2007年07月02日

インフォメーションギャップを超簡単に作る方法

コミュニカティブアプローチでは、コミュニケーションとは情報格差(インフォメーションギャップ)を埋めることだとされています。つまり自分の知らないことを質問したり、自分の知っていることを教えてあげたりする行為ですね。

しかし、実際の授業でこれをやるのは結構たいへんです。というのも、練習する学習者の間で、情報格差がないとコミュニケーションが生まれないからです。たとえば黒板やパワーポイントを使っていては、学習者が全員同じ情報を見ているので、情報格差は生まれません。したがって、教師は何らかの方法で学習者間に情報格差を構築しなければなりません。

そうして生まれたのが、各種のロールカード(狭義にはロールプレイ専用のカードのことですが、ここではもう少し広い意味の)です。

いちばん簡単なのはペアワーク(二人組みで行う練習)。カードを二枚作って、それぞれに違う内容を書いておき、お互いに紙を見せなければそこに情報格差が生まれます。

しかし、ペアワークにはちょっと問題もあります。

以前紹介した「遊びの四要素」のうち、ここで利用できるものがあるとすれば「競争」だけです。たとえば、どのペアがいちばん早くできるかなどと競うわけです。が、すべてが教師によって仕組まれています。つまり、学習者には何の選択権もありません。

そこで生まれたのがバラバラ練習です。(これって正式名称はなんていうのでしょうかね。マルチインタビュータスクとかって聞いたこともありますけど)

バラバラ練習では、自分と同じカード(もしくは、対になっているカード)を持っている学生を探します。バラバラですから、立ち上がって教室内を自由に歩き回ります。ここでは、誰に話しかけるかは完全に自由です。つまり、学生に選択権があり、遊びの四要素のうちの「偶然」が作用しています。これがペアワークとの大きな違いですが、他に「話す量が圧倒的に増える」という利点もあります。

しかし、バラバラ練習には、またまた大きな問題があります。

それは、たくさんの種類のロールカードを作らなければならないということです。二十人のクラスで一人一人が自分と対になっているカードを探す練習なら、十種類のカードが二枚ずつ必要になります。これはたった二種類のカードを作ってしまえばいいペアワークに比べて、たいへん手間がかかります。

だから、バラバラ練習よりも面白くなく、発話量も多いとは言えないペアワークが頻繁に行われることになります。まあ、そこそこインフォメーションギャップもあるし、コミュニカティブだしね。

まさに私がそうでした。

そういう怠け者でありたい日本語教師である私のために、ランダムにロールカードを自動生成するエクセルのワークシートを作ったことがありますので、ご紹介します。

ロールカードの完成イメージはこんな感じです。この一枚一枚を切り離して配ります。


入力用シートには、ロールカードの左の列に入れるデータ入力欄と、右の列に入れるデータ入力欄があります。こんな感じです。


ここの左列のデータ(画像では人名)は、「ロールカード」シートにそのまま反映されますが、右列のデータ(画像では月日)は、「ロールカードシート」ではランダムに並び替えられています。カードは十種類が二枚ずつ、全部で二十枚が自動生成されます。

画像では、左列に名前、右列に日付が入れてありますが、これは完成イメージを作るために臨時に入力したもので、ダウンロードして開くと始めは空白になっています。

ここは自由に入力できますから、学生の名前や、学校の近くの地名など、身近な言葉を入れると喜ばれます。

この例では、名前と日付しかありませんから、いろいろな状況を設定できます。一番簡単なのは「〜さんの誕生日は何月何日ですか」と聞いて回って、同じカードを見つけたら勝ちというもの。ただし、カードによって誕生日が違うことになりますので、ちょっと現実的なコミュニケーションにはなりません。

もうちょっと現実的な設定だったら、たとえば携帯を落とした人と、その携帯を回収した警察官の会話。落とした持ち主は記憶を手がかりに「〜さんに何月何日に電話した」と説明し、警察官は電話の履歴を見てそれを確認します。これならだいぶ現実的になりますね。この場合は、学生を警察官グループと持ち主グループに分けてからロールカードを配ると簡単です。あ、この例なら日付よりも時刻の練習の方が現実的かな。

日付の代わりに動詞などを入れる練習もよく行われます。たとえば学生が一人一枚ずつ写真を持っていて、その写真について「呉さんは座っていいます。陳さんは寝ています」などと説明するわけです。で、同じ写真を持っている人が勝ち。

なお、完成イメージの四枚のうち、上の二枚は同じ内容で、下の二枚も同じです。つまり、ロールカードは左右がペアになっています。完全にバラバラに配るときは気にする必要はありませんが、上記のように警察官グループと落とし主グループに分ける場合などは、カードのペアを分けて配布する必要がありますので、ご注意ください。

ちょっと工夫している点は、カードの上から二人分(ここでは呉さんと陳さんのデータ)は他の人と同じである確率が50%であるという点です。

これは普通に乱数を使うと面白くないからです。というのも、普通に乱数を使うと120通りもの組み合わせができてしまうので、20人(つまり十種類のカード)しかいないクラスでこのカードを使うと、最初の質問で相手が自分と同じデータを持っている確率は一割以下で、もしそこで同じ答えだったら、ほとんどの場合、最後まで同じになってしまうのです。つまり、最初の質問で答えが同じなら、それ以上は情報の移動(つまりコミュニケーション)に意味が無くなってしまいます。

しかしこのワークシートでは、上から二つの欄では、最初の質問で相手が自分と同じデータを持っている確率は50%もあります。三つ目まで同じだったのなら、四つ目の質問をするときにも、相手が自分と同じである確率は半々です。つまり、より多くの学生と意味のあるコミュニケーションをする機会が生まれることになるのです。

ということで、ぜひ使ってみてください。
ばらばら練習カード自動生成.xls

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