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2017年03月17日

「好きを貫け」から10年。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も砂漠の向こうのオアシスに思いを馳せていますか。

さて、本日は僕の家族が3年余りのハンガリー生活を終えて日本へ帰国するという特別な日でもありますが、標記の通り、一般的にも意味のある記念日です。

ご記憶に残っている方も多いかと思いますが、「好きを貫け」というのは『ウェブ進化論』などで有名な梅田望夫さんによる以下のエントリーのことです。これが投稿されたのが今日から数えてちょうど10年前の2007年3月17日。

「直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。」 - My Life Between Silicon Valley and Japan
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070317/p1

リンク先を見れば分かる通り、梅田さんは「金にならなくても好きなことをやれ」と言っているのではなく、「好きなこと」と「飯が食えそうなこと」の接点を探し続けろ、と言っているんですね。しかし、なぜか「好きを貫け」のところばかり取り上げて、「世の中、そんなに甘くない」といっている人が多かった印象があります。

ただ、2015年から日本語の独習に成功した人たちのインタビューをしてきた僕としては、やはり、「好きを貫け」しか成功の方法はないんじゃないかと思います。というのも、僕がインタビューをしてきた人たちは、まるで口裏を合わせているかのように同じことばかり言っているのです。以下に引用してみましょう。

「好きなことや情熱のあることを通して何かを学ぶこと、それが大切。私は勉強しないけどよく学ぶ。みんな勉強、勉強というけど、いっぱいしゃべれない。文法をたくさん勉強するけど、話せない。だから「勉強」しないことが大切。
「勉強」と「学び」は違う。勉強はときどき大嫌い。でも学びはふつうのこと。外に出て、かばんがおしゃれとか、そういうこと。そういう感じで日本語も好きなことでたくさん学びました。「勉強」はしなかったけど。」(スイス・アマンダさん)

「アドバイスというほどじゃないけど、私が自分でよく言っていることなんです。好きなものにちゃんと素直に向かい合わなければならない。あの、それは他人にどう思われても。だから勉強も同じです。好きなことなら何でもがんばれるじゃないですか。だから自分の道にちゃんと進むべきだと思います。焦らずに。恐れずに。努力あるのみです。がんばってください」(カザフ、カリナさん)

「モチベーションを失わないように日本人の友達をつくることを勧める。でも友達を選ぶことも大切。Facebookにもいろいろな人がいる。友だちになるなら、年が近くて共通の話題がある人がいい。変な人がいたら無視する。しつこい人はブロックもする。」(ロシア、アンナさん)

「勉強をできるだけ楽しくすること。嫌になるといい効果がでないと思う。わたしは日本語の音楽を聞いたりお笑い番組を聞いたりとか。漢字が手で書けないけど部分に分解するとかすると楽しく勉強できる。」(スロバキア、サビーナさん)

「日本語学習を諦めてしまう人へのアドバイスとしては「アイドルにハマっちゃえ!」。諦めてしまうのは目的がなかったりするから。僕はアイドルが好きで握手会で話したくて勉強したので。アイドル自体も楽しいし、番組で何をしているかも理解したいし。」(アメリカ、ケンさん)

「大切なのは好きなことを見つけることで、教科書に出てくる順番なんてどうでもいい」(スロバキア、ラドカさん)

「モチベーションを失わないこと。何のために勉強しているかを忘れないこと。」(ハンガリー、ミシさん)

いかがでしょうか。「辛くても歯を食いしばってがんばれ」なんてことは誰も言っていないのです。まさに「好きを貫け」なのです。

上にも書いたように「好きを貫け」には「そんなに世の中甘くない」というような反論がいくつもありました。しかし、それは間違っていると思います。いや、「そんなに世の中甘くない」のは事実だと思うのですが、甘くない世の中だからこそ「好きを貫く」必要があるのだと僕は思っています。理由はまさに上記の冒険家たちが語っているとおりです。

「好きなことなら何でもがんばれる」(カリナさん)
「嫌になるといい効果が出ない」(サビーナさん)

成功した独習者たちの中には、たとえば2年間毎日10時間もアニメを見ていた人などがいます。マケドニアのダヴィドさんですが、彼は日本語の独習を始めてからたった2年でJLPTのN1に合格しました。好きでもないことに、これほどのエネルギーを注げる人がいるでしょうか。まさに「世の中そんなに甘くない」からこそ成功するには膨大な努力が必要で、そしてそのためには好きでもないことを中途半端にやっている暇などないのです。

もちろん、冒険家のみなさんが「飯が食えそうなこと」まで考えていたかどうかは分かりませんし、年齢的にそんなことまで考えていなかっただろうと思うケースも多いのですが、少なくとも「嫌だけど飯の種になるから勉強する」などと考えず、ひたすら好きを貫いた人たちだけが成功したというのが実際のところなのです。

これからどんどん社会は多様化が進み、その多様なそれぞれの分野で高い専門性が問われるようになるでしょう。そして、それ以外のルーチーン化できる仕事はすべて、機械やICT、さらにはAIがこなすようになるものと思われます。

日本語教育の世界を見ても、金太郎飴のように同じ教科書で教える一斉授業は無料か、もしくは格安で学べるe-ラーニングやMOOCやアプリなどに代替されつつあります。ここで駆逐されてしまうのは、好きを貫いて来なかった人たちでしょう。

一方で、好きを貫いて独自の専門性を備えた人は、それを必要とする世界中の人とネットワークの発達により接触できるようになります。従来は同じ地域に住んでいる人しか教えることができなかったので平均的な授業でしか採算が取れなかったのですが、これからは違います。お笑いのネタ限定で日本語を教えることができる人とか、特殊な業界で使われる日本語を教えることができる人などが、世界中からお客さんを見つけられるようになるのです。生き残れるのはそういう人たちです。つまり、嫌でも親や教師に言われたとおりにすることが大切なのではなく、自分の直感を信じて、他の人と違っても、好きを貫くことが大切なのだと思います。

そして冒険は続く。

【参考資料】
「直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。」 - My Life Between Silicon Valley and Japan
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070317/p1

むらログ: スイスの冒険家、アマンダさんインタビュー!
http://mongolia.seesaa.net/article/444812275.html

むらログ: すべてはここから始まった。カザフの冒険家、カリナさんインタビュー!
http://mongolia.seesaa.net/article/435166266.html

むらログ: ロシアの冒険家、アンナさんインタビュー!
http://mongolia.seesaa.net/article/437142079.html

むらログ: アメリカの冒険家、ケンさんインタビュー!
http://mongolia.seesaa.net/article/431589604.html

むらログ: スロバキアの冒険家、ラドカさんインタビュー!
http://mongolia.seesaa.net/article/434614516.html

むらログ: ハンガリーの若き冒険家、ミシさんインタビュー!
http://mongolia.seesaa.net/article/438400475.html

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(明日からこの家で一人暮らしかー。)
posted by 村上吉文 at 15:37 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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