2017年07月23日

仮想現実が語学教育を変える!

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も仮想空間で100人のエージェント・スミスと戦っていますか?

さて、一昨年ぐらいから「仮想現実(以降、「VR」)が教育を変える」といろいろなところで言われていますよね。僕も最初に体験してみたときから「これはすごい技術だ」と思ってきました。その没入感が、まさタイムスリップとかテレポーテーションという言葉にふさわしいインパクトだったのです。タイムマシンと「どこでもドア」が教室にやってきた!といえば、未体験の人も想像しやすいかもしれません。

その一方で、語学教育に応用するにはまだ早いんじゃないか、とも思っていました。というのも、カナダに住んでいる人が新宿の喧騒の中に投げ込まれたとしても、実際にそこにいる人と話せるわけではないからです。もちろん、音声認識とAI(人工知能)を使えばそういうことも将来的には可能だと思いますが、今のところ、これらの技術を応用したVRのアプリなどはないようです。少なくとも僕は体験したことがありません。

とは言え、社会の勉強などにはとてもいいと思います。難民キャンプのど真ん中に放り込まれるのもすごい体験ですし、Googleアースでグランドキャニオンなどの圧倒的な風景の中に身をおくのも忘れられないでしょう。理科や工学で分子構造や機械の仕組みなどを見るのにも非常に便利だと思います。

もちろん、新宿の雑踏の中でも、通行人の声を聞いたり、看板に書いてある日本語を見たり、さまざまな日本語に触れることはできます。ただ、そこにインタラクション性がないかぎり、語学教育においては見た目ほどのインパクトはないな、と思っていました。

【ところが】
間違ってました。

何度かVRゲームセンターに通ってみて、やってみたゲームの1つがこれです。


THE BEST VIRTUAL REALITY EXPERIENCE - Accounting Playthrough - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jUnDJFem-cA

これは「Accounting」というVRゲームです。ちなみに、実況プレイの中で一番短い動画にしたら上記の動画になったんですが、ギャルが苦手な方にはアニキっぽいこんな(↓)動画もあります。

WEIRDEST VR GAME EVER!! - Accounting VR (HTC Vive Gameplay) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tGE49Z_Wc-A

VRゲームには「Job Simulation」(職業演習?)というシリーズがあって、この「Accounting」も会計を学ぶための教育VRかと思っていたら、動画を見れば分かる通り、まったく違いました(^^) 

見る時間のない人のために簡単に説明すると、会計士が事務所っぽいところで仕事をしていると、なぜか異世界に飛ばされて、どこかの国王の暗殺事件に巻き込まれ(というか、自分で殺してしまい)、裁判で死刑判決を受け、ギロチンで殺されたかと思ったらまた異世界に飛ばされて、山火事の中でダイナマイトを握らされ、爆発したと思ったら元の会計士の部屋にいるという、まったく会計を学ぶ機会のないゲームでした。

ところでこれ、英語がまったく分からない人に楽しめるでしょうか。たとえば、以下のゲームと比べてみてください。


GROUND SLAMMING ROBOTS! | Space Pirate Trainer IRL - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yveZtkkQJWs
これはうちの息子がハマっている宇宙海賊のゲームです。要するにシューティングですよね。英語は最初の説明の部分とか、メニューぐらいにしか出てきません。


Audioshield first look, VR mixed-reality - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FhSsdsu4yIk&t=104s
これは、妻や娘が好きなゲーム。iPadなどでは有名な「太鼓の達人」と同じようなゲームで、赤い玉が飛んできたら赤い盾で受けて、青い玉が飛んできたら青い盾で受けるという単純なゲームです。

これらのシューティングや音楽のゲームに比べたら、「Accounting」ゲームにおいては言語の役割が死活的であることが分かるのではないかと思います。

実を言うと、「Accounting」はもうとにかくFではじまる4文字語とかがたくさん出てくるし、1時間でそのゲームセンターに入れてある全部のVRゲームを体験したかったので深く考えずに途中でやめてしまったのですが、家に帰って2日経ってから、突然、分かりました。

これってTPRですよね!

プレイヤーがゲームの中で何をすべきかは、全て音声言語で指示されます。そして、プレイヤーはそれに従って引き出しを開けたり、ボタンを押したり、VRの世界の中で行動します。もちろん、プレイヤーはしゃべったりできますが、少なくともこのゲームではマイクがそれを拾って音声認識しているようには思えません。

もしかしたらVRって語学教育にも、すごい可能性があるんじゃないか? と思って検索してみたら、すでに英語教材でそういうのがありました。英語で指示を聞いて、料理をつくるというVRゲームです。まさにTPRです。英語がずいぶんゆっくりだし、動画のタイトルも「The Kitchen English Learning VR」なので、おそらくゲームとしてではなく英語教材として開発されたんじゃないかと思います。


The Kitchen English Learning VR - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=alTsaHqKClQ

その他にも、教材ではないようですが前述の職業演習ゲームのコンビニ店員のバージョンも、コンピューターからの音声の指示で仕事をするのが中心のようです。
STORE CLERK VR SIMULATOR! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=r89_zrAL5Sk

また、プレイヤー同士で会話しながらすすめるゲームもあり、これらも語学学習にはかなり効果的ではないかと思います。以下は、一人がウェイターになり、もう一人がシェフになってレストランで働くVRゲームです。
JELLY AND SLOGOMAN IN A VR KITCHEN! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=EZBwDzCwyiU

【これまでのおさらい】
さて、ここまで書いてきて、VRを体験したことがない人、あるいは単純なVRしか体験したことがない人には、僕が感じているインパクトがまったく伝わらないだろうなあと思いなおしまして、本来は先に書くべきだったような気もしますが、VRについて基本的なことを簡単に書いておきます。

どのVRシステムでも基本的に備わっているものとしては、「360度の視界」です。固定された画面の中で動画が再生されるだけではなくて、視聴者が上を向くと再生される動画も上の方に視点が移動して、撮影されている世界の中の上の方を見ることができます。後ろを振り向けば、後ろも見えます。それが今までの動画とまったく違うところです。これにはジャイロセンサーとか加速度センサーとか呼ばれる技術が使われています。顔がどちらを向いているかを検知して、それに見合った画像を表示するわけですね。

しかし、これだけだったら、もうyoutubeにもたくさんあります。たとえば以下の動画は英語学習用の360度動画です。スマホのYouTubeのアプリで見れば、スマホを右に向ければ画面も右向きの画面になるし、左を向ければ左を見ることができます。パソコンで見ている人なら、再生中の画面をマウスでドラッグすれば、同じように最初は画面外だった方向を見ることができます。


Learn English in VR - Virtual Reality English Lesson - Restaurant | LinguapracticaVR - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bpU8Oczc_OA

でも、これだけだと、正直あまり没入感はないです。たぶん、立体感がまったくないからだと思います。立体感がない理由は、カメラが1つしかないからです。立体感を表現するには、両目の視差を再現する必要があり、つまり、ゴーグルの中の右目と左目で微妙に違う映像を表示しなければならないのです。

例えば以下の動画は360度ではないのですが、右目用と左目用の両方が一枚の動画の中に入っていますよね。子供用の雑誌などによく載っているように、右の画像を右目で、左の画像を左目で見てみてください。すごく立体感が出てくるんじゃないかと思います。


Learn English in VR - Language VR app - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=I_H8AY1tcjg

Googleの教育用VRアプリのGoogleアースなどはこの技術を使っているようです。僕はHTCのVIVE用のGoogleアースを体験したのですが、グランドキャニオンなり、東京の町並み、深海、火星の地表などが非常に立体感、現実感を持って迫ってきます。まさにそこにいる感覚です。

ただ、そこでは何もできません。その世界の傍観者として、ただ見ているだけです。Googleアースでは移動だけはできますが、目の前のものを動かしたりはできません。その意味で、何らかのストーリー展開などない限り、その世界に「ハマる」というようなことはありえないでしょう。

しかし、いくつか紹介したようなVRゲームでは、両手に持ったコントローラーを通して、さまざまな行動ができるのです。「立体絵画」とでもいうしかないような、今までになかった芸術作品をつくることもできますし、料理のまねごとも、冒険もできます。

(Tilt Brushというツールで立体絵画を描写していく動画)
Tilt Brush: Painting from a new perspective - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=TckqNdrdbgk

こうして、その世界と関われるようになると、ハマりますよ。本当にその世界にいるような没入感なのです。もちろん、これらのVRゲームの世界の中の造形はかなりシンプルで、それほど現実的でもないのですが、ものを手にとることができ、四方八方から見ることもでき、立体感があるので、映画やテレビを見るのとはまったく違う現実感があるんですよね。

さて、それでは出版社とか僕たち教員が、こうした教材を開発することは可能なのでしょうか。それは実は僕もよく分かっていないのですが、少なくとも2次元のモニターで3次元のモデルを扱うCADなどよりは、ずっと敷居は低そうです。GoogleはVRの中のさまざまなオブジェクトを簡単に作ってネットでシェアするためのツール「Google Blocks」を開発しています。この動画を見る限り、VRで3次元の中に入ってしまえば、3次元のオブジェクトを作るのもそれほど難しくないのではないかと思います。


[ Google Blocks ] EP1: Low poly 3D sculpting in virtual reality - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yC9SNHtb3eM

実を言うと、僕の住んでいるエドモントンのエドモントン公立学校教育委員会は300台のゴーグル(HTCかOculusか分からないのですが)を購入して、フランス語の教材を開発しているとのことです。これも、今後、情報が分かり次第、皆さんに共有していきたいと思っております。

長くなってしまいましたが、このVRという技術には、20年ぐらい前にパワーポイントを見て「これは教育が変わるなあ」と思ったとき以上のインパクトを感じています。Googleの教育用VRアプリ「Google Expeditions」はすでに200万人以上の子どもたちが体験しているということで、今、ものすごい勢いで普及しつつあると言ってもいいでしょう。ご関心のある方は、ぜひ、お近くのVRパークなどで体験してみてください。傍観者としてみるだけのVRなら「Google Cardboard」という数百円のダンボールのゴーグルにスマホを入れるだけでも体験できますよ!

そして冒険は続く。

【参考資料】
Googleの教育用VRプラットフォーム『Expeditions』が一般ユーザに開放 | VR Inside
http://vrinside.jp/news/google-expeditions-for-all-smartphone-users/

Expeditions - Google Play の Android アプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.google.vr.expeditions

googleexpeditions - Twitter検索
https://twitter.com/search?f=tweets&vertical=default&q=googleexpeditions

いま大注目のVR体験ができる東京都内のスポット4選! - TiPon(ティップオン)|Tips × Ponta [ポンタ]
http://tipon.ponta.jp/articles/OkwFP

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posted by 村上吉文 at 08:47 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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