2019年03月31日

「学び」を取るのか、数字を取るのか

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

さて、先ほど日本語教育革命家の今井新悟さんが書かれた「教育の公平性という欺瞞」というブログ記事を拝見して、ちょっと前に思ったことを書いてみたいと思います。

確かTwitterだと思うのですが、どなたかが「日本語学校は大学受験に合格させることが目的なので、国際交流基金の理念は意味がない」というようなことを書いていたのを見かけたことがあります。まぁ、国際交流基金の事業の対象は海外の日本語教育のみなので仮に国内の日本語学校にとって意味がなくても公式の立場としてはあまり大きな問題はないと思うのですが、それにしても大学受験に合格させることが目的という考え方には、ちょっと驚きました。というのも、国際交流基金のミッションは「日本の友人を増やし、世界との絆を育む」ですし、JF日本語教育スタンダードの理念は「相互理解のための日本語」なので、そういうことが「意味がない」と僕と同じ日本語教育という仕事をしている人が公開された場所で言ってしまうという事実に、ちょっと危機感を覚えたんです。第二言語の教育とか、あるいは第二言語の習得の支援という仕事は、究極的には、世界中のいろいろな文化的背景を持つ人たちが理解しあって共存するにはとても重要なものだと思っています。そこには試験の点数を上げるよりももっと大きな価値があるのではないでしょうか。

もちろん、日本語学校に在籍する学習者の当座の目的が大学入試の合格である事は知っています。しかし、本当にそれだけでいいんでしょうか。「世界との絆」とか「相互理解」とか、そこまで大きい話じゃなくても、大学入試に合格したらすぐに入試以外のいろいろな場面で日本人の学生や先生と日本語でコミニケーションをしなければいけない機会も出てきますよね。それで、こんなアンケートをしてみました。




ご覧の通り、回答者のうち2割弱の人が「入学した後に必要になる日本語を教える必要はない」と考えていることがわかります。こうした考えの人が一定数いるのは、僕も知識としては知っています。しかし、もしかしたらそういう考えの人が僕のような考えの人と一緒に仕事をするのはなかなか大変なことです。冒頭でご紹介した今井さんの記事もまさにそのようなことが書いてあります。

そしてこれは日本語教師に限定したことではないのですが、教育に関わる人間の全てが、いちどは考えなければいけないことだと思います。考えるだけではなくて、自分にとって何が大事なのか、どちらの道に行くのかということを分岐点の前で考えなければいけないと思います。

アメリカの教育界で、海賊のキャラで売っているDavid Burgessというとても有名な教師がいます。彼の教え方はどちらかと言うと教師中心的で、僕は諸手を挙げて賛成と言うわけにはいかないのですが、しかし彼の本の中で以下の一節は今回の件に関しても教育に関わる者全員が深く考えなければいけない点だと思います。

At some point in your career you have to decide if you care more about teaching to tests or teaching kids.
「皆さんはキャリアのどこかのポイントで、テストのために教えるのか子供たちのために教えるのかを決断しなければなりません。」
http://mongolia.seesaa.net/article/443012480.html


ここでこのブログを読んでいる人は、ちょっとだけパソコンやスマホなどのスクリーンから目を離して、空を見上げて考えてみてください。皆さんにとってはどちらが大事でしょうか。

今井さんは、そのブログ記事の中で、画一的で管理主義的なシステムに疑問を抱かないインストラクターに対してこのように言ったそうです。
「今すぐ、授業担当から降りてください。あなたはまだ、教育者になっていません。教育者は学習者の能力を伸ばすこと、それに尽きます。これができない、あるいはしようとしない人は教育者ではありません。」

今井さんの記事は成績至上主義とは関係ないように思うかもしれませんが、やはり画一的で管理主義的なシステムを守ることを、個人の能力を伸ばすことよりも優先しているという点において、同じ病根があるのではないかと思っています。まじめな話、僕はそういう考えの人が何のためにこの一度しかない人生を生きているのかすら想像できません。

そして冒険は続く。

【参考資料】
チェゲバラ的日本語教育革命
20190331 教育の公平性という欺瞞
https://shingo-imai.blogspot.com/2019/03/blog-post.html

むらログ: David Burgess『Teach like a PIRATE.』 http://mongolia.seesaa.net/article/443012480.html

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posted by 村上吉文 at 21:54 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加