2017年11月13日

宝箱システム 多様性の中の評価

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も太陽神ラーのメダリオンをもとに魂の井戸を発掘して宝箱を持ち出そうとしていますか?

さて、今までセミナーなどではよく話してきたことなのですが、検索してみるとなぜかブログにはまだ書いたことがないようなので、今日は自律学習コースの評価について僕の実践例をご紹介したいと思います。

一般的な用語としては「デジタルバッジ」とか「Micro credentials」などと言われることが多いかと思いますが、僕のコースは冒険家のためのものだったのでRPGっぽく「宝箱システム」と呼んでいました。

デジタルバッジ自体については前にもこのブログに書いたことがありますが、簡単に言うと、一斉授業で使われる同じ内容の期末試験などの評価とは違い、学習者の一人ひとりに教師が発行するものです。MoodleEdmodoなどのLMSには最初から実装されていますし、Class Dojoのようなそれが中心になっているツールもあります。(参考資料のところにまとめてリンクを張ってあります)

日常的に教師が記録していく学習者の評価としては、伝統的な教育機関では
・出席
・宿題の提出
・小テストの点数
などがあるかと思いますが、デジタルバッジはそれをもっと細かくするイメージです。

僕の自律学習のコースでは、時期にもよりますが宝箱(要するにデジタルバッジ)は全部で60種類ほど用意していました。一覧へのリンクを「参考資料」に入れてあります。

コースの始まるときに、学習計画として「どの種類の宝箱をいくつ集めたいか」を考えてもらい、毎週(人によっては毎日)自分で記録を残し、コースの終わるときに「どの種類の宝箱をいくつ集めたか」を振り返ります。

【4つの宝箱グループ】
これらの宝箱は4つのグループに分けられます。

最初のグループは「日本語の技能」に関するものです。自律学習者たちは特定の能力を身につけたくて教室に来る人たちと、日本語のコンテンツを楽しみながら結果的に日本語を伸ばしたいという人たちに分かれていたので、前者の皆さんはこちらを中心に学習計画を作ります。

宝箱の2番めのグループは「コンテンツ」です。上記のように日本語のコンテンツを楽しみながら勉強するタイプの学習者は「アニメ」「忍者」などのコンテンツの種類ごとに宝箱を集めます。

3番目のグループは「学習方法」です。それぞれの技能やコンテンツをどのように勉強したかです。語彙リストを作ったり、Ankiという反復学習用のアプリを使ったり、その多様な学習方法ごとに宝箱があります。

最後の4番目のグループは「学び合い」です。それぞれ取り組む内容は違っていても、独習ではなくてグループでの学習ですので、他の学習者に質問したり、それに回答したり、支援したり、アイデアやリソースを共有したりということがあれば、それが宝箱になります。

【使い方】
使い方は、学習計画と記録と評価です。
まずコースの最初に日に宝箱のリストを配り、どの宝箱をいくつ集めたいかを聞きます。それが学習計画です。『自律を目指すことばの学習 ―さくら先生のチュートリアル―』によると桜美林大学などはもっと詳しい学習計画を作らせているようですが、やはり日本に留学までする人と海外の夜間コースに来る人では日本語学習に対する関わり方も違ってきます。かなり明確な目標がないと、わざわざリスクをとって日本まで来ませんよね。そういう場合は桜美林大学のような目標志向の学習計画でもいいのですが、海外だとその手前の「何となく日本が好き」「どういう世界なのか覗いてみたい」という感じの人も多いのです。それで、僕も最初は桜美林大学のようなしっかりとした学習計画を作ってもらおうとしていたのですが、最終的には「宝箱をいくつ集めたいか」というだけのシンプルな学習計画作りに落ち着きました。

毎日の記録ですが、これにはGoogleフォームを使いました。学習者はみな一人ひとり選んだ宝箱の種類が違いますから、それぞれ専用のGoogleフォームを僕が作ります。そしてそれに毎日記録してもらうのです。といっても授業外では勉強する余裕のない人もいましたし、勉強しても記録しない人もいましたが。

週末はさすがに仕事はしませんでしたが、平日はほぼ毎日、そのフォームをメールで学習者たちの全員に送っていました。これも最初は面倒だったのですが効率化するとそれほど手間はかかりません。僕の場合は、全員のGoogleフォームをブラウザの1つのフォルダーにまとめておいて、そのフォルダーの中身を一斉に開き、一人ずつタブを開いて「フォームをメールに埋め込んで送信」をしていました。メールアドレスをコピペするのは最後まで面倒でしたが、何か自動化する解決策はあるかもしれません。

この「フォームをメールに埋め込んで送信」のオプションを選択しておくと、学習者がメールを開いたらメールの本文としてそこに質問が表示されるのです。リンクを開く必要もありません。質問は学期の最初に彼らの選んだ宝箱がリストになっていて、彼らがその日に(もしくは前日に)やったものにチェックを入れるだけです。最近はスマートフォンを持っている学習者がほとんどなので、指先でタップするだけで回答でき、パソコンよりもむしろ簡単です。そして最後に「送信」ボタンを押すと、フォームはクイズ形式になっているのでフィードバックとして「あなたは漢字の宝箱をゲットしました!」などのメッセージが彼らの回答によって自動的に表示されるようにしていました。

学期の終わりの評価はそれほど難しくありません。というのもGoogleフォームの場合は自動的にグラフなどにしてくれるからです。いちおう、学期の最初の学習計画との比較もしますが、別に学習計画に縛られることもないので、それ以上でもそれ以下でも問題ありません。大切なのは、なぜ変化したかです。「最初に思っていたより大変だったことがわかった」とか、「こちらの方が面白いということがわかって、最初の方法はやめた」などと、一人ひとりに話してもらっていました。

僕がハンガリーでやっていた自律学習コースの評価というのはこういう感じでしたが、訪日後の学習者が対象の桜美林大学とブダペストでは同じことがやりにくいのと同じように、もちろんそれぞれの現場によって最適の解というのは違うと思います。あくまでも例の1つとしてご参考にしていただければと思います。

いつも言っていますが、自律学習って大変ですけど楽しいですよ!

そして冒険は続く。

【参考資料】
むらログ: デジタルバッジ
http://mongolia.seesaa.net/article/404911319.html

桜美林大学『自律を目指すことばの学習 ―さくら先生のチュートリアル― 』
http://amzn.to/2zvF6mn

Moodle - Open-source learning platform | Moodle.org
https://moodle.org/
(デジタルバッジを実装している学習管理システム)

生徒とつながる未来の教室 | Edmodo
https://www.edmodo.com/
(デジタルバッジを実装している学習管理システム)

ClassDojo
https://www.classdojo.com/ja-jp/?redirect=true
(デジタルバッジが中心のキュートなモンスターの学習管理システム)

宝箱一覧
https://goo.gl/Sw6sZZ

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posted by 村上吉文 at 01:54 | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加