2018年10月01日

行動中心アプローチとアバンダンスの時代

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も水の惑星オクトーでポーグの群れに非難がましく騒がれながらポーグの丸焼きを食べていますか?

さて、僕は学生時代にはそれなりに一人で炊事もしていたのですが、就職してからはなかなか時間もなく、独身時代も仕事の帰りにコンビニや食堂に寄ってから家に帰るような生活が続いていました。結婚後は妻が料理上手なので頼りっぱなし。しかし今年になってから義理の母の手術で妻が一時帰国したり、僕だけが逆に僕の実家に帰って両親に食事を作ったりする機会が増え、インターネット時代になってからは実質的に初めて台所に立つ機会が増えてきました。

ちなみに僕が学生の頃はアルバイト雑誌に連載されていた「セイシュンの食卓」という漫画が僕の自炊の教科書でした。覚えている人はいらっしゃいますか? 実は昨日 Google で検索してみるまで知らなかったんですが、その後テレビドラマにもなっていたりしてたみたいですね。

ちなみに学生時代の僕の料理のレベルは親子丼ぐらいがせいぜいで、今でも揚げ物とかは怖くてやったことがありません。ですから初心者と呼んでいいのかどうかもよく分からないぐらいのレベルです。

しかし、そういうレベルだからこそ分かったのですが、語学だけではなく料理の分野でも30年前とは全く違う学び方が可能になっているんですね。

とにかく驚いてしまうのは、豊富なレシピがインターネットで共有されていて、 自分が作ってみたいと思った料理は似たようなものが簡単に見つかることです。

僕はよくインド料理店で食べる「ほうれん草とチーズのカレー」が昨日は食べたかったのですが、やはり検索するとたくさん出てきます。ただ僕の場合は二つ条件があってそれに見合うものはありませんでした。二つの条件というのは、僕の料理の腕が非常に低いレベルなので「クミン」とか特殊なスパイスを使う難しいものは避けたいということと、わざわざ肉を使った料理は自分からは作りたくないということです。

最初の、僕のレベルに関しては、カレーのルーを使うレシピがあったので、難しそうなスパイスなどは避けることができました。ただ、 こちらは鶏肉を使っていたので全面的には採用できませんでした。 しかしそれとは別に、難しそうなスパイスなどが出てくるレシピですがベジタリアンのものがあったのでそれも参考にすることができました。 それで、初心者で、かつベジタリアンの人でも作れるような「ほうれん草とチーズのベジタリアンカレー」のレシピを僕もアップロードしておきました。こちらです。https://cookpad.com/recipe/5270684

こうした経験を通じて、インターネット時代にはリソースが非常に豊富にあるので、30年前とはまったく違う学びが可能になっているということを、あらためて知ることができました。もちろん第二言語の習得に関してはいつもそればかり僕はこのブログでも申し上げているのですが、それ以外にもこうした変化は広く普遍的に訪れているのではないかと思います。

それとは別に、もう一つ気がついたことがあります。

こうした学び方というのは、先日の日本語教師チャットでも話題になった行動中心アプローチそのものだということです。まず作りたいものがあって、それを作る過程を通して普遍的に他の料理でも使える技術を学んでいくという形式は、まさに行動中心アプローチで新しく語彙や文法を身につけていく発想と同じです。

例えば僕は中華料理店ではいつも卵とトマトの炒め物が定番でこればかり注文するのですが、「鶏がらで簡単!トマトと卵の中華炒め」 というクックパッドのレシピで作り方を見てみたところ、作り方の中に「トマトの切り方はこちらを参考にどうぞ♪ ID:5024301」という部分が挿入されていました。つまりトマトの切り方などを勉強してその結果トマトと卵の炒め物ができるのではなく、あくまでもどんな料理が作れるようになるのかという目的が最初にあり、それに必要だからこうした他の料理にも使える普遍的なコンテンツが紹介されているわけですね。行動中心アプローチで文型を扱ったりする時とよく似ていると思う人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

また、昨日のほうれん草とチーズのベジタリアンカレーですが、このとき初めて僕はミキサーを使いました。スイッチを入れるとすごい音がしてフタも飛びそうでびっくりしましたが、とりあえずミキサーの使い方はわかったので、一つステップアップした気持ちです。次からはミキサーを使う料理も積極的に手を出せるでしょう。そして、これも「どんな料理を作るか」という目的があり、その過程で普遍的な知識やスキルを身につけていくという意味で、行動中心アプローチと言ってもいいのではないでしょうか。

こうした考え方は語学学習や料理などに限らず色々な世界で語られていて、例えばインドネシアで日本語を教えていらっしゃるサトさんはギターの練習方法で「まず弾きたい曲があり、その曲を弾く練習のためにコードなどを身につけていく」という方法を行動中心アプローチ的だと書いていらっしゃいます。

コブクロの「YELL」が弾きたくてギターのレッスン受講→これって行動中心アプローチ的? : https://satotas.com/guitar-and-foreign-languages/

また Twitter では、あひるせんせーが、こちらはギターではなくウクレレですが、やはりこんなツイートを投稿されています。



こうして考えてみると、行動中心アプローチというのはやはりリソースが豊かな時代だからこそ注目されていると言えるのかもしれません。なぜなら、人の行動というのは非常に多様で、その多様な行動を目標にして言語や料理や楽器などを学んでいくには、大量のリソース(Cookpadの300万ものレシピなど)が必要だからです。行動ではなくて文型が中心の場合は、誰に教えるにしてもその言語自体は同じなのでそれほど大量なリソースは必要としません。 教科書と辞書ぐらいがあればある程度は勉強できるでしょう。しかしこのような方法では、実際に使うかどうかわからない知識なども大量に学ばなければならないので、特定の行動を目的にしている学習者にとっては非常に効率が低い学び方になってしまいます。

このように技術の発達によって物質やエネルギーや教育のリソースが極端に増え、その結果社会が大きく変わりつつあるということは「ありあまる時代」もしくは「アバンダンス」というキーワードで語られることが多いですが、参考文献のピーター・ディアマンデスの著書に詳しいです。ご関心のある方は是非お読みください。

文型シラバスから行動中心アプローチへと語学教育のパラダイムが大きく変わりつつある、(もしくは既に変わってしまった)のにはこのような時代的な背景もあったのではないでしょうか。

そして冒険は続く。

【参考資料】
行動中心アプローチによるオンライン日本語教師研修2018
http://jftor.org/event/workshop20181009/2018-10-09/

ほうれん草とチーズのベジタリアンカレー by 冒険家むらかみ 【クックパッド】 簡単おいしいみんなのレシピが297万品 : https://cookpad.com/recipe/5270684

コブクロの「YELL」が弾きたくてギターのレッスン受講→これって行動中心アプローチ的? : https://satotas.com/guitar-and-foreign-languages/

ピーター・H. ディアマンディス 「楽観主義者の未来予測(上): テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする」
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posted by 村上吉文 at 05:52 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加