2018年06月04日

日本語教育は奴隷制度を支えるのか

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も売られてゆく奴隷たちに紛れて隣の国に潜入していますか?

さて、各メディアの報道によると政府は5年間を上限に日本国内で就労できる新たな在留資格を設ける方針を決めたそうで、実質的に移民時代が始まることになります。

僕は公的な移民制度を通して日本が世界に開かれた国家になること自体は大賛成だし、それ以外の選択肢はもはや日本にないと思うのですが、技能実習生を受け入れている企業の71%で労働基準法の違反が見つかったというようなニュースを聞くと、新しい制度の元で働く外国人の人権がきちんと守られるのかどうか、とても心配になります。

先日、こんなツイートをしたところ、僕の普段の投稿よりもずっと多い反響がありました。

https://twitter.com/Midogonpapa/status/1001453915953446915

ドイツなどのように公的な資金で日本語のほかにも上の投稿で触れたような労働基準法などに関する知識も教えるべきだと思うのですが、日本で実際どのようなトレーニングが行われるのかは僕はよく分かっていません。最悪の場合は、文句を言わせずに働かせるために、こうした内容はあえて教えないようなことを考える人がいないとも限りません。 しかし日本語教育に関わる人間として、そうした事態は絶対に避けたいですよね。

その場合は、ブラックな環境での対応方法を日本語の授業として教えることも可能です。例えば以下のような手順をとってみてはいかがでしょうか。

1.行動をリスト化する
僕はさいわいあまりブラック企業などで働いた経験がないので、この部分は詳しくないのですが、入ってみたらそういう環境だったという場合に、取るべき行動をリスト化します。例えば対応策をウェブで検索するとか、社内の担当部署に相談するなり、労働基準局に通報するなどです。 コストなどがよく分かりませんが、弁護士などの専門家に相談したりすることもあるかもしれませんね。

2.レベル分けする
これらの行動のリストはそのままでは日本語のレベルが曖昧、もしくはバラバラすぎてシラバスにできませんから、 CEFRやJF日本語教育スタンダードの能力記述文を見て、レベルをそろえましょう。例えば以下のようなイメージです。

行動リスト上の表現
「労働基準局に電話で状況を知らせる」

能力記述文
「まわりの騒音が少なく、ゆっくりとはっきり簡潔に確認をしてもらえれば、ごく簡単な定型表現で労働基準局に電話で状況を知らせることができる。」

この辺りのことは以下の動画の4分45秒あたりから、もう少し詳しく話をしていますので、是非ご覧ください。

JFTオンライン教師研修02 CDSリストを作ろう
「難しさ」の2つの視点
https://youtu.be/2tS4a8WjVBk?t=4m47s

3.特定のレベルのコースにする
上記のような、レベルを統一した能力記述文をそれぞれのレッスンのゴールにして、 多くのレッスンから構成されるコースのシラバスを作ります。レッスンがいくつ必要かなどは授業数などにもよるでしょう。目的は日本語を使ってブラック企業での奴隷状態から脱することであって、体系的に文型を身につけることではありませんから、文型の提出順などはあまり気にしないでいいと思います。

4.それぞれのレッスンを準備する
ここまでですでに目的(能力記述文)が明確になっているので、それをどのようなレッスンプランに落とし込むかはそれぞれの先生方のやり方があると思います。ただ、ここで重要なのは目的はあくまでもそのレッスンの能力記述文に書いてあることです。もちろん語彙の他に文法なども教える必要もありますが、 関係のない場面での例文などは単純に寄り道にすぎませんので、あくまでもその能力記述文に関する例文のみにしましょう。
ここはいろいろな方法があるかと思いますが、職場で作ったビデオがありますので、こちらもご覧くださいませ。ただし、これは今回のテーマになっているブラック企業で働く日本語学習者とは関係のないレッスンの内容になっています。

JFTオンライン教師研修05 授業の方法02 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5tsFq5f_AVU&index=6&list=PL8xNAgRaT_iSwotoPru0pShmH2LgXkGjq

上のビデオは会話の授業の作り方ですが、以下のビデオは文字を中心にした活動の例です。

JFオンライン教師研修04 授業の方法01 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tXCr69AljpA&index=5&list=PL8xNAgRaT_iSwotoPru0pShmH2LgXkGjq

上にも書きましたが、僕自身はあまりブラックな環境で働いたことがないので、そうした場合にどのような行動が必要なのかよく分かりません。そのため、僕自身がこうしたコースを開発することはできません。もし僕のブログの読者の中で、そうした経験があり、日本を支えてくれる外国人労働者をブラック企業から守るために自分の時間を割いてもいいという人がいらっしゃいましたら、せめて行動リストだけでも作っていただけないでしょうか。それをコースに落とし込むのは 、ある程度経験のある日本語教師ならそれほど難しくないかもしれませんから。

そして冒険は続く。

【参考資料】
外国人労働者:新たな在留資格 技能実習後、5年就労可 政府、来春創設へ 労働力確保狙う - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180530/ddm/002/010/112000c

もはや現代の「奴隷制度」と化した外国人技能実習生制度 2015年は3695事業場で法令違反、「日本の恥」と批判殺到
http://blogos.com/article/187505/

【コメントはソーシャル・メディア上の記事別ページヘどうぞ!】
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https://twitter.com/Midogonpapa/status/1003615290926645248
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posted by 村上吉文 at 21:24 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加