2019年03月11日

ICTは教育にとって手段に過ぎない・・・のか?

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もデススターの溝の中をタイファイターに追われながらXウィングで疾走していますか?

さて、よく「ICTは教育の手段に過ぎない」という主張を聞くことがあります。大切なのは何を教えるかであって、どんな手段を使って教えるかではない。だからICTに騒ぎすぎるのはよくない。そんな主張です。ここではわざわざリンクを張ったりはしませんが、数日前に僕がそうした主張に対してコメントをしたのを Twitter で見た人もいるかもしれません。

しかし、本当にICTは教育にとって手段に過ぎないのでしょうか。僕はそれは全く違うと思っています。そしてこういう認識を1部の教育関係者と共有できていないことに、非常に重大な危機感を持っています。

僕のイメージでは、教育にとってICTはブルドーザーのようなものです。教室の壁もロッカーも黒板も端からどんどんブルドーザーが壊していく。そして壁が崩れ落ちてみると、その向こうには目の前の先生よりもっとよさそうな先生がいたり、あるいは肉食獣みたいな危険な人間がいたり、自分と同じようにそれまで教室の壁の中に閉じ込められていた他の学習者たちも見えてきます。そんな状況の中で、目の前の先生だけがなぜか「ブルドーザーは教育の手段に過ぎません。大切なのは何を教えるかです」などと学習者に向かって話しているのです。それってシュールすぎますよね。もはやそんな状況じゃないでしょう。どうやって、肉食獣に食われないように、自分よりいい先生やすばらしい友達までたどりつけるのか、それを助けるのが目の前にいる教師の役割じゃないでしょうか。それとも、壁が壊れたのに学習者がどこにも行けないように、鎖で机や椅子に縛り付けているのが教師の仕事なのでしょうか。

繰り返しますが、教育にとってICTは授業に使うための手段の一つなどでは決してありません。社会のあり方を根本的に変えてしまった要因です。ちなみに「変えてしまう要因」じゃありません。もう時代は変わってしまったし、今の子どもたちは今よりもっと自由で危険な社会の中をICTを駆使しながら生き抜くことになるでしょう。アナログでもデジタルでもいいとかいうような時代ではないのです。

ブルドーザーに壁を壊されておろおろしている教師だったら、こちらからいろいろサポートすることもできます。また、時代に取り残されつつある高齢の学習者に対応しようとしている教員にも敬意を表したいです。しかし、こんな状況で「ブルドーザーは教育の手段にすぎません」と考えている先生方には、自分の目の前の学習者が見ている世界と、自分が見ている世界の間に、とてつもなく深い溝があることにまずは気づいていただきたいです。学習者の目には、自分の周りの壁をどんどん破壊していくブルドーザーの姿も、その向こうに広がる危険で自由な世界も、はっきり見えています。変わらなければならないのはあなたですか? それとも学習者なのでしょうか。

なお、僕が今日ここで申し上げたような内容は、「ICT脱教具論」などのキーワードで検索するといろいろ出てくると思います。 英語では、コンピューターを使っていながら従来と全く同じ授業しかしないことを「1000ドルの鉛筆」('$1000 Pencil')と呼んで批判することもあります。

そして冒険は続く。

【参考資料】
むらログ: 「1000ドルの鉛筆」から脱却するための3つの視点 : http://mongolia.seesaa.net/article/458668293.html

豊福晋平(GLOCOM)さんのツイート:
"ICT脱教具論は「教師による場面統制から学習者主体の自律へ」「与える学習から生み出す学習へ」「系統的知識スキルから一般的知的操作スキルへ」の転換を含んでいる。ファッションとしての授業スタイルや技法というより、むしろ、学習観の転換(あるいは積極的な読み替え)と言った方が適切。
https://twitter.com/stoyofuku/status/601742636613967872


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posted by 村上吉文 at 02:36 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加