2019年04月30日

忙しい人の英語学習にはテレビドラマでCBLLがおすすめ

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も死神に「Not Today!」と言っていますか?

さて、平成最後の日ですね。日本では10連休ということですがこちらは普通のカレンダーです。先週末は、アメリカで人気の「ゲームオブスローンズ」というテレビドラマのシーズン1を見ました。

このドラマは、僕がカナダで何人かの人に「一番有名なテレビドラマって何だと思う?」と聞いた時に、多くの人がおすすめしてくれたものです。ちなみに他には「ビッグバンセオリー」「 ブレイキングバッド」「ウォーキングデッド」などがありました。個人的にはこれらの三つも見ようと思って、「ビッグバンセオリー」と「ブレイキングバッド」はシーズン1の最後まで見たのですが、なんとなくシーズン2も見ようという気にならずに、ここまで来てしまいました。「ウォーキングデッド」は佐藤隼人さんがブログでおすすめしていたのもあって見始めたのですが、やっぱり僕はちょっとゾンビが苦手で、エピソード3ぐらいで降参しました(^^) しかし、 僕は今「ゲームオブスローンズ」のシーズン2が見たくてたまりません。 僕の中で誰かが「ブログなんか書いている場合じゃないだろう」と責め立ててきます(^^)

ちなみに Twitter でいつもの通りアンケートをしてみたところ、これだけ長いシリーズなのに、「一部だけ見た」という人よりも「放送されたのは全部見た」という人のほうがずっと多いということから、この作品の中毒性というのがよくわかります。


https://twitter.com/Midogonpapa/status/1122864578382172161

ジャンルとしては大河ドラマのような重厚な歴史物語的な雰囲気があるのですが、死んだはずの人間がゾンビのように襲ってきたり、シーズン1の最終回にはドラゴンまで出てきて、「これはどういうジャンルなのか」という枠組み自体の認識も揺さぶられます。また、「この人どうせ重要人物だから殺されそうになっても直前で何かが起きて助かるんだよね」と思っていたら本当に殺されてしまったり。そういう意味で先が読めません。

実はシーズン1の全10エピソードのうち、最初の5話ぐらいはあまり僕には面白くなくて、しかも英語も僕が職場で使っているようなものとは全然違っていて字幕を読まないとよく分からないので、ちょっと努力して観なければいけない感じだったのですが、後半はもう引き込まれてしまって一気に見ました。

それで思ったんですが、こうしたコンテンツをベースにした語学学習方法、CBLL(Content-Based Language Learning)は、生活の中における学習の優先順位を上げる力がすごく強いなということです。もうほとんど強制力という感じです。今週は出張もあるので週末と言ってもプレゼンの準備とかが色々あるし、今は単身赴任なので掃除とか買い物とかもしなければいけないのですが、それらのかなりの部分が先送りされてしまいました。

でもこれって、これを単なる娯楽と見れば「しょうもない奴」ですが、これをCBLL、つまり勉強として見れば、買い物も掃除も仕事もしないで勉強しているという、非常に模範的な学習者として見ることもできます。つまり学習の優先順位が他の必要なものよりも高くなっているわけです。

日本語の慣用句で何かに集中している状況を表す表現として「寝食を忘れる」というのがありますが、 忙しい人が勉強の時間を増やそうとすると、どうしても睡眠時間とか食事時間とか、それまでの生活の何かを犠牲にしなければいけませんよね。それは普段なら何らかの痛みを伴うものですが、こうしたCBLLの場合は、そうした痛みが全くないのです。むしろ麻薬のような幸福感すら感じることもあるでしょう。いいのか悪いのか分かりませんが。

ここで考えていただきたいのですが、世の中には例えば英語の語彙を増やす教材として「Duo」とか有名なものがありますよね。しかしどんな優れた教材だとしても、普段でさえ忙しい人が寝食を忘れて「Duo」をできるかと言うと僕にはかなり疑問なのですよね。というのも忙しい人には他にも大切な優先順位の高いことがたくさんあり、そうした邪魔を押しのけて貴重な時間を使うためには相当なエネルギーが必要で、 忙しくて疲れている人にはなかなかそんなことができないのではないかと思うからです。

一方で先ほど申し上げたテレビドラマを使ったCBLLの場合は、それを見るだけではまったくメンタルなエネルギーを使うことはなく、むしろ見ないように我慢するだけで逆にエネルギーを消費してしまうようなことが頻繁に起こるのです。

では実際にこうしたコンテンツを中心にした語学の学習方法は役に立つのでしょうか。これについてはもうすでに何度も書いていますが、海外の日本語学習者の中には、アニメの視聴から始まって、全く勉強した意識がないのにふと気が付くと自分が日本語が話せることに気がついたというような人が何人もいます。僕はこれまでそういう人たちを冒険家インタビューの中から「アニメ型の独習者」として紹介してきました。詳しくは以下の記事をご覧ください。

むらログ: 独習者の3つのタイプ 「アニメ型」
http://mongolia.seesaa.net/article/453831491.html

第二言語習得の理論では、「大量のインプット」が必要になると言われています。多読の世界では「100万語」というのがひとつの目安として言われていますよね。読解と聴解では同列に比べることができないことはまず前提としておかなければいけませんが、 字幕をつければテレビドラマの視聴は読解にもなります。ではその100万語というのは、 テレビドラマで言えばどのくらいなのでしょうか。

今僕の手元にたまたま「Secret of My Success」 という映画のスクリプトがあります。これは僕が30年前にカナダに来た時に見た映画で、 30年前の僕と同じぐらいの年代の若者が田舎から都会に出てきて成長する話だったので、すごく共感を持って見た記憶があります。主演はバックトゥザフューチャーの マイケル J フォックス。この映画のシナリオを Google ドキュメントのワードカウントで数えてみると、一万語より少し多いぐらいです。映画の長さは1時間51分ですから、1時間あたり 5,000語ぐらいと考えていいでしょう。ということは200時間の映画やドラマを見ると、多読で一つの目安とされている100万語に達することができるわけです。

ゲームオブスローンズはただいま放送中のシーズン8が最終となる予定で、シーズン8の全てのエピソードが放送されると、全部で73回のエピソードになります。エピソードは少なくてもシーズン1ではほぼ1時間程でしたので、もしシーズン2以降も1時間でしたら、多読で一つの目安とされている百万語の3割以上をこの一つのテレビドラマだけで稼いでしまうことになるわけです。

テレビドラマをCBLLに使うことの一番のメリットは、やはりこの凄まじいまでに「大量のインプット」が実現できることにあると思います。

しかしもう一つ大事なことがあると僕は思っています。それは効率の良さです。というのも、 例えば映画などを見る場合は、その一つ一つについて「これ面白いかな」「難しすぎないかな」「グロいシーンとかないかな」などと考えなければいけません。そしてそういうことをくよくよ考えているあいだにどんどん貴重な時間が過ぎていってしまいます。でもテレビドラマの場合は、 シリーズで全部つながっているので、自動的に次から次へとコンテンツを楽しむことができます。つまりどれを見るかと迷う時間が全くないのです。これは当たり前のように思えますが、実は僕の知っているだけでもこうしたことでどんどん時間を無駄にしてしまっている例はたくさんあるので、時間を無駄にしないというメリットはもっと強調されてもいいのではないかと思います。

最後にひとつだけ念のために補足しておきますが、僕がお勧めしているのはこうしてテレビドラマを使ったCBLLで第二言語を習得する方法だけであって、特にゲームオブスローンズがおすすめであるというわけではありません。視聴者数などから考えると 実際に大量の人にアピールする作品だと思うのですが、人間の好き嫌いというのは非常に多様で、この作品を使った勉強にどうしても没頭することができない人も多くいるでしょう。それは言葉のレベルが原因であることもあるでしょうし、このドラマの作品性などによる場合もあるでしょう。R15なので中学生には見せられませんし。ですので、一斉授業でクラスに見せるというパターンによりも、CBLLは自律的に学ぶ人に向いているのではないかと思います。自分が何にはまるかというのはその作品に触れてみないと分かりません。そのためにもたくさんの作品に触れて、試行錯誤をして、これだというものがあったらそこをとことんまで突き詰めて骨の髄までしゃぶり尽くしてみてはいかがでしょうか。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 独習者の3つのタイプ 「アニメ型」 http://mongolia.seesaa.net/article/453831491.html

むらログ: CBI(Content-based Instrinction)が今後普及する三つの理由 2010年4月21日
http://mongolia.seesaa.net/article/147211371.html

むらログ: CBIの理論的背景など 2010年4月23日
http://mongolia.seesaa.net/article/147475564.html

むらログ: 『CLIL 新しい発想の授業 −理科や歴史を外国語で教える!?−』  2012年1月14日
http://mongolia.seesaa.net/article/245989582.html

むらログ: CBIの実施方法まとめ 2014年5月30日
http://mongolia.seesaa.net/article/398367340.html

むらログ: CBLLのハック2つ 2018年2月4日
http://mongolia.seesaa.net/article/456661252.html

むらログ: GoogleフォトをAnkiの代わりに!  2018年5月14日
http://mongolia.seesaa.net/article/459377941.html

むらログ: SFが好きな英語学習者におすすめのYouTubeチャンネル「DUST」 2019年2月4日
http://mongolia.seesaa.net/article/463990884.html


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posted by 村上吉文 at 21:17 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加