2018年03月31日

佐々木俊尚「広く弱くつながって生きる」

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

佐々木俊尚さんの新刊「広く弱くつながって生きる」を読んで、久しぶりに読書の楽しさを思い出しました。最近は英語の勉強が必要なので、日本語の本を読まないようにしていたら、いつの間にか読書の時間自体が減ってしまっていたのです。佐々木さんの本は別にエンターテイメントの本ではないんですが、読んでいて非常に心地よいんですよね。もちろん勉強にもなるんですが、読み進めることが感覚的にすごく気持ちいいのです。

さて、本書の内容ですが、タイトルから想像できる通りグラノヴェッターの「弱いつながりの強み」 が理論的な基礎にあります。 と言っても、先ほど書いたように、これは非常に読みやすい本で専門書という位置づけではありませんし論文からの引用なども全くありません。(簡単な解説はありますが)

この本を読んだ後に印象に残った点は二つです。

一つは佐々木さんの実践が僕の生活と非常に似通っているというところです。僕自身も辺境を中心に海外でばかり成人してからのキャリアを積んできたので、この本に書いてあるような広く弱いつながりの方がむしろ多いのではないかと思っています。

僕自身はもう四半世紀もそういう生き方をしてきたのですが、佐々木さんによると、最近の変化により、 僕のように海外を中心に暮らしている人間だけではなく、 日本社会そのものがこうした広く弱い繋がりを重視すべき時代になっていて、かつ、それが簡単にできるようになってきているということです。

そして、そうしたつながりを作り維持するためには、 Facebook がどのようなソーシャルメディアが非常に便利であるということも(僕のことをご存じの方ならご理解いただけると思いますが)、僕も全く同じようなことを実践しているわけです。

また、そうしたオンライン上の付き合いでは、友人を選ぶことができるし、またそうすべきであるという主張も全く同感です。もっとも、佐々木さんは僕よりもずっと紳士的な方なので、 「ニコニコしながら手をふりつつ、だんだん遠ざかる」という作戦を重視していらっしゃるとのことですが、僕はちょっとそういうのはめんどくさいので、もうブロックとかミュートにしてしまいます。

また、そうしたネットワークを作るには、ある程度プライバシーを公開した方がいいと言うご主張にも賛成します。 もちろんこういうリスクを取れるかどうかは人にもよりますし、例えばストーカーの被害に遭っているような人なら軽々しくプライバシーを公開するべきではないと僕も思いますが、ソーシャルメディアに慣れていない人が一般的に考えているほどのリスクはないのではないかと思っています。

さて、この本を読んで印象に残ったことのもう一つは、僕も謙虚でなければいけないなあ、ということです。佐々木さんの Twitter はもう何年も前からフォローしていますし、ご著書に関しては少なくとも Kindle 化されているものはほとんど読んでると思います。僕から見ていても、佐々木さんの特に Twitter での書き込みの仕方が、 急に物腰の柔らかい方向に変化した時代が確かにありました。佐々木さんの言葉を借りると、「自分の考えていることや書くことは完成度が高い、自分は唯一無比であるといった、おごり高ぶった気持ちがある時期までありました。」ということなので、 おそらく僕だけの主観的な感覚ではなかったのでしょう。

しかし、 佐々木さんのように多くの著書があり、幅広い知識を持った方がこのように謙虚な生き方をしているのは非常に驚いてしまいます。僕自身は、「自分は唯一無比である」とまでは思いませんが、特に日本語教育の ICT 化の遅れなどに関してはいつも満たされない気持ちがあり、佐々木さんのように謙虚になれないのが実情です。

しかし、この本では佐々木さんがそうした「おごり高ぶった気持ち」を捨てた後に得られた気持ちの良さなども書かれていますし、具体的にどのようにすればそのように気楽に生きられるのかということも紹介されています。

佐々木さんの昔の本をご存じの方は、デジタルな方向の内容をイメージするかもしれませんが、実際には Facebook という言葉が何度か出てくる程度で、近年の時代の変化や、その変化に対応してどのように生きるかということがこの本のテーマです。特に技術などに関心のない人こそこうした広く弱く繋がって生きる方法について振り返ってみる良い機会になるのではないかと思います。

そして冒険は続く。

【参考資料】
「広く弱くつながって生きる (幻冬舎新書) Kindle版」by 佐々木俊尚 (著)
https://amzn.to/2uAjZOj

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posted by 村上吉文 at 22:02 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加