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2016年11月27日

紙の辞書に未来はあるか

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も大海原で大ダコに襲われながら、火薬の詰まった樽に銃弾を撃ち込んでいますか。

さて、先日、Facebook上の「職員室」という日本語教師のグループで香港の野島さんが辞書の使い方をトピックに立ててみんなで議論をしていた頃に、「辞書の編集人として有名な人」と僕が認識していた飯間浩明さんがちょうどツイッターでこんなことを言っていました。



国語の辞書の編纂員がこんなことを公開した場で書く時代なんですね。

【僕の現状】

それで僕も我が身を振り返ってみたんですが、実は僕自身もほとんど紙の辞書というものを使っていません。もう何年も使ってないような気がします。というか、すでに最後に使った時のことを覚えていません。でも、紙でなければ辞書はたくさん使っているのです。といっても電子辞書専用機ではありませんが。

おそらく僕が一番多く使っているのは英語の辞書だと思うのですが、その中でも、たぶん回数で一番多く使っているのはKindleのpaperwhiteという端末に内蔵されている辞書です。英和辞典と英英辞典の両方が入っていて、だいたい同じぐらいの比率で使っていると思います。あまり細かいことを気にしないで急いで読むときは英和辞典です。英英辞典だとその言葉の「説明」を読むことになってしまうので、仮に完全なバイリンガルの人でもどうしても英英辞典のほうが時間がかかってしまうのです。おまけに僕はそれほど速く英語が読めるわけでもないし。

1秒タップするだけで辞書が引けるのも悪くはないのですが、後で書くように実は1秒かかるというのは現代の語学学習の世界ではもう遅い方です。むしろ、Kindleのいいところは辞書で調べた言葉が「単語帳」というアプリに自動的に登録されるところと、その単語帳に出てくる例文が全てKindleで調べた箇所の文であることです。ですから、文脈が分かっている例文しか出てきません。「太郎は花子に・・・」とかいう誰だか知らない人が出てくる例文ではないのです。

パソコンで英文を読むときは「weblioポップアップ英和辞典」というChrome拡張機能を使うことが多いです。普段はクリックしなければ日本語の意味が出ないようにしていますが、時間がなくてたくさん目を通さなくてはいけない時は、クリックしなくてもマウスオーバー(調べたい言葉の上にポインターの矢印を動かすだけ)で辞書が引けるようにします。

ハンガリー語などの英語以外の言語の場合は、もうGoogle DictionaryのChrome拡張機能だけです。これはほとんどの言語に対応しているので、何カ国語も目を通さなければならない人には向いています。

スマホで英語を読むときは、基本的にChromeをブラウザとして使っているので、長押しするだけでその言葉で検索した結果が別窓で画面の下の方に表示されます。ほとんどの場合、その言葉の定義が一番上に出てくるので、その窓を少し上にずらすだけで内容を確認できます。

【日本語学習者の場合】
日本語学習者の場合、日常的にjisho.orgというサイトを使っている人が多いようですが、いちいちサイトを開いて言葉をタイプするのは効率的ではありません。その場合はjisho.org を検索するChrome拡張機能を使うと、その言葉を選択して右クリックして「Jisho.org」を選択するだけで済みます。
ただこれは別窓でjisho.orgを開くので、早くても2,3秒はかかってしまいます。

それよりもっと速くて圧倒的な人気を誇っているのが「rikaikun」です。これは和英しかないのですが、まさに瞬間的に辞書が引けるので、これに慣れてしまうと、辞書をひくのに1秒もかかると重すぎて使いものにならないという感覚になってしまいます。ルーマニアのロマンン・パシュカ先生のYouTubeチャンネルに実際に使っている時の画面が動画で録画されているので、知らない人はこのスピード感をぜひご確認ください。


【今後】
さて、このように辞書というのは既に一つの「モノ」としては存在感をなくしつつあります。映画や音楽がDVDやCDなどのハードウエアから解放されてネットワークでユビキタスにどこでも楽しめるようになったのと似ています。

すでに一部は実現しているように、今後は辞書も同じようにユビキタスに環境に自然に溶けこんで、その存在自体をあまり感じなくなのではないかと僕は思っています。辞書というモノやアプリからブラウザ組み込み型になったことで、かなりそういう形に近づいているとは思いますが、それでもまだマウスを動かすとか、指で一秒タップするとか、意図的な作業が必要であることは否めません。

しかし、実際には外国語の本を読んでいて、よく分からない単語が何度も出てきたら、視線をそこに戻したり、そこで止まってしまったりしますよね。ということは、既にかなり進んできているアイトラッキング(眼球の動きから視線を認識する技術)と辞書が結びつけば、普通に本を読んでいる途中で止まってしまったらその単語の意味を画面に表示するというような仕掛けもすぐに実用化されるのではないでしょうか。僕が調べていないだけで、実は既に誰かが実現しているかもしれませんね。

ところで、辞書をひくのは読む時だけではありませんよね。文を書くときにも辞書を使うことはよくあります。英語でスペルを間違えると自動的に赤線が引かれたりすることがありますが、これも自然に辞書を使っている結果です。

日本語学習者の場合は同音異義語の区別が難しかったりしますが、これも蟻末淳さんが開発した「English IME dictionary for Japanese learners」を使えば、辞書サイトや辞書アプリを立ち上げたりすることなく、入力しながら同時に辞書を参照することができます。

ユーザーの環境の中に辞書が自然に溶け込むという流れは、これまでも着実に進んできましたし、今後も独立したハードウェアに戻るということは僕には考えにくいので、「紙の辞書は死んだ」という飯間氏の発言はごく妥当なものだと思います。というよりむしろ、電子辞書専用機も含めて、独立したハードウェアとしての辞書について2016年のこの時点で「未来があるか」と議論される理由が僕にはちょっと想像できません。

そして冒険は続く。

【参考資料】
Weblioポップアップ英和辞典
https://chrome.google.com/webstore/detail/weblio%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E8%8B%B1%E5%92%8C%E8%BE%9E%E5%85%B8/oingodpdjohhkelnginmkagmkbplgema

Chrome拡張機能 Google Dictionary
https://chrome.google.com/webstore/detail/google-dictionary-by-goog/mgijmajocgfcbeboacabfgobmjgjcoja

jisho.org を検索する拡張機能
https://chrome.google.com/webstore/detail/search-jisho/odedgbgofldomjnodnnjdlagjpmkjhnb

Rikaikun
https://chrome.google.com/webstore/detail/rikaikun/jipdnfibhldikgcjhfnomkfpcebammhp?hl=en

English IME dictionary for Japanese learners(蟻末さん)
http://nihongo.online/index.php/tools/1-englishime

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posted by 村上吉文 at 22:20 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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