2018年03月14日

行動中心アプローチでは文型が多すぎて大変?

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も月の砂漠をはるばると旅のらくだに揺られていますか?

さて、行動中心アプローチでは、よく「1つのレッスンで扱う文型の数が多すぎる」という声を聞くことがあります。あまり記憶にないのですが、もしかしたら僕自身もそんなことを言ったことがあるかもしれません。

もう何ヶ月か前になるのですが、やはり同じようなことをおっしゃる方に話を聞いたので、昔の自分へのアドバイスという意味も含めて、改めてここに記しておきたいと思います。

行動中心アプローチで「扱う文型が多すぎて大変」という批判は、やはり文型シラバスのままの考え方で行動中心アプローチの教科書を扱おうとしているところにあるように思います。

行動中心アプローチでは、シラバスは文型ではなく行動で示されます。そこでの目標は何らかの行動ができるようになることです。そして、一つの行動ができるようになるためには、複数の文型が必要になることが多いです。つまり、中心は1つの行動で、それに必要な文型が複数つながっているようなイメージです。

一方で、文型シラバスではコースを組み立てる単位は行動ではなくて文型です。中心になっている文型を教えた結果、何らかの行動ができるようになります。1つの文型はいくつもの場面や行動で応用できますから、中心にある1つの文型に対していくつもの行動が線でつながっているようなイメージです。

つまり、行動中心アプローチと文型シラバスでは、1つのレッスンの中で中心になっているものと周辺にあるものの立場がちょうど正反対なのです。

さて、ここでようやく本題に入るのですが、文型シラバスになれた教員が、行動中心アプローチの教科書を初めて扱うときに、文型シラバスのように1つの文型をいくつもの行動や場面を使って紹介しながら教えていると、確かに時間がいくらあっても足りないということになってしまいます。

それは当然です。なぜなら、中心にある1つの行動を教えるための文型を教えるために、さらに複数の行動や場面を使おうとしているからです。つまり、本来は行動の周りに文型がつながっているだけで良いのですが、行動の周りにつながっている文型にさらに行動がつながっていたりするのです。これでは確かに大変です。

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行動中心アプローチでは、そのレッスンの目的はそこで示されている行動が取れるようになることであって、その教科書に出てくる文型が他の場面や他の行動でも使えるようになることではありません。ここは大事なところなのでもう一度繰り返しますが、そのレッスンに出てくる文型が他の場面や他の行動でも応用できるようになることは、行動中心アプローチの授業の目的ではありません。ですので、行動中心アプローチでは、文型を教える時もあくまでもその行動に必要だから教えるだけであって、他の場面や他の行動でも使えるという例文等を示す必要は無いのです。繰り返しますが、目的はその文型が複数の場面や複数の行動で使えるようになることではなく、特定された1つの行動で使えるようになることだけだからです。つまり、「行動中心アプローチは教える文型が多くて大変」というときの多くは、いつの間にかレッスンの目的が「行動」ではなくて「文型」を教えることにすりかわってしまっているのです。

ちょっと分かりにくいかもしれないので、逆の発想で考えてみましょう。

例えば、文型シラバスで教えるときに、1つの文型をいろいろな場面で使うことができるということを紹介しますよね。例えば、「てはいけません」という文型を教える時はスポーツのルールを説明する時にも使えるし、図書館や博物館での禁止事項を説明する時にも使えます。しかし、スポーツのルールでは「ゴールキーパーは手を使ってもいいです」のように他の重要な文型も出てきますよね。しかし、それは教える必要はありません。文型シラバスでは1つのレッスンで必要とされるのは特定の文型を教えることだけですから、同じ場面でも使う他の文型を教える必要はないのです(当たり前ですが)。つまり、「てはいけません」という文型を教えるときに、同じ場面で使われるからといって、「てもいいです」という文型を教える必要まではありません。これは、文型シラバスに慣れている人なら、当たり前すぎることでしょう。

しかし、実は文型シラバスから行動アプローチ行動中心アプローチに移行したばかりの教員が、「行動中心アプローチでは教えなければならない文型が多すぎて困る」という時に、全く同じような間違いをしていることが多いのです。多分、僕自身もそうだったと思います。よく覚えていませんけど。

文型シラバスでは、レッスンの目的は文型を教えることです。ですから、そのレッスンで扱う必要がない文型まで教える必要はありません。当たり前ですよね。

同じように、行動中心アプローチでは、1つのレッスンは何らかの行動ができるようになることを目的として行われます。ですから、そのレッスンで扱う必要がない行動や場面まで教える必要は無いのです。これも当たり前なのですが、慣れないうちは文型アプローチと同じように他の場面や他の行動までその文型を使ってできるようにしなければならないと考えてしまう例が少なくないようです。

文型シラバスであれ、行動中心アプローチであれ、大切なのはそのレッスンの目的を忘れないということです。あるいは、目的から外れたことは時間の無駄だという意識です。会話の授業に会話文の読解の授業をしてはいけませんよね。そういうことです。

そして冒険は続く。

【参考資料】




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posted by 村上吉文 at 20:54 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加