2019年03月13日

カナダのホームスクーリング大会

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も空から降ってきた女の子と「バルス!」と叫んでいますか。

さて、2017年の9月に息子が「学校に行かない」と言い始めてからカナダのホームスクーリングの資料を探すようになったのですが、日本との大きな違いの一つに「大会」の存在があります。大会というのはconferenceとかconventionとかいうイベントで、そこにたくさんの人が集まって、いろいろな発表をしたりします。多くの場合、最初に著名人や専門家の基調講演というのが1時間か2時間ぐらいあって、その後に30分ぐらいの小さな発表やワークショップなどがたくさん続くことが多いです。大規模なイベントでは、いくつかの部屋に分かれてそれぞれで30分ごとの活動を行ったりすることもあります。

これはホームスクーリングに限定しなければ日本でも特に珍しい形態のイベントではありません。日本語教育関係者の集まりもありますし、あるいは研究者によるこうした集まりも「学会」などと呼ばれて非常に多くあります。エンジニアなどのこうしたイベントもよく目にすることがあります。

しかしホームスクーリングは日本では2016年まで合法化されていなかったので、このようなイベントを主催する団体も育っていません。母親たちが中心になって作り上げている LINE上のネットワークなどがあって、僕もそこでいろいろ勉強させてもらってはいるのですが、こうした公式の大会を開催するほどの人数の集まりはまだないのかもしれません。

大会などのイベントを行うと、外部からもホームスクーリングのニーズが見えやすくなりますし、業者にとっては大きなビジネスチャンスになります。 ホームスクーリング用の教材などを販売したりすることができるわけですね。実際に、カナダでよく開かれているホームスクーリング用の大会では業者用のブースが大量に並んでいるそうで、先日聞いたポッドキャストでは、「こうした業者用のブースでいかに無駄遣いをしないようにするか」が話題になっていました。

そして実は、これは僕の本業とも関係してくるのですが、ホームスクーリングの大会は僕のように海外で日本語教育の普及に関わっている人間にとっても、大きな機会になるかもしれません。というのも、何度もこのブログで書いていますように(書いていなかったらすみません)、カナダの日本語教育では教育機関での日本語学習者の数は減少傾向にあるのですが、 JLPTの受験者数は右肩あがりに増加していて、教育機関から独習への移行がカナダの日本語教育において進行している可能性を強く示唆しています。

その場合、 教育機関を通した日本語学習者への支援だけでは、実際に支援を必要としている日本語学習者に手が届いていない可能性があります。もちろん「独習者=ホームスクーラー」ではなく、学校に通いながらも日本語のクラスには登録しないで自分で勉強しているような人もいるだろうとは思いますが、今のところホームスクーラーを対象にした日本語の支援というのはそれほど充実しているようには見えません。その一方で、ホームスクーラーは他の学習者と違ってオンラインでのリソースの使い方にはすでに他の分野の学習で習熟しているという利点があります。これもオンラインで国際交流基金などの支援が受けられるという意味で、非常に日本語学習との親和性が高いといえます。

ということで、カナダで開かれている、こうしたホームスクーリングのための大会を Google で検索してみました。僕の想像以上に こうしたイベントは大規模に行われていて、少なくとも年に一度は、プリンスエドワード島を除く全ての州でこうしたイベントが開かれているようです。プリンスエドワード島に関しても僕が検索した限りでは見つからなかったというだけで、僕が思いつかなかったようなキーワードで検索したら出てくる可能性もあります。

僕が見つけたカナダ各地でのホームスクーリングの大会の一覧は最後にご紹介しますが、まずは僕の地元のアルバータ州のホームスクーリングの大会についてご紹介したいと思います。人口の多い州では、キリスト教系のホームスクーリングの大会と、世俗的な(つまり宗教色のない)ホームスクーリングの大会で別々に行われることが多いのですが、アルバータは少なくとも名前から見る限りはそのような区別はないようです。それも理由の一つかもしれませんが、アルバータ州のホームスクーリングの大会は西部地域では最も規模の大きいものだそうです。

大会の公式ページの「アルバータ州ホームスクーリング協会の大会について」という部分には以下のように書いてあります。
アルバータ州ホームスクーリング協会の大会は、カナダ西部では最も大きなホームスクーリングの大会です。 カナダ中の講師と業者が招待されますし、ホームスクーリングに興味のある全ての保護者を歓迎します。私たちは排他的ではありません(村上注:ここの部分はもしかしたら宗教系の人も世俗系の人も参加できるという意味かもしれません)。 私たちの目標はただ単に保護者に対して豊かなバラエティのリソースを提供することです。30年以上にわたってこの営みを続けています。是非ご来場いただき、 レッドディア(アルバータ州の地名)で2019年の4月に行われる年次大会で ホームスクーリングにご参加ください。

日程は4月の11日から13日の三日間にわたって行われます。基調講演も3名の講師が紹介されていて、経歴を見てみると3人ともキリスト教系の仕事をしていらっしゃるようです。ということはこのホームスクーリング大会はキリスト教系の団体が実質的には運営していて、「だけど世俗的な人も排除しません」という意味で、先ほどご紹介した「排他的ではない」という表現が出てきているのかもしれませんね。

教育関係者や研究者たちの大会と違っていて僕がびっくりしたのは、基調講演者の一人は三日間の会期の間に6回もそれぞれ別のトピックでスピーチをするという点です。二人目は5回のスピーチがあります。(ちなみに3人目は未定だそうです。)

そしてこの3人の基調講演者とは別に、「その他の発表者」という人が20名もいて、 その他に「母親用のパネルセッション」に3人のパネリスト、「父親用のパネルセッション」にも3人のパネリストがいます。 そしてそれとは別にもう少しカジュアルなパネルディスカッションらしいのですが、「Skit」というカテゴリーにも5人のパネリストが紹介されています。つまり全部で31名のスピーカーがいるわけですね。これだけ見ても、かなり規模の大きい大会だということが想像できます。

発表者の一覧はこちらでご覧になることができます。
https://www.aheaonline.com/convention-2019/speakers-topics/speakers

繰り返しますがこれは全国大会ではなくて、人口400万人ちょっとのアルバータ州内のホームスクーリング協会のイベントにすぎません。 それでこれだけの規模なのですから、ホームスクーリングがどれだけ社会に根付いているかということがよく分かるのではないかと思います。

ホームスクーリングの大会なので、もちろん子連れで参加することもでき、それはこの公式ウェブサイトの1ページ目にも明記されています。具体的には「0歳から92歳まで」と書いてありますが、93歳の人は参加できないんですかね(^^)

面白いのは、自分たちが使った教材とゲームを売ることができるという点です。業者とは別に、一般のホームスクールの保護者たちがお互いにこうして教材などを売買することができるだけの大きな市場があるということを示しています。そしてこの部分の活動だけを限定して、Used Curriculum Sale (UCS)と言うアクロニムまであるので、関係者の間ではおなじみの活動なのでしょう。

参加費は僕のように会員ではない成人にとっては三日間を通して95ドルで、会員なら65ドルだそうです。 親が二人で一緒に登録すると、 二人目が半額になるぐらいの割引になります。 その他に買い物だけの入場券とか、子供用の入場券なども金額が設定されています。

「ショッピング」というページを見てみると、大きなホールに様々な業者や団体などがブースを出している地図と出展者の一覧を見ることができます。数えてみたら128もありました。これだけ多くの業者や団体などがホームスクーリングの子供や保護者を支援するために存在しているのかと思うと、驚くばかりです。日本の現状を考えるとお寒い限りですが、しかしこれは逆にそこに大きなニーズが存在していて、ホームスクーリングが3年前に合法化されたばかりの日本にはこれからまだまだ伸びる余地のある市場などだと言えるのかもしれません。 教育関係の企業にとってはまさに Blue Ocean の大きなビジネスチャンスが広がっていそうですね。
https://www.aheaonline.com/convention-2019/shopping/list-of-exhibitors

このようにビジネスとして成り立っている背景には、アルバータ州がホームスクーリングの家庭に対して一人当たり年間836ドルの補助金を支出していることもあったりするのですが、この話になるとまた長くなるので今日はこの辺までにしておきます。

それでは最後に、カナダの全国規模のホームスクーリングの大会と、それぞれの州の大会のリストをご紹介したいと思います。

【カナダ全国規模の大会】
The Canadian Online Homeschool Conference : https://canadianhomeschoolconference.com/#

National Home Education Conference
NHEC2019
https://cche.ca/national-home-education-conference/

【ブリティッシュコロンビア州の大会】
Homepage - BC Home Learning Conference : https://bchlc.ca/

BC CHEC (Apr 2019), BC Christian Home Educators Convention And Trade Show, Kelowna Canada - Trade Show : https://10times.com/bc-chec

【アルバータ州の大会】
AHEA Convention 2019 - Transforming Minds : https://www.aheaonline.com/convention-2019

【サスカチェワン州の大会】
SHBE Convention for Home Based Educators / Homeschool Convention : https://www.shbecon.ca/

【マニトバ州の大会】
2019 Conference : https://machs.ca/2019conference

MASH Homeschool Conference – Manitoba Association for Schooling at Home : https://manitobahomeschool.com/mash-homeschool-conference/

【オンタリオ州の大会】
Convention – OCHEC : https://www.ochec.org/convention/

The Ontario Federation of Teaching Parents ≫ You CAN educate your child at home! : https://ontariohomeschool.org/

Conference : https://www.kwchea.ca/conference.html

【ケベック州の大会】
Congres de l'education a domicile - AQED|The homeschooling conference | Association québécoise pour l’éducation à domicile : https://congresaqed.org/en/the-homeschooling-conference/

【ニューファンドランド州の大会】
Newfoundland / Labrador Homeschooling - A2Z Home's Cool | A2Z Homeschooling : https://a2zhomeschooling.com/regional/canada_homeschooling/newfoundland_labrador_homeschooling/

【ニューブランズウィック州の大会】
Conference | : http://henb.ca/events/conference/

【ノバスコシア州の大会】
HEMS 2019 Speakers : https://hems-ns.ca/keynote-speaker/

そして冒険は続く。

【参考資料】
Home Education Funding | Thee :
https://thee.ca/how-it-works/funding/
(一人あたり$836の補助金について書かれています)

むらログ: 多様な学びを社会として認めよう : http://mongolia.seesaa.net/article/453716706.html

むらログ: 『かがみの孤城』にみる日本の教育の多様化の遅れ : http://mongolia.seesaa.net/article/460915106.html

むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠 : http://mongolia.seesaa.net/article/464194014.html

むらログ: カナダのホームスクーリングの映画 「公立学校での冒険」 : http://mongolia.seesaa.net/article/464215295.html



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posted by 村上吉文 at 11:59 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加