2019年04月17日

アルバータ州のホームスクーリング大会、二日目

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

(この記事は4月12日に書かれたものですが、アルバータ州の選挙期間中に投稿するにふさわしい内容ではないと判断したので、選挙後の本日投稿いたします)

冒険家の皆さん、今日もまた、つまらぬものを斬ってしまっていますか?

今日も昨日に引き続き、ホームスクーリングの大会の二日目についてツイッターに投稿したものからご紹介します。その後で感想なども書きます。



実際には128の業者でした。





















以下に、会場を見て歩きながら感じたことをつらつらと書いてみたいと思います。

【外国語学習の存在感ゼロ】
実は、128の業者や団体のブースのすべてを見たのですが、外国語学習のプレゼンスがほとんどありません。古本市のところでフランス語と英語の対訳になっている絵本を数冊と、ドイツ語らしい本を一冊見て、古典の書店のブースでギリシャ語やラテン語の教科書を見ただけです。ただ、これをどう捉えるべきなのかよく分かりません。ホームスクーラーたちは外国語学習に関心がないのか、それともブルーオーシャンなのか。

日本については「世界の地理」という本に日本の一般的な内容が数ページに渡って書いてあったことと、キリスト教関連の書店で「トーマスコザキ」という長崎の殉教者のようなストーリーを見ただけです。

数学は多種多様な教材が販売されていて、「馬好きのための数学」まであるのに、外国語に対してここまで無関心なのはなぜなのでしょう。

出版社のブースで何度か聞いてみたところ、「マンゴー」という会社が日本語などの外国語の教材を作っているらしく、公立図書館でもインターネットにアクセスできるとのことでした。これはエドモントンに戻ってから調べてみたいです。

これはまだ結論を出すには早いかもしれませんが、 キリスト教系の発表者の中には、宗教的ではない人からの情報に子供たちが触れることに対して、非常に強い警戒感を持っている人もいます。発表者の一人は映画「プライベートライアン」のオープニングに出てくるノルマンディー上陸作戦の部分を上映して、「世俗主義者はこんな風に攻撃してくるんだ」と恐怖や憎悪を煽るようなプレゼンをしていました。 どうも「広い範囲から多様な情報を得てクリティカルに選択する」 という方向ではなく、「宗教的なもの以外の情報は与えたくない」という方向をかなり強く感じました。そういう意味では、ホームスクーリングの中の宗教色の強い人たちのグループでは、あまり日本語を学んでもらうというニーズは期待できないのかもしれません。

しかし、アルバータ州以外では基本的に宗教的なホームスクーリングと、宗教的ではないホームスクーリングの団体の二つがあるので、宗教的ではない方のイベントでは日本語を学んでもらうための機会はあるかもしれません。

【ブラスバンドを聞いて】
実は、大人たちの話はこれまで何度も聞いたことがありましたが、実際にホームスクーリングをしている子どもたちを見たのは、これが初めてでした。会場には子どもたちが何百人もいましたが、彼らがホームスクーラーなのか準備中なのか冷やかしなのかは分かりませんでしたから。

で、この目の前のホームスクーラーたちの演奏を聞いていて、僕の中で確かに何かが変わったように思います。

目の前のホームスクーラーたちはすごく充実しているようで、あまりにも日本の「不登校児」たちと違うのです。日本の不登校児、もしくはホームスクーラーたちは別に犯罪者でもなければ社会不適格者でもありません。むしろ、反社会的な他者の行為によって学校に行けなくなっているケースも多々あるのです。

同じホームスクーラーなのに、なぜカナダではこんなにも生き生きと華やかな舞台で脚光を浴びていて、日本ではそれができないのでしょうか。ホームスクーラーの人数は日本のほうがずっと多いし、逆に土地は日本のほうがずっと小さいので、ネットワークを作ればこうしたローカルな活動はカナダよりずっとやりやすいのではないかと思います。

そうしたことができないのは、やはりホームスクーリングの歴史がまだ短いだけでなく、関係者の偏見などがあるからではないでしょうか。

アルバータ州は人口400万人ほどで、福岡県よりも少ないぐらいです。さらに、このバンドはアルバータの中でもエドモントンやカルガリーなどの大都市のない、「中央アルバータ」の子どもたちなのです。

想像してみてください。福岡県の大都市圏ではない辺鄙なところにホームスクーリングをしている子どもたちのブラスバンドや合唱団があって、学校に行かなくても普通にそうした活動に参加できるところを。

人間が多様で、かつ一斉授業がその多様性を包摂できない以上、学校に馴染めない子どもたちは必ず出てきます。そして、前にも書きましたが、3日に1人のペースで日本では学校を理由にした子どもたちの自殺が続いています。学校以外にも多様な選択肢があることを僕たちが社会に周知し、こうしたホームスクーラーたちのつながりを作ることで、間違いなく僕たちはこうした子どもたちの命を救えるはずです。

会場には、どう見ても就学前の子供たちがたくさんいて、学校以外の場所で育つという選択肢が文化として根付いていることが想像できました。

【政治的に動く必要性】
今回の大会に参加して思ったことの1つは、政治的な運動の大切さです。カナダではホームスクーリングは完全に合法化されていますが、50年前は違法だったそうで先住民の子どもたちが公立学校に強制的に連れてこられて母語を失ってしまったという痛ましい歴史があります。そこからここまでやってきた間にどれほどの努力があったことでしょう。

そして今でもこうした活動は熱心に続けられています。今回も展示場のブースの一つに、 HSLDAという有名な団体が出展していました。これは「Home School Legal Defence Association」の略で、 ホームスクーリングの自由を法的に守ることを主な活動として行なっているとのことです。

またその他の団体も、ホームスクーリングを合法化のために戦ってきた長い歴史があります。

日本で教育機会確保法が2016年に成立したのは大きな進歩だとは思いますが、第十三条のホームスクーリングを認める条文に「休養の必要性を踏まえ」という条件が付いていて、正当な権利のよる選択には見えないという問題があります。教育機会確保法を推進したときに誰がキーパーソンだったのかなどを調べて、そうした重要人物をフォローしていく活動が必要ですね。

明日もこの大会は続くのですが、実は同じレッドディアという小さな町で、明日はアルバータ州の高校生による日本語スピーチコンテストが開かれ、僕はそちらに出席することになっているので、とりあえずこの大会の報告はここまでです。いずれにせよ、一度は「ホームスクーラーのための第二言語の学び方」というような発表をしてみて、ニーズがないのかブルーオーシャンなのかを確かめてみなくてはなりませんね。

そして冒険は続く。

【参考資料】
むらログ: アルバータ州のホームスクーリングの大会 http://mongolia.seesaa.net/article/465100200.html

むらログ: カナダのホームスクーリング大会
http://mongolia.seesaa.net/article/464601528.html

いじめ問題対応まずは「学校に行かない自由」の確認: 植草一秀の『知られざる真実』 http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-80d327.html


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posted by 村上吉文 at 21:14 | ホームスクーリング | このエントリーをはてなブックマークに追加