2018年10月30日

ブラック企業と戦うための行動リスト その1

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も異国の奴隷たちの鎖を斧で断ち切って解放していますか?

さて、 「日本語教育」という言葉こそありませんでしたが、昨日の安倍首相による所信表明演説では、外国人就労について明確に述べられ、まさに今国会が今後の日本語教育の姿を大きく変える正念場と言えるのではないでしょうか。以下に産経新聞より、関係する部分をコピペします。

 IoT、ロボット、人工知能、ビッグデータ。第4次産業革命のイノベーションを取り入れることで生産性の向上につなげます。その活用を阻む規制や制度を大胆に改革していきます。本年度から、固定資産税ゼロのかつてない制度がスタートしました。中小・小規模事業者の皆さん、地域を担う中堅企業の皆さんの生産性革命に向けた投資を力強く後押しします。
 同時に、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れる。入国管理法を改正し、就労を目的とした新しい在留資格を設けます。出入国在留管理庁を新たに設置し、受入企業の監督に万全を期します。社会の一員として、その生活環境の確保に取り組んでまいります。さらに、日本人と同等の報酬をしっかりと確保いたします。
 半年前に来日されたばかりの、ベトナムのクアン国家主席が先般お亡くなりになられました。心からご冥福をお祈りします。
 来日の際訪れた群馬の中小企業では、ベトナム人の青年が、日本人と同じ給料をもらいながら、一緒に働いていた。そのことを、クアン主席は大変うれしそうに、私に語ってくださいました。
 「彼にとって、大きな誇りとなっている」
 これは、私たちにとっても誇りであります。世界から尊敬される日本、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げてまいります。

外国人の労働者を日本が受け入れる際に、日本語教育がどれだけ大事なのかは僕のブログの読者の方なら皆さんご存知のことでしょう。しかし残念ながら、外国人を受け入れる企業が彼らの日本語教育に責任を持つ方向に事態は動いていて、そこに僕は 大きな懸念を抱いております。というのも、企業が担当することになると、外国人労働者には仕事に使う日本語しか教えないで、一般の生活で使う日本語が教えられないことになりかねないからです。それはもちろん社会の統合などに大きな問題を残すことになり、ヨーロッパで見られたような深刻な社会の分断に繋がってしまいます。

「国際交流基金がやればいいじゃないか」という声もよく聞くのですが、 実は国際交流基金法という法律の規定により、基金は国内の日本語教育に予算を使うことができないことになっています。デマケで言うと文化庁が国内の日本語教育を担当しているのではないかと僕は認識しているのですが、文化庁の予算と人員では実質のところ、この4月からの本格的な移民時代に対応することは難しいでしょう。 国土交通省や経済産業省や入国管理庁も外国人就労者に関わってはいますが、少なくとも日本語教育の専門的なノウハウを持っているとは思えないので、 実質的に誰も外国人就労者に対する日本語教育に対してカリキュラムを考えたりする省庁が存在しないのではないかと懸念しています。

その一方で、僕たち日本語教育関係者は、 外国人就労者たちがブラック企業で奴隷のように使い捨てられるのを防ぐことができる立場にいます。なぜなら、たとえ企業内のの教室であっても、日本語教師として彼らと同じ空間を共有することができるからです。

そこで僕たちに必要とされるのは、ブラック企業の手先になって彼らを支配するために日本語を教えることでしょうか。僕が違うと思います。むしろブラック企業に使い捨てられるのではなく、不当な扱いは不当だと日本語で主張できるように支援することではないかと思います。

そのためには、ブラック企業と戦うためにどのような行動が必要なのかを知っている日本語教師が、その行動を遂行するために必要な日本語を教える必要があります。

しかし残念ながら、僕自身は幸か不幸かあまりブラック企業と関わったことがないので、そのような際にどのような行動が必要なのかがわかりませんでした。それでこの週末に、ごく簡単な本から、そこで記述されている行動をリストアップしてみました。実はまだもう一冊あるので、これは前編だと思ってください。


まずは『まんがでゼロからわかるブラック企業とのたたかい方』という本です。この本は Kindle 版もあるので海外の人も買うことができます。以下に行動リストを整理などしないで、順不同で出てきた順番に箇条書きにしてみますね。

証拠をとっておく
理解できない書類にサインをしないようにする
サインをしてしまったらコピーをもらうか、写真を撮る
残業時間を記録する
労働契約を理解する(少なくても以下の4点)
・働く場所
・業務の内容
・給料
・働く時間など
帰る直前までタイムカード押さない。押すように言われたら拒否する
自分が住んでいる県の最低賃金を確認する
規定通りの休憩を取る
休憩中に働いた分の給料を請求する
1日8時間または1週間に40時間を超えて働いた場合、残業代をもらう
週一回の休日に働いた場合、残業代をもらう
深夜に働いた場合には割増した残業代をもらう
労働組合に加入する
組合で残業代などを伝える
労災を申請する
そのために会社を管轄する労働基準監督所に請求書を提出する
そのために請求書を厚生労働省のホームページからダウンロードする
労働基準監督所で請求書の書式をもらう
仮処分を申し立てて給料を払わせる
民事訴訟にするか仮処分にするか労働審判にするかを決める
労働組合や弁護士に相談をする
記者会見で世間に公表する
映像を動画サイトで配信する
マスメディアに取り上げてもらう
証人尋問で証言する
証人尋問での弁護士の質問を理解する
被告側の証人尋問を理解する
会社側と和解する
デモ行進する
会社の前で様々な抗議活動する
不当労働行為の問題を労働委員会に申し立てをすることができる



かなり重複もありますが、次は『ブラック企業完全対策マニュアル』という新書です。こちらも出てきた順に箇条書きにします。

自分の働いている会社がブラック企業かどうかを判断する
会社の名前と過労死等のキーワードで検索して、ブラック企業かどうかを判断する
就職四季報で離職率を調べる。30%以上の会社は要注意。
2ちゃんねる や質問サイトでその会社の名前で検索し、検索結果を自動翻訳で見る
ユニオンなり労働関係のNPOに相談に行きその勉強会に出席する。
そこで友人や知人を作る。
自主退職を促された時に返事を延ばす
弁護士ユニオンなり弁護士に助けを求めて和解金をもらう
あと1年今の会社で働けるかどうかを考えて、我慢するか争うか決める
失業保険を申請してもらう
未払いの賃金や残業代を請求する
勤務時間の記録などをこまめに保存する
休暇を申請する
退職日の2週間前に退職届を出す
退職後に電話やメールをしつこくよこしてくる場合に「今後の連絡はすべて文書にしてください」と通告する
理不尽な損害賠償請求を無視する
各都道府県の労働局の紛争調整委員会に対し斡旋の申請をする
斡旋が不調に終わったときのことを考えて次の一手を考えておく
労働基準監督所に匿名での調査を依頼する
セクハラについては各都道府県に設置されている労働局へ申告する
労働基準監督所で「相談ではなく申告に来た」と伝える
申告する内容を事前に整理して資料を作る
会社の違法性等を裏付ける証拠となるものを記録する
労働組合を自分で作る
合同労組に加わる
メディアを使って会社にプレッシャーをかける
地方裁判所で労働審判に申し立てる
労働審判の調停案や審判を読んで和解するか民事裁判で争うかを考える
労働審判の申し立てから40日以内に詳細な申立書を行政書士などに頼んで作成してもらう
書類にサインする前にその意味がわかる人に確認する
何時から何時まで働いたかメモする
給与明細を保存しておく
残業したらその日の最後に打ったメールをプリントしておく
帰る前に家族や同僚に向けて今から帰りますと言うメールを退勤記録の代わりに毎日送る
自分が解雇された後に会社が新たに採用募集していたら、その求人広告なりサイトの画面をプリントアウトして保存しておく
経営者が贅沢な生活をしていることを示すものがあれば写真で撮っておく
不当な解雇を防ぐために、仕事の成績を示す表などが社内に貼られていたらそれを撮影しておく
不当な解雇を防ぐために、自分が担当して作成した成果物をコピーするなり写真を撮っておく
会社側が注意書を乱発してきたら受け取りを拒否してその時のやりとりを録音しておく
怪我をした場合は医師の診断書を保存しておく
言葉の暴力や暴言ならICレコーダーやスマートフォンで録音しておく
メールで暴言がなされる場合もプリントアウトしておく
ユニオンに加入したことを経営者に通知する
その会社の強みと弱みを考える
合意書に「お互いに不利益な言動行動を取らない」と言う条項を入れる
家から通える距離にあるユニオンを探す
posseやユニオンサポートセンターに電話して信頼できるユニオンを紹介してもらう
複数のユニオンを回って自分に合っているところを見つける
自分に合わないユニオンには脱退届けを出して辞める
日本労働弁護団の電話相談で相談をする
弁護士会が運営している法律相談センターに予約して方流して法律相談を受けてもらう(ただし有料)
法テラスで相談する
特定社会保険労務士に労働審判の申告書作成や斡旋の代理を依頼する
NPO法人「労働者を守る会」の月一回の無料相談に行く
各都道府県労働局や全国の労働基監督所に設置された総合労働相談センターを訪ねる
法テラスの弁護士報酬の費用を建て替え制度を利用する
失業給付金に申請する
賃金仮払い仮処分を受ける
給料の支払いが遅れた場合、遅延損害金を請求できる
労働者健康福祉機構による未払い賃金建て替え払い制度を利用する
弁護士に裁判所から執行命令をとってその会社の銀行口座を差し押さえてもらう


最後に厚生労働省の『技能実習生の労働条件の確保・改善のために』から、技能実習生の行動リストを作りました。

来日後1年以内に2ヶ月以上の座学の講習を受ける。
入国前に講習の一部を受けている場合は一か月以上の座学の講習を受ける。
技能検定基礎2級などに合格する。
<書面で明示すべき労働条件>を理解する
・ 労働契約期間
・ 就業場所および従事すべき業務
・ 労働時間 (始業・終業時刻、休憩時間、休日等)
・ 賃金 (賃金額、支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払日)
・ 退職に関する事項 (定年の有無、解雇事由等)
賃金から控除されているものが法令で定められているものか労使協定で決められたものかそれ以外かを確認する。
時間外労働の内職を指示されたら断ることができる。
時間外労働の内職を指示されたら入国管理庁に連絡することができる。
地域別最低賃金の他に特定産業別最低賃金を調べる。
賃金の不払いがあった場合は入国管理庁に知らせる。
割増賃金の不払いがあった場合は入国管理庁に知らせる。
最低賃金額未満の支払いがあった場合は入国管理庁に知らせる。
6カ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したら有給休暇を申請する
貯金の管理や銀行の通帳や印鑑の管理を申し出られたら拒否する
労働基準監督局に提出してある就業規則を確認する(労働者が10人以上いる場合)
30日の予告なく解雇された場合、解雇予告手当の支払いを請求する
使用者の承認を受けずに外出及び外泊する。
寄宿舎規則を読む。
寄宿舎の警報装置、消火装置、避難階段を確認する
危険有害業務に従事するときは 特別教育を受ける
・  クレーン ( つり上げ荷重5トン未満のもの )、移動式クレーン ( つり上げ荷重1トン未満のもの ) の運転
・  玉掛け作業 ( つり上げ荷重1トン未満のクレーン、 移動式クレーンに係るもの )
・  フォークリフト等荷役運搬機械 (最大荷重1トン未満のもの)の運転
・  動力プレスの金型等の取り付け、取り外し、調整
・  アーク溶接  
雇い入れられた時に健康診断を受ける
一年以内ごとに一回健康診断を受ける
有害業務についている場合、特殊健康診断を一定期間ごとに受ける
労災保険に加入しているか確認する

この他にもう一冊、川村遼平「NOと言えない若者がブラック企業に負けず働く方法」というのがあるのですが、まだ目を通せていないので「その2」に続けたいと思います。

僕がオンラインでやっている行動中心アプローチコースでは、これらの行動リストを作った後に、日本語を必要としない行動を削除して、能力記述文(CDS)に書き換えてシラバスを作ります。例えば「理解できない書類にサインをしないようにする」だったら、 「理解できない書類にサインを求められたときに、ごく簡単な言葉でサインを保留することができる」のような感じです。実際にはもっとレベルを特定した能力記述文を書く必要があります。そうするとたぶん以下のような会話例が想定できますよね。

A:これ急いでサインをお願いします。
B:すみません。難しくて分かりません。
A:分からなくてもいいからサインしてください。
B:それはできません。


こうした会話が想定できれば、どのような語彙や文型を(CDSによっては漢字も)教えればいいかも考えやすいのではないかと思います。

僕は技能実習生に対する日本語教育に関わったことはないのですが、レベルとしては A 2ぐらいなのかな。どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら、以下のソーシャルメディアへのリンクにコメントいただければ幸いです。

ところで、ブラック企業にこき使われてボロクズのように使い捨てされるのは、技能実習生だけではありませんよね。これらの本は、 ブラック日本語学校で働く日本語教師にとっても、とても参考になると思いますよ。自分のいる職場がブラックなのかどうかわからないという人も、その判断基準などが書いてありますから、目を通して見ることをお勧めします。 労働基準法などを知っていることは、労働者として武器になることは間違いありません。

そして冒険は続く。

【参考資料】
安倍晋三首相、所信表明演説の全文(1/7ページ) - 産経ニュース :
https://www.sankei.com/politics/news/181024/plt1810240016-n1.html

佐々木 亮 「まんがでゼロからわかる ブラック企業とのたたかい方」
https://amzn.to/2z8F3uc

古川 琢也「ブラック企業完全対策マニュアル (晋遊舎新書 S15) 」
https://amzn.to/2SrucVn

『技能実習生の労働条件の確保・改善のために』
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002ag3s-att/2r9852000002ag9v.pdf

川村遼平「NOと言えない若者がブラック企業に負けず働く方法」
https://amzn.to/2zdKng9
(まだ行動リストを作っていません)

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2014年以降のこのブログの内容はKindle本にもまとめられています。2018年中にこちらの本をご購入になると、その収益は全額が「海外にルーツを持つ子どもと若者のための日本語教育・学習支援事業」を実施しているNPO法人青少年自律援助センターに寄贈されます。ココ出版の『冒険家メソッド』は初版の本体価格の5%が同センターに寄贈されます。
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posted by 村上吉文 at 21:31 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加