
「詐欺罪とは?|詐欺罪5つの構成要件から時効・罰則・詐欺の種類まで」あなたの弁護士 https://yourbengo.jp/keiji/1039/


つまり、「引用は泥棒だ」という事実でないことを発信して、それを読者に信じさせて、読者が購読料を支払ったとすると、この要件を満たしてしまう可能性があります。もちろん詐欺に該当するには本人が嘘をついていると自覚しているということを検察側が立証しなければいけないので、この辺りは微妙ですし、実際に本人が「引用が正当な権利である」ことを知らないことによるものなのかもしれません。しかし、このような主張することは自分が大きな法的リスクを負うことになるということは承知しておく必要があるのではないかと思います。

ということで、 引用と転載の違いに気をつけた上で、皆さんも是非「引用」はどんどんしていってください。それは法律で認められた正当な権利ですし、正確な擬音を成立させるためにも必要な行為です。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
著作物が自由に使える場合 | 文化庁 http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

「フランスにおけるライシテとは何か?学校におけるライシテ(laïcité)憲章」ジャスミン男(田中 晴子)
https://note.mu/echinodermes/n/nbdb9b511cf07

詐欺罪とは?|詐欺罪5つの構成要件から時効・罰則・詐欺の種類まで|あなたの弁護士
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posted by 村上吉文 at 21:10 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加