2019年03月04日

補助ツールがあると身につかない?

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も自分に匹敵するぐらい強いジェダイになった息子に「I am your father.」と言っていますか。

日本語多読のウェブサイトを見ていて、よくある質問のところに「漢字にルビがふってあるといつまでもそれに頼ってしまって漢字を覚えないのではないか」という質問があり、その答えとして「日本語を習得してきたら、ルビを見なくても読めるようになるので、ルビなしでもどんどん読むようになります」という主旨の回答が書いてありました。

これを見て、僕がハンガリー語の映画のスクリプトを見て勉強していた頃のことを思い出しました。

僕は初級の前半ぐらいは阪大のオンライン文法解説資料を使ってハンガリー語を勉強したのですが、その後は映画のスクリプトを中心に勉強してきました。いわゆるCBLL(Content-Based Language Learning)というやつですね。

その映画は1956年のハンガリー動乱の時代を舞台にしたもので、初級前半の文法しか身に付いていない人間にとっては、明らかに難しすぎるコンテンツでした。しかし、僕はその映画がとても好きだったので、というか、もうハマってしまっていたので、僕はその映画から離れることができませんでした。

それで、タイトルにある通りGoogleの自動翻訳を使って意味を確認しながら、その過程で副次的に新しい文法や語彙を勉強していきました。しかし、ある時急にGoogle翻訳を使うのがめんどくさくなってしまったのです。なぜなら、そんなものを使わずに自分で読んだほうが早いことに気がついたからです。

同じような体験は、僕が Amazon の Kindle で洋書を読んでいる時にもありました。Kindle には「Word Wise」と言ってちょうどルビのように、難しい言葉の上に簡単な英語で説明を表示する機能があるのですが、 これがうざいのです。 僕ももちろん知らない言葉はたくさんありますから、 こういうのがあれば便利だろうと初めは思っていました。 しかし実際に使ってみると、 僕が知りたい言葉に限ってその説明がなく、必要ではない言葉の上に説明が書いてあったりすることがよくあるのです。

そしてどうやら、こういうものを邪魔だと感じるのはおそらく僕だけの個人的な感覚ではないようです。なぜなら、 Kindle ではどのぐらい難しい言葉の上に説明を表示するのかを細かくレベル設定することができるからです。これも自分に必要のないルビ(この場合は「Word Wise」ですが)は表示させたくないと思っている人が多い証拠の一つと考えていいでしょう。

なお、 このワードワイズという機能をビジュアルにご覧になりたければ以下のリンクで実際の表示を見ることができます。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/G/01/kindle/dp/2014/KI/showme-wordwise._CB325437808_.jpg

つまり、漢字のルビや自動翻訳、Word Wiseなどの補助ツールは、レベルが低いうちは便利ですが、習得が進んでくると、かえってわずらわしくなってしまうのではないでしょうか。その意味で、漢字にルビを振ってはいけないとか、辞書を引かせてはいけないとか、自動翻訳を使ってはいけないとか、そういう規制は無駄だと思います。学習者がそうした補助ツールを使いたいのは、それが必要だからであって、それが必要ない段階まで進むことができれば、自然に使わなくなるでしょう。逆に、こうした補助ツールを使わせないことは、それが必要ない段階まで習得を進ませる上で果たして有効なのかは大いに疑問があります。多様なニーズを持っている学習者の全員に必要なすべての知識を1人の教師が与えることができるのなら、こうした補助ツールを禁止することにも、ある程度の意味はあるかもしれません。しかし、現実的にそんな事は不可能ですから、補助ツールを使わせない事は有害でしかないと僕は思っています。

なお、研究論文としては棚橋尚子による「漢字習得におけるルビの有効性の解明」で、漢字にルビを振ることが漢字の「読み」の習得を促進するだけではなく、書く能力にまでポジティブな影響を与えているという研究が示されています。

そして冒険は続く。

【参考資料】
これで辞書いらず? Kindleの新機能「Word Wise」を使ってみた - ITmedia eBook USER : https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1412/04/news093.html

むらログ: 映画一本の翻訳を終えて
2014年9月19
http://mongolia.seesaa.net/article/405677031.html

むらログ: シナリオが手に入らなかったら、DVDの字幕を撮影しよう!
2015年10月30日
http://mongolia.seesaa.net/article/428842862.html

漢字習得におけるルビの有効性の解明
著者 棚橋 尚子
雑誌名 奈良教育大学国文 : 研究と教育
巻 30
ページ 89-77
発行年 2007-03-30
URL http://hdl.handle.net/10105/10809

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posted by 村上吉文 at 12:36 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加