2019年04月20日

日本でのホームスクーリングの発展の可能性

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


冒険家の皆さん、今日も崖から落ちそうになった相棒を引っ張り上げながら「ファイト」「一発!」と叫んでいますか? 

さて、日本とカナダの事情を比べてみると、たしかに現状ではカナダのホームスクーリングのほうがずっと進んでいますが、日本もかなり発展する余地はあると思うので、今日はその理由について書いてみたいと思います。

【絶対数も密度も日本のほうがはるかに高い】
以前「多様な学びを社会として認めよう」という記事にも書きましたが、日本の不登校の子供の割合と、カナダのホームスクーリングの子供の割合は大体同じぐらいです。(ここはアルバータのホームスクーリングの子供の数を参考にしていますがカナダ全体でもそれほど変わらないものと思っています)

そして日本はカナダより人口が4倍程度多いです。つまり、ホームスクーリングをしている子供の絶対数も、日本の方がずっと多いわけです。

そして何より、カナダの人口密度は1平方キロメートルあたり3.67人で、日本はその100倍近い335人もあるのです。つまり、ひとつの地域でホームスクーリングのイベントを行ったりしたら、その地域内にホームスクーリングをしている子供はカナダの100倍ほどいるのです。

数日前に中央アルバータのブラスバンドのことをご紹介しましたが、このようなグループを組織する時も、日本の方が百倍集めやすいわけですね。

【特定の宗教と結びついていない】
もう一つ、日本の方がホームスクーリングが発展しやすいと思われる理由の一つが、日本のホームスクーリングはあまり特定の宗教と結びついていないということです。

カナダのホームスクーリングの団体の半分程度は宗教系のもので、中にはかなり怪しい事を教えようとしているところもあります。例えばカナダではワクチンの接種率が低いことが問題になっていますが、これも特定の宗教のコミュニティの中で、ワクチンを接種すると自閉症になるというような科学的ではないデマが流布されているからです。

なお、誤解を避けるために書いておきますが、宗教的なバックグラウンドを持っている人たちのプレゼンはそのほとんどがまっとうなものです。前回の記事で、宗教的ではない人に対する恐怖や憎悪を煽るようなプレゼンがあったことをご紹介しましたが、僕の見た範囲ではこれはかなり例外的なものだと思います。

また、宗教的ではない人の中にもワクチンに関するデマを信じている人も多いですし、このデマを流布させた張本人であるAndrew Wakefield(https://en.wikipedia.org/wiki/Andrew_Wakefield) も特に宗教的な主張はあまりしていないように思っています。

ただ、宗教的なホームスクーリングの関係者が自分の子供に進化論などに触れさせたくないと思っている人が多いのも確かで、 それが宗教的なコミュニティの間で、コミュニティの外部の情報を積極的に取り入れたくないと言う姿勢につながり、 それがワクチンの接種率の低さなどに結びついているという面があるのは事実だと思います。そしてそれに対して宗教的ではないメディアなどが批判的に報じたりしていることもあります。僕が先日聞いた Podcast を参考資料のところに上げておきます。

そして日本ではこのような閉鎖的な宗教コミュニティはあまりないので、 ホームスクーリングによってワクチン反対運動のような誤った情報が流布してしまうような懸念を社会が持つことはあまりないのではないかと思います。

【どうすればいいのか】
さて、 ここまで日本のホームスクーリングが発展する可能性として、日本は人口密度がカナダに比べて100倍ぐらいあるのでネットワークが作りやすいということと、閉鎖的な宗教的コミュニティの影響力が強くないために社会に受け入れられやすいという2点をご紹介しました。

では、このメリットを活かして日本のホームスクーリング関係者が自分たちの子供によりよい成長の機会を提供するにはどのようにすれば良いのでしょうか。

まずは情報共有だと思います。
というのも、あらかじめホームスクーリングを目指して準備している場合はともかく、場合によっては学校で何らかの問題があって、急にホームスクーリングを始める場合などもあるのですが、その場合は何から始めていいかわかりません。そもそもホームスクーリングをしていいのかどうかすら分からない人が現状では多いでしょう。そのために、 ホームスクーリングは教育機会確保法の第13条できちんと認められている権利であるということや、どのようなタイプのものがあるのかということや、 同じく13条で 国や地方公共団体にはホームスクーリングを支援することが義務付けられていることなどの情報を速やかに共有できるような大勢が必要ですね。

それからホームスクーリングをしている子供や大人がネットワークを作ること。
僕は以下のグループに入っていますが、 他にもたくさんあります。

ホームスクーラーマップ(@homeschoolermap)さん | Twitter https://twitter.com/homeschoolermap
(LINEグループを管理されています)

多様な学びプロジェクト
https://www.facebook.com/groups/445634465775421/

ただ、やはりこのブログで紹介しているような千人単位の参加者がくるようなホームスクーリングの大会は今のところないように思うので、こうした小さなグループ同士がつながっていくといいかもしれませんね。少なくとも自分の子供が急にホームスクーリングになってから探すのではなく、そうなる前から選択肢の一つとしてホームスクーリングも従来の通学もあるということが日本の国民の共通認識になるぐらいのプレゼンスがあってもいいのではないかと思います。

本来はこうした情報は保護者などが主体的に動くのではなく、学校の方に連絡先があり、ホームカウンセラーなどが 紹介すべきなのではないかと思っています。実際に教育機会確保法の第13条に、 以下のように書いてあります。
第十三条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。

つまり、ホームスクーリングがちゃんとできるように子供と親に情報が提供されなければならないのです。そして、これは国と地方自治体の責任であると明記されているのです。 しかし残念なことに、ホームスクーリングの関係者の多くの証言から考えると、 ホームスクーリングのことを「解決しなければならない問題」のように間違って認識している教員がかなり大量に存在していることがわかります。 しかし実際には上記の法律に「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性」と明記されているのです。

そして最終的には、上記の法律の条文の「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」 という部分を削除する必要があります。言うまでもありませんが、 日本国憲法第26条2項の義務教育というのは子供に通学する義務があるというわけではなく、保護者が普通教育を与える義務があると言っているだけです。そしてその普通教育というのは、このブログでも様々な研究を紹介してきた通り、今では学校に行くよりも家庭で実施した方がはるかに効率よくできるようになっています。休養が必要だからホームスクーリングをするのではなく、その方が憲法の理念どおり、より良い普通教育を与えることができるからホームスクーリングをしているのにすぎません。

以上、 ちょっと長くなってしまいましたが、要するにカナダの方が現状ではずっとホームスクーリングの制度は発展していますが、日本の方がずっと発展する余地はあり、そのためには皆さんが繋がって情報共有をしていく必要があると思うのです。

そして冒険は続く。

【参考資料】
むらログ: 多様な学びを社会として認めよう (2017年9月)http://mongolia.seesaa.net/article/453716706.html

This is why the anti-vaccination movement is wrong - National | Globalnews.ca https://globalnews.ca/news/5127662/this-is-why-anti-vaccination-movement-wrong/
(宗教的なコミュニティの中でのワクチン反対運動を批判的に報じているラジオニュース)

「ホームスクーラーとお出かけ」
https://www.facebook.com/groups/224180561668638/

ホームスクーラーマップ(@homeschoolermap)さん | Twitter https://twitter.com/homeschoolermap

多様な学びプロジェクト https://www.facebook.com/groups/445634465775421/

「むらログ」の「ホームスクーリング」カテゴリー
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posted by 村上吉文 at 13:58 | ホームスクーリング | このエントリーをはてなブックマークに追加