2019年06月09日

全く縁がない部活の顧問を任されてしまったら

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


冒険家の皆さん、今日も夫の遺体を荼毘に付す炎の中にドラゴンの卵とともに身を投じていますか。

さて、さきほどTwitterで自分がやったことがないスポーツの顧問を無理矢理担当させられてしまうことになった先生の悲鳴をいくつか見ました。

僕は中学校の時に剣道部だったんですが、実際に剣道を全くやったことがない顧問が担当されたこともあります。そういう事はかなり頻繁にあるようですね。

僕は基本的には部活はなくてもいいのではないかと思っています。中学生の時は、それなりにやりがいも感じていましたし、部活を通した成長ももちろんありました。しかし、それがどれほど多くの教員の犠牲の上に成り立っているのか全くわかっていませんでした。それがわかっていれば、当時でも反対していたのではないかと思います。地元には「剣友会」という小学生に剣道を教える団体がありましたから、おそらく中学校の剣道部を廃止すれば、そちらに中学生の部門ができて、そこで剣道を続けていたのではないかと思います。

しかし、現実として、自分の専門とは全く関係がない部活の顧問にされてしまう先生は多くいらっしゃるようです。立場上、断れない場合もあるでしょう。ただ、その先生方の中の悲痛な声の中に、非常に気になる誤解がいくつかあったのに気が付きました。

それは、自分が指導しなければいけないという誤解です。もちろん、その部活の種目が上手な先生ならそれでもいいと思いますが、全く縁のないスポーツをやらされている場合には、それは正直無理だと思います。また、顧問は部員よりも上手でなければいけないというようなビリーフを持っていらっしゃるように思われる方も多くいらっしゃるようです。

しかし、実はそんなことは全くないのです。今や教師や部活の顧問以外にも情報のリソースはたくさんあります。少なくとも、そのスポーツにこれまで縁がなかった人よりははるかに質の高いものが山ほどあります。

そして、実際にはうまくできないものを、うまくできるように見せかけたり、あるいは自分よりうまくできる生徒とマウントのとりあいをしたりとか、そういう無駄なメンタルなエネルギーを消耗してしまうようなこともなくなります。

やり方は簡単です。要するに、練習の内容や練習の方法を皆で決めればいいのです。

みんなで一緒に練習しなければいけない時間もあれば、それぞれが個別に自分の弱点を補ったり自分の強みをのばしたりする練習も必要でしょう。そしてもちろん、チームスポーツならチームで行う練習も必要でしょう。そうしたことを、先生ではなく部員たちに決めさせるのです。

そうすることの教師にとってのメリットは、部活動の準備にかける時間が少なくなり、本来の自分の専門を生かした質の高い授業が行えるようになることです。これは教師自身だけではなく、その教師が教える生徒達にも大きなメリットをもたらします。

しかしそれだけではありません。これは実は日本の義務教育の先生方のほとんどが認識していらっしゃらないようなのですが、そのように権限を移譲することで、生徒たちの自律性を高めることができます。簡単に言えば、自分で自分の学び方を決めることができる能力を育てることができるのです。

こうして自分の学びをコントロールする能力は、複雑で多様化した現代の社会を生き抜くには、非常に重要なスキルであるにもかかわらず、残念なことに、日本の義務教育の現場ではほとんど教えられていないように認識しています。

実際、Twitterでは、一斉授業の良さを強調する先生が「自律学習」という言葉も知らなかったという事例がありました。自律学習という言葉すらも知らないで、どうして一斉授業がいいと言えるのか僕には全くわからないのですが、少なくとも日本の教員の中にそんな言葉を聞いたことすらない人がいるという事からは、実際にそれが現場で実施される事はほとんどないと言えるのではないかと思います。

いずれにせよ、自分がほとんど知らないスポーツの部活の顧問にさせられてしまった事は、実際に不幸なことであり、可能な限り断った方がいいとは思うのですが、それができない場合は、教員の負担を減らすことが、すなわち学習者の自律性を育てる素晴らしい機会になるということも意識していただきたいです。自分勝手なことではないのです。それは部活動の準備という負担を減らすことによって、教員のみなさんがご自分の専門の授業の質を高めることにつながりますし、同時にその部活動に参加している生徒たちの自律性を育てることができるという、現代の義務教育ではまだかなり少ないメリットを生徒たちに与えることができる類(たぐい)稀なチャンスにもなるのです。

まとめてみると以下のようになります。
部活の顧問の権限を部員たちに移譲することによって
1.教師は負担が減る
2.部員たちは自律性を身につけることができる
3.教師が教室で教える生徒たちは、より質の高い授業をうけることができる
という3つの効果があります。まさに一石三鳥ですね。

こうしたアイデアが日本の息苦しい学校の環境を少しでも改善してくれることを祈っております。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 自律性は育てられる
http://mongolia.seesaa.net/article/459010723.html

むらログ: あなたは日本語の分かるオートマトンを育てあげたいのですか?
http://mongolia.seesaa.net/article/444783872.html

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posted by 村上吉文 at 04:51 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加