2019年02月19日

カナダのホームスクーリングの映画 「公立学校での冒険」

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も放射能除去装置を手に入れるためにイスカンダルまでワープしていますか?

またホームスクーリングの話題の続きなんですが、やっぱり日本のホームスクーリングに対する無理解とか誤解をときたくて、前にもちょっと触れたことがありますが、「Adventure in Public School」(公立学校での冒険)というカナダの映画を今日はご紹介したいと思います。

この映画は、昨年夏に一時帰国した時に、飛行機の中でみた数本の映画のうちの一つです。 学校に行かずにずっとホームスクーリングで育ってきた高校3年生相当の少年が、日本で言う高認試験(昔の大検)を受けるために地元の高校に行ったら、その高校の女子生徒に一目惚れしてしまい、わざと試験に落ちてその高校に通うことになるというストーリーです。理由はわかりませんが父親はいません。少年は教育熱心な(と言うか熱心すぎる)まだ若い母親と、認知症らしい祖母の3人で暮らしています。高校の時のディベートの大会に行って母親はおそらく望んでいなかった妊娠をしてしまい主人公である少年を身ごもるので、年齢的には30代中頃でしょうか。これを書いていて分かったんですが、母親は自分の若い時の失敗を繰り返させたくないというのが、息子にホームスクーリングをさせている背景にあるんですね。(前にも書きましたが、これに限らず日本語で考え始めたらすぐ分かることが英語で考えている時には気がつかないというようなことが僕には本当によくあって、これも外国語副作用の典型的な症状ですよね)

最初にご紹介したいセリフは、その高校卒業の試験のために高校に来た時の母親と息子のセリフです。ちなみに母親はその高校の卒業生でもあります。

母親: I had to go to this school for stupid people, but you don’t. You’re going to Cambridge, because you are special.(ママは馬鹿な人たちのためにこの学校に通わなければいけなかったの。でもリアム(息子)はそんなことしなくていい。あなたは特別だからケンブリッジに行くのよ)


その高校卒業試験には教室にパラパラと5、6人ぐらいは受験者がいるところからも、ホームスクーリングがそれほど珍しいことではないことがわかります。ホームスクーラー同士の付き合いもあるようで、試験会場では隣の席の「オータム」という女の子に少年は挨拶します。 試験が始まると、母親はオータムの母親と高校の中のロビーのようなところで立ち話を始めるのですが、その時にこんなセリフがあります。

(最近の子供は13歳でパーティーに出入りしているという話の後で)
母親:That’s why I’m going with Liam to Cambridge to protect him from getting derailed. (だから私はリアムがレールから外れることから守るためにケンブリッジに一緒に行くの)


日本では学校に通うことこそがレールに乗っていることなので、ホームスクーラーが「レールから外れることから守るために(レールから外れないように)」などというのを聞くのはとても違和感があるのではないかと思います。カナダではホームスクーリングというのは正式な教育の一つのスタイルなので、少しもレールから外れている状態ではないんですよね。 こんなセリフにもその違いがよく表れています。 (もちろんカナダにもレールから外れまくっているホームスクーラーもたくさんいます)

しかし実はこの試験の時にリアム少年はアナスタシアという名前の美少女に一目惚れしてしまい、一旦は余裕で提出した物理のテストをわざわざ回収して100点満点中6点という回答に書き直し、再提出します。わざと試験に落ちて、この高校でアナスタシアと毎日会いたいと思ってしまったわけですね。このあたりの一連のエピソードはあまりホームスクーリングと関係ないので飛ばしますが、試験に落第したと言う通知が届き、ついに母親に「パブリックスクールに通いたい」と告白したリアム少年に対する母親のセリフが以下の通りです。

母親:Public School? Are you trying to kill me? Liam, I have taught you more in days than they could teach you in years! Public School? Baby, I don’t get it. Can you just give me 10 reasons? (公立学校ですって? 冗談でしょ? リアム、公立学校で何年もかけて教わることよりも多くのことを、私はたった数日(のスピード)で教えてきたのよ。訳が分からない。10個でいいから理由を教えて)


最後の「10個でいいから」というのは普通は「せめてひとつだけでいいから」という感じで言う表現ですが、ここでは「とてもそれでは足りない」と言うニュアンスなのかもしれませんね。

また、前回の記事に書いたホームスクーリングの効率性というか、 学校の一斉授業の非効率性がここでも言及されていますね。

この「Public School?」の台詞の前には「キーッ!」に近い絶叫があるのですが、これは冒頭の予告編に入っているので、その時の表情もよくご覧ください。

実はここまでが前振りで、ここからリアム少年の公立学校での冒険が始まるわけですが、 その冒険を通して少年だけではなく母親も成長し、映画の冒頭では「ケンブリッジに一緒に行って息子を守る」と言っていた母親も、 映画の最後ではケンブリッジに旅立つ少年を空港で見送ることになります。 少年の初恋とその終わり、そして新たな出会いが カナダの公立高校を背景に描かれ、最後は少しほろりとなります。

この映画は日本で視聴できるのかどうか僕はよくわからないのですが、 ホームスクールの雰囲気がとてもよくわかりますので、 ご関心のある人には是非オススメしたいと思います。

なお1年ぐらい前の記事にも書いたことがあるのですが、 ホームスクーリングには学校のカリキュラムに従って勉強をするタイプと、「Interest-led」と呼ばれるその時の関心次第で勉強したいものを勉強するというタイプがあります。この映画で描かれているのは、前者のかなりきちんとしたタイプのもので、 しかも高校の時に妊娠してしまって、その体験から公教育に対してかなりネガティブなイメージを持っている母親がその反動で自分の息子に対して過保護になっているという物語の背景にご留意ください。 過保護というよりも、学校というシステムを家庭内に持ち込んでいるタイプですね。服装も普通の部屋着ではなく、いかにも教師らしいブラウスなどを着ていたりします。ガレージの中に専用の黒板と机を置いて、 いかにも教室のような雰囲気の場所で母親が教師として教えるシーンが何度も出てきます。もちろんこのような熱心な母親がいる例も少なくはないのだろうと思いますが、 あくまでも映画に出てくる極端な例と考えて良いのではないかと思います。

そういえばホームスクーリングとは関係ないのですが、この若い母親に対して高校の校長が自分の学校の生徒であるリアムの前でデートに誘うシーンにはホームスクーリング以上に驚きました。しかも、「息子の通う学校の校長と付き合うわけにはいかない」と断られると、 その年度が終わって夏休みの始まるベルが鳴った瞬間に「もうあなたの息子はこの高校の生徒じゃないから」とナンパを再開するんですよね。 この辺りは日本のフィクションでもなかなか現実的ではなさすぎて見ることができないエピソードのように感じるんですが、カナダは教職員と保護者の関係が日本より自由なのかもしれませんね。

そして冒険は続く。

【参考資料】
Adventures in Public School - YouTube(映画の本編。有料です。)
https://www.youtube.com/watch?v=izzCmwYwWrY

Adventures in Public School - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Adventures_in_Public_School

むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠 : http://mongolia.seesaa.net/article/464194014.html

むらログ: 多様な学びを社会として認めよう : http://mongolia.seesaa.net/article/453716706.html
(カナダのホームスクーリングについて説明しています)

むらログ: ホームスクーリングの方が望ましい子どもたち : http://mongolia.seesaa.net/article/464058454.html

むらログ: 父が最後に教えてくれたこと 在宅医療とホームスクーリング : http://mongolia.seesaa.net/article/463662483.html

むらログ: 『かがみの孤城』にみる日本の教育の多様化の遅れ : http://mongolia.seesaa.net/article/460915106.html
(主な登場人物が全員不登校の子供達です。)

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posted by 村上吉文 at 14:09 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加