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2017年03月24日

ペーパーレス化は難しくない

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も助けた亀に連れられて深海を潜行していますか?

さて、今日の記事はもともとFacebookだけに投稿した内容なのですが、いろいろコメントもいただけて議論も深まったので、ブログの方で記録しておくことにします。

話の発端は10年前の以下の記事です。

むらログ: wikiこそ「ウェブ2.0と日本語教育」の本命
http://mongolia.seesaa.net/article/34537709.html

先週、この記事を引用して、僕はFacebookの自分のタイムラインで以下のように書きました。
昨日、「好きを貫け」から10年経ったというブログを書きましたが、以下の記事はもう10年と3週間ぐらい経っているんですね。
静的な文書の共同編集はGoogleドキュメントなどで普及してwikiという言葉すら意識されなくなりましたが、教育界に限定すると、10年たってもまったくこうした共同編集のメリットが普及しているとは言えない状況にあります。
ここまで教育界が変わっていないということは、10年前の僕からはとても想像できないことでした。ICTのインフラがこれだけ発達しているのに、どうしてわざわざその利用を禁止して、紙で情報を配信(配布)し、手書きの付箋で共同作業とかいうことになるんでしょう。印刷とか、保存とか、共有とか、とても大変ですよね。コストも馬鹿にならないし。
(電子的な共同編集ならURLをメールやメッセージで共有すればいいので印刷は必要ありませんし、編集したそばから自動で保存されていくので、成果物をメモしたり撮影して保存したりする必要もありません)

Facebookにこれを投稿したところ、いくつかのコメントをいただきました。おかげさまで現代的な仕事スタイルに慣れていない人がペーパーレス化に躊躇してしまう原因を考えることができました。Facebookのコメント欄に書いたことと一部重複しますが、こちらでも僕の経験を共有しておきたいと思います。(なお、一般的には別にドヤ顔して書くことではない、ごく当たり前のことであることは重々承知しております。というか、「ペーパーレス化」でドヤ顔できる業界って教育と行政以外にあるのでしょうか。)

「みんながアクセスできる共有フォルダーがない」
これは自前のサーバー内に共有フォルダーを作っておいて、そこに学内からアクセスするような際によく出てくる問題です。研修参加者がそこにアクセスする権限を持っていないと、こういうことが起きますよね。
解決方法としては、自社サーバーではなく、ネット上に配布資料を置くことを提案します。そして、それを前提に配布資料などを作ります。
具体的にはDropBoxやGoogleDriveやマイクロソフトのOneDriveやアップルのiCloudなどです。僕がメインで使っているのはGoogleDriveです。

「全員がタブレットやノートパソコンを持参できない。」
 たぶん、これは紙の配布資料の代わりにそのまま同じように、手元のパソコンやタブレットに表示することを想定していると思いますが、実はこの想定自体も検討の余地があります。なぜなら、プロジェクターを活用すれば紙であれデジタルであれ、配布資料はほとんど必要ないからです。僕が日本語教師になった頃のプロジェクターは1台200万円もして普通の教室には設置されていることはほとんどなく、みんな普通に教科書や紙の資料だけで授業やセミナーを行っていました。紙もスクリーンも両方なければ勉強できないなんてことはまったくないのです。今は数万円で高性能なプロジェクターがあるのですから、Googleスライドなどで作ったプレゼンテーションをスクリーンに映写しておけば、大部分の紙は不要になります。同じ情報がプレゼンにも紙の配布資料にも載っているって、どう考えても非効率ですよね。実際、僕が講師として出講する研修では、プレゼンはオンラインでシェアしますが、もう10年ぐらい前から紙の配布資料は準備していません。「紙をください」なんて言われたことも一度もありません。自分でプリントして保存している人はいるかもしれませんが。

「どうしても手元で見たいという人がいるかもしれない」
僕はそういう人に出会っていませんが、もしそういう人がいたとしても上記のように自分で印刷すれば問題ありません。でも万一、その人が自分で印刷できなくて、ノートパソコンもタブレットも持っていなかったとしても、大丈夫です。スマホで見ればいいのですから。

ただし、スマホに対応するには注意が必要です。画面がパソコンやタブレットに比べると小さいので、印刷を前提にした文書は字が小さすぎて読みにくいのです。具体的には、PDFやマイクロソフトWordで作った文書はスマホで見るには適していません。

ではどうすればいいのかというと、「リフロー型」というタイプのデータにすればいいのです。リフロー型にすると、例えば大きい画面では1行40文字で改行されて、小さい画面では1行15文字で改行されたりするのです。つまり、字の大きさは変わらず、1行あたりの文字数が少なくなります。

こうしたリフロー型の資料を作るには、たとえばWordではなくGoogleドキュメントにするだけで充分です。Google系のオフィスソフトは基本的に印刷ではなく電子媒体で使われていることが前提になっているので、いろいろな大きさの画面にも対応できるのです。
なお、ここで言っているのはGoogleドキュメントで資料を作ってからそれを印刷して配布するのではなく、その共有用URLをメールやQRコードや短縮URLなどにしてスマホで見ることです。念のため。

なお、文書でなくプレゼンをそのままスマホで見るのなら、普通は文字が小さすぎることはありません。画面に対する文字の大きさがプレゼンは文書よりも大きいので。ですから、僕は普通プレゼンを共有するだけにしています。

「ペーパーレスに対応できない人のお世話が却って大変かも」
僕自身もエジプト時代にペーパーレスの研修に踏み切ったときは、いろいろ不安がありました。そのうちの一つが「印刷の手間がなくなっても、それ以上に自分で印刷できない人の対応とかでもっと大変になるかも」ということでした。

しかし、蓋を開けて見ると全くそんなことはありませんでした。もしかしたら自分で印刷できないような人もいたかもしれませんが、そもそも資料は目の前のスクリーンに表示されているのですから、困る人はいないのです。

また、もしかしたら参加者同士のコミュニティを育てるのを嫌うタイプの教師にとってはすべてを自分で対応しなければならないようなことになるかもしれませんが、僕は基本的に参加者同士でつながってもらうことを重視しているので、そういう問題を僕のところまで持ってくる人はいません。お互いに気の合う人同士で問題を解決してしまうからです。

ですので、ペーパーレスに対応できない人のお世話が大変ということもまったくありません。

「案ずるより産むが易し。」
以上、アナログな日本語教師の研修会などをペーパーレス化してきた経験からいくつか僕の考えをご紹介してきました。コピーする人員の人件費や、コピー機のリース代、紙などの消耗品の費用など、紙で情報共有するスタイルでは手間もコストも膨大になります。(一番の損失はアナログゆえ検索や整理などの情報技術が使えないところにあるのですが、それは体験していない人には分からないでしょうからここでは触れません)

これが逆にペーパーレス化にコストがかかるような場合だったら簡単に踏み切ることはできないだろうと思いますが、事実は逆です。教室や会場でプロジェクターが使えれば、あとは印刷したい人は自分で印刷するし、できない人は友だちに助けてもらえます。お金は、むしろ、かからなくなるのです。

こうした状況では、失敗しても何のリスクもありません。お金をかけて失敗するのではなく、お金はまったく無駄にならないのですから。予算が必要ないのですから上司のハンコも要らないでしょう。明日と言わず、今日からやってみればいいのです。今日の午後とかじゃなく、思い立った今この瞬間に始めてください。それでうまく行かなかったら、従来の方法に戻ればいいだけですから。(アナログの非効率さに耐えられるだけの予算と時間と忍耐力があれば、ですが) 失敗したとしても、少なくとも「やってみて駄目だった」という知見を得ることはできます。そしてその知見は他の人の役に立つかもしれません。

さて、ここでようやく冒頭のビデオの話になるのですが、MITメディアラボ所長の伊藤譲二さんは、インターネットによる低コスト化と高速化により、最近の成功している人は今までとはまったく違う原理に基づいて行動していると言っています。それが、お金をかけて準備して実施するという従来の方法ではなく、思い立ったらすぐにやってみるということなのです。駄目だったらやめればいいだけなんですから。

伊藤氏はソフトウエアやハードウエアの開発の分野でこれを語っていますが、教育のペーパーレス化でもまったく同じだと思います。パソコンもタブレットもスマホも持っていない日本語学習者なんてほとんどいませんし、いたとしたら自分で印刷すればいいのです。パソコンもタブレットもスマホも持っていなくて更に自分で印刷できないという、存在するかどうかも分からない学習者の不利益を防ぐために膨大な紙と人件費と時間を消費し続けるのではなく、そういう人たちが助け合えるようなコミュニティを作って前に進みましょう。

そして冒険は続く。

【参考資料】
むらログ: wikiこそ「ウェブ2.0と日本語教育」の本命 (2007年の記事)
http://mongolia.seesaa.net/article/34537709.html

Googleスライド(プレゼンテーションソフト)
https://www.google.com/slides/about/

Google ドキュメント(文書作成ソフト)
https://www.google.com/docs/about/

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posted by 村上吉文 at 14:27 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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