月刊日本語からいらした方はこちらへ!

2017年01月29日

日本語独習者支援モデルの提案

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス



goo.gl/OJgF7p

冒険家の皆さん、今日も北極圏でオーロラの下を歩いていますか?

さて、先週末、コソボに出張に行ってまいりました。
普通、僕の出張というのは日本語教師の皆さんが対象なのですが、コソボにはまだ日本語教育機関が確認されていません。ですので、コソボでは日本語教師のいない国で日本語をどのように普及するかということが課題です。

まあ、このブログをいつもご覧になっていらっしゃる方はすぐに察しがつくかとは思いますが、コソボでは独習者の皆さんに、ソーシャルメディアをはじめとする21世紀のツールを使って自分で自分の学びをコントロールしながら成長しようというセミナーを行ってきました。

ちなみに、この出張のために2015年の9月にコソボの日本語学習者のグループをFacebook上に作り、ほぼ毎日、いろいろな情報を提供してきました。その結果、出張の一週間前には130人ほどのメンバーがこのグループに登録していました。そのうち4名ほどは日本人でしたが、あとはほとんどがコソボ人です。

昨年の夏には、今回のセミナーのプロトタイプになるオンラインコースをFacebookのThe Nihongo Learning Communityでボランティアとしてやらせてもらいました。その後、今度は業務としてコソボ向けにほぼ同じ内容のオンラインコースを9月から今月まで10回で行いました。実は回線速度の問題で、このコソボ向けのオンラインコースはあまり成功したとはいえなかったのですが、却ってそれが現地でのセミナーへの期待を高める効果があったのかもしれません。蓋を開けてみると、セミナーの前日までに予想を遥かに超える88名の申し込みがありました。実は、最初はホテルの15人しか入らない会議室を予約していたのですが、急遽、50人の会議室に変えてもらい、二回に分けてセミナーを実施することになりました。

また、セミナーの日程や場所は、全て上記のコソボ人日本語学習者グループで相談して決めました。企画の段階から参加してもらうというのは、まだ会ったことのない人たちとイベントをするにはとても重要なステップだと思っています。

それで、以下がこの記事でご紹介したいモデルなのですが、セミナーの主な内容は以下の4点です。

1.自分の学習スタイルを知る。
2.自分に合ったオンラインの学習コンテンツ(OER)を知る。
3.日本人とつながる。(PLN)
4.学習環境を作る。(PLE)

これは、今まで「冒険家インタビュー」を通して、学校に頼らずに日本語を学ぶ人たちの体験から考えてみたものです。

「2」の「OER」というのは Open Educational Resources の略で、基本的には無料で公開されている教育用のリソースです。その多くはネット上にあります。日本語学習用のものとしては、スライドを見ていただければ分かりますが、国際交流基金のMinatoや「エリン」などの一連のサイトのほか、NHKや大阪大学などもいいものを出しています。今回はあまり焦点を当てられませんでしたが、スマホ用のアプリも玉石混交でいろいろなものがあります。今回のセミナーではDuolingoを使って英語などを勉強している人に挙手してもらいましたが、ざっと見た印象では半数以上いたのではないかと思います。いわゆるデファクトスタンダードになりつつある印象ですね。

「3」の「日本人とつながる」では、Facebook上の代表的な日本語学習グループである「The Nihongo Learning Community」の管理人の吉開章さんにあらかじめ協力を依頼しておき、コソボからの入会申請をその場で承認してもらい、コソボから「Hajimemashite」「Yoroshiku」などのローマ字で挨拶をしてもらいました。日本時間では午後11時を過ぎていましたが、歓迎する会員もあらかじめ依頼しておいたので、コソボ人1人につき何人もの日本人に歓迎コメントをつけてもらうことができました。

このThe Nihongo Learning Communityは、こうした外部の授業などで課題を提出する先に指定することを管理人が認めている(むしろ推奨している)ので、こうした独習者支援のイベントなどではぜひ協力を依頼しておくべきでしょう。

こうした「学習開始の時点で日本語話者と繋がってしまおう」というのは、冒険家メソッドだけでなく、當作靖彦先生のソーシャル・ネットワーキング・アプローチの中心的な主張だったりもします。また、「最初に繋がる」というのは知識ではない「行動」ですので、ここ数年の大きなパラダイムシフトである行動中心アプローチにも準じています。

「4」にあるPLEというのは個人学習環境です。これはマニトバ大学のStephen Downesなどの研究が有名です。実は、このセミナーでは単なる学習ツールのようなものを紹介しているだけですが、Downes氏の定義ではOERや人とのつながりも含めた広い意味での個人学習環境を意味することが多いです。

なお、スライド上は学習スタイルが最後になっていて、OERが最初でその次にPLNが入っていますが、これは日本で対応してくれる人たちがあまり遅くなってしまうのを避けるためにこういう順序になっているだけで、話の流れとしては上記のリストのように最初に学習スタイルを知るというのがいいのではないかと思います。

特に「Social」の学習スタイルが強い人はこうしたネットワークに最初から深く関わり、逆に「Solitary」が強い人は(この2つのスタイルは相反する場合が多いそうです)、CBLL(Content-Based Language Learning)などに向いているようです。僕の冒険家インタビューのシリーズでは、前者がロシアのアンナさん、後者がルーマニアのジョルジアンナさんやカザフのカリーナさんの例にあたります。(後者の二人に関しては、おそらくAuditoryの学習スタイルもかなり強いものと思っています。)

ところで、国際交流基金が電通と共同で行った香港と韓国における日本語学習者の調査では、教育機関で日本語を学習している数の9倍から12倍(韓国)、15倍から23倍(香港)もの莫大な数の日本語学習者が存在することが分かっています。また、電通による台湾における調査でも機関学習者の12倍から16倍の数の日本語学習者がいることが分かっています。

日本が日本語教育を通して他の国のみなさんと仲良くなるには、既存の学校組織を通す活動に限定する必要はまったくありません。しかし、僕たち専門家の間にもこうした学校組織外の日本語学習者を支援するノウハウが蓄積、共有されているとは言いがたい状況にあります。

その意味で、
1.学習スタイル診断ツールで独習者に自分の学習スタイルを知ってもらう。
2.会場のパソコンなどでOERを実際に体験する機会を提供し、自分の学習スタイルに合ったものを選んでもらう。
3.オンラインで日本語話者と接触する機会を提供し、PLNを育てる手助けをする。
4.日本語がまだできなくても日本語でコミュニケーションし、それを学びとして身に付けるためのPLEを構築する手助けをする。
というモデルを日本語普及活動の新しい一つの形として、ここにご紹介したいと思います。

書いてみて改めて思いますが、やっぱり独習者支援の本質はスキャフォールディングだっていうことですよね。使い古しのアイデアですが(^^)

そして冒険は続く。

【参考資料】
日本語 The Nihongo Learning Community
https://www.facebook.com/groups/The.Nihongo.Learning.Community/

Mëso japonisht në Kosovë. コソボで日本語
https://www.facebook.com/groups/1618971791675549/
(Facebook上のコソボ人日本語学習者のコミュニティ)

むらログ: 学習スタイル診断サイトを活用しよう!
http://mongolia.seesaa.net/article/430460270.html

むらログ: ソーシャル・ネットワーキング・アプローチとは
http://mongolia.seesaa.net/article/371368295.html

【コメントはソーシャル・メディア上の記事別ページヘどうぞ!】
https://plus.google.com/+YoshifumiMURAKAMI/posts/e7cnnXJTxSU
https://twitter.com/Midogonpapa/status/825428444716662784
https://www.facebook.com/murakami.yoshifumi/posts/10211367761931780
posted by 村上吉文 at 04:26 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/446407540
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック