2018年01月08日

ブラックフェイスの問題は日本の多様性の欠如

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか。

今日はブラックフェイスの件について書いてみたいと思います。ご存じない方もいるかもしれないので概要を書いておきますが、年末の日本のテレビ番組で、ダウンタウンの浜田というお笑い芸人が、顔を黒く塗ってエディ・マーフィの真似をしたのが人種差別だと批判されている件です。

僕は写真しか見ていなかったので、敬意が払われているかどうかよくわからなかったのですが、YouTubeに実際の番組の動画がアップロードされているのを見て、これは明らかに大きな問題を孕んでいると感じました。他の出演者などのコメントも、「これとずっと一緒にいるのはしんどい」などと否定的なものばかりだったからです。もちろん、「かっこいいですね」などというコメントであれば、黒塗りしていても敬意を感じる可能性はあると思います。しかし、残念なことにこの番組では笑いのネタにしているに過ぎませんでした。

そして、番組の内容以上に大きな問題だと思ったのは、コメント欄ではこの動画に対して「差別的だ」と批判している声が非常に少なく、むしろ「これは差別ではない」と、批判者に対して大勢のユーザーが攻撃していることです。つまり、明らかに差別的なコンテンツに対して、それを差別的だと感じない感性を持っているユーザーが非常に多いのです。

ただ、これに関してはあまり僕はその人たちを簡単に批判することができません。なぜなら、僕自身も小学生の時に、初めて地元に来た金髪の留学生に対して「あー!外人だ!」と叫んだことがあるからです。その時は、初めて見た外国人だったので、本当に驚いて、相手がどう感じるかなどということは全く考えませんでした。というより、1つの事実として、「ガイジン」と呼ばれることを外国人が嫌うということを知りませんでした。

僕はあまり裕福な家庭の出身ではないので留学経験などは無いのですが、20歳の時に1年間ワーキングホリデーでカナダで働いていたことがあります。そして、日本に帰ってきたら、前とは全く違うように見えることがあることに気がつきました。例えば、その頃「笑っていいとも」というお昼の人気テレビ番組がありましたが、そこでサンコンさんというアフリカ系のタレントさんがひどい扱いを受けていたのです。僕が最初に見て驚いたのは、他の出演者から「お前の国には電信柱はないだろう」と言われていた時でした。この番組では、スタジオに一般人が座る席が用意されていて、他の出演者だけではなく、現場の人たちの反応も中継されるのですが、この時もこういう差別的な出演者のコメントに対して、他の出演者もその場にいる視聴者のみなさんも大きい声で笑うばかりでした。そして、僕と一緒にその番組を見ていた友達も面白そうに笑っているだけでした。腹を立てているのは僕だけだったのです。そして僕が我慢できずに、「こいつ、こんなこと言われてよく笑っていられるもんだな」と言ってしまったら、周りの友人は驚いていました。でもその時僕自身も、もしワーキングホリデーに行っていなかったら、これが差別的であることに気がつかなかっただろうと言うことがよくわかっていました。

そして残念なことに、いちどワーキングホリデーに出れば、こういう差別的な問題に対してまともな感性が身に付くかと、そうでもないように僕自身の経験からも思うのです。

というのも、僕がワーキングホリデーから帰ってきた後も、例えば中東の人々に対する差別に関してはかなり無自覚だったということが後からわかったこともあるからです。

僕がワーキングホリデーに行ったのは大学1年生が終わって2年生に行く間の事でした。その後、大学を卒業する前に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の字幕を題材にした卒業論文を書きました。実はこの映画は前半の部分でアラビア系のテロリストが出てくるのですが、今見ると、これは中東の人が見れば非常に腹立たしい描写であることがわかります。しかし、大学4年生だった当時の僕に、そのような認識があった記憶が全くないのです。その後、サウジアラビアに派遣され、尊敬に値する上司や同僚、そして学生たちに恵まれ(まあ、学生に関しては敬意を抱くことができたのは全員ではなく一部ですけど)、ともかく日本人と同じように尊敬できる人も尊敬できないヤツもいるということが肌感覚でよくわかったのです。

そして、サウジアラビアからの帰国後、何かの機会に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見ることがあり、その時にアラビア系のテロリストに関する描写があまりにも滑稽で、これが差別的であることに気がつかなかった今までの自分の認識に驚いた記憶があります。

もっと最近の話では、2年ほど前にFacebookで僕の友人の多くのプロフィール写真が虹色になってびっくりしたことがあります。これは確かアメリカの連邦裁判所で同性婚が認められたことを記念したFacebookの機能の1つだったと思いますが、それまではあまり僕はLGBTの人たちに関する知識がなく、例えば同姓愛であるだけで死刑になってしまうような国に住んでいたこともありますが、それがどれだけ深刻な問題なのかは当時は全く考えていませんでした。僕自身も、もしかしたらLGBTの人たちに関する安易な冗談などを差別的に言ってしまったことがあるかもしれません。

そういえば同じ日本語教師の方がTwitterかブログでこんなことを書いていたことがあります。

授業でLGBTに関する内容を扱うときは、「気持ち悪い」という意見も、「その人たちの権利をきちんと守るべきだ」という意見も両方とも尊重している。大切なのは誰も傷つかないようにすること。


でも、実際にはもしそこにLGBTの学習者がいれば、「気持ち悪い」と言う同級生の発言には傷つきますよね。そして実際に、僕たちの人口の中のLGBTの人たちの割合を考えれば、自分のクラスの中にLGBTの人が1人もいないということを前提にして「誰も傷つかないようにしている」というのは難しいのではないかと思います。

とは言え、Facebookでプロフィール写真が大量に変わったのを見る前の僕を考えれば、同じように対応していた可能性は非常に高いです。そして、自分の授業に関して「誰も傷つけていない」と誇らしげにソーシャルメディアに書いてしまった可能性もあります。

そしてまた、僕とは違う属性を持っていて、僕がその人たちのことをよく知らない場合は、今でも知らず知らずのうちに、差別的なことを言っているかもしれません。

人は誰もが、差別的な感覚をもともと持っているものだと思います。例えば僕はタバコが嫌いなので、喫煙者に対してはあまり良いイメージを持っていません。そして実際に、非喫煙者である僕の前でタバコを吸っている人たちは、非喫煙者に対する遠慮が足りないのではないかと思っています。実際には、マナーの良い喫煙者は、僕の前でタバコを吸う事はないでしょうから、そういう人たちの姿は僕の目には見えてきません。ですから、どうしても喫煙者はすべて他者への配慮がないというふうに思ってしまうのです。

しかし、このように自分が差別感情に対して自覚的であるときはむしろあまり問題は大きくないのです。ある程度は自分の発言をコントロールすることができるからです。

むしろ問題は、自分が知らない属性を持つ人たちに関して、冗談のつもりで知らずに差別的なことを発言してしまうことです。もちろん僕自身も悪意なくそうした差別的な発言をしてしまう可能性もあります。そこに本質的な差別の問題があるのではないかと思います。

世界が多様である以上、こうした問題を完全に無くすことはできないでしょう。しかし、世界が多様であることを受け入れ、自分自身も多様な人たちを理解しようとしていけば、完全にゼロにすることはできないと思いますが、問題を少なくしていくことができると思いますし、今、僕たちにできる事はそれしかないのではないかと思います。


さて、これは本題とは全く関係ないことなのですが、今僕は肩まで暖かいお湯に浸かって浴槽でこのブログを書いています。前回の記事をお読みになって下さった皆さんにはお察しかと思いますが、iPhoneの音声入力を使ってこの記事を書いているのです。本当に風呂でブログが書けるのか疑問に思っていたのですが、実際にはまったく難しいことではありませんでした。これは本当に生産性を上げるツールだと思っています。

そして冒険は続く。

【参考資料】
ガキ使 アメリカンポリスお着替え!笑
https://www.youtube.com/watch?v=5roveZv9O0w
(実際に放送された内容が共有されています)

「笑ってはいけない」浜田の黒塗りメイクが物議 黒人作家が語った不安
http://www.huffingtonpost.jp/2018/01/02/history-of-blackface_a_23321243/

ブラックフェイス - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9


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posted by 村上吉文 at 03:20 | 主張 | このエントリーをはてなブックマークに追加