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2016年08月25日

【緊急提言】自律学習者への対応を急ごう(台湾の調査を受けて)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


smile~
(写真は台湾のコスプレイヤー)

冒険家の皆さん、今日も鉱山の町で空から降りてきた女の子を守るために空賊と戦っていますか。

さて、すでにお耳にした人も多いかと思いますが、「やさしい日本語ツーリズム研究会」から衝撃的な数字が発表されました。台湾の日本語学習者の調査で、自律的な学習者の数が機関学習者(学校で勉強している学習者)の12倍から16倍もいるということが分かったのです。

先日の僕のオンライン調査でも、日本語教師の63%が独習者は機関学習者の5倍未満だと考えていたことが明らかですので、12〜16倍という数字は多くの日本語教師の予想を上回るものだったと言っていいでしょう。機関学習者の半分ぐらいと答えていた人さえ、12%もいたのです。




【これから時代は自律学習者支援へ】
私たちが学習者中心を唱えるのなら、これまで私たちは学習者の1割にしか注目してこなかったという事実を受け入れなくてはなりません。言い換えれば、学習機関で学ぶという方法は、学習者の一割未満の人たちしか採用していない、かなりマイナーな学習方法であるということを、私たち教員は認識しなければなりません。

それでは私たち日本語教師は、この膨大な自律学習者たちに対して、何をすればいいのでしょうか。

詳しくは10月10日刊行予定の僕の『冒険家メソッド』(ココ出版)を読んでいただければいいのですが、僕たち日本語教育関係者にできることは、主に3つあります。

【一つはアドバイジング。】
どんなアドバイスをすればいいかは青木直子先生の『外国語学習アドバイジング プロのアドバイスであなただけの学習プランをデザインする』に詳しいですね。コースではなく、よろず相談窓口とか単発のセミナーのような形で、日本語学習方法を伝えるのもいいでしょう。
このためには、文型を教えるのが日本語教師の仕事だと思っているタイプの人は、少し考え方を見なおしてみるといいかもしれません。これからは日本語の教え方を知っていることはあまり重要ではなくなり、日本語の学び方を幅広く知っていることが必要になってくるでしょう。
こうした考えにあまり馴染みのない人は、先日僕がご紹介したGeorge Courosの”The Innovator’s Mindset”や、荻野さんがインタビューで挙げていたWill Richardsonの”From Master Teacher to Master Learner”などを読んでみるといいのではないかと思います。僕も英語はあまり速く読めないのですが、両方とも学術書ではないので難解な語彙はほとんど使われていませんし、Kindleなどで読めば1秒で辞書が引けるので、そういう補助ツールを体験してみるという意味でも是非おすすめしたいです。(なお、そうした体験こそが、まさに外国語の学び方として僕たちが自律的な学習者に教えてあげなくてはならないことなのです)

【二つめは教室での自律学習コースです。】
自律学習者の学習スタイルにはさまざまなものがあり、オンラインでのコミュニケーションより、対面でもコミュニケーションを望む人もいます。また、独習を望む人もいれば、コミュニティーで学ぶことを望む人もいます。オンラインよりも対面で学ぶことが好きで、かつ独習よりもコミュニティで学ぶことが好きな学習者には、僕が職場でやっているような自律学習コースを開くと効果的なのではないかと思います。みんな教室に来て自分の学習の進捗状況などを共有した上で、自分の好きな本を読んだり、教員に質問したり、会話グループを作ったりして、帰る前に今日は何を勉強したか、来週までに何を勉強するかを共有するのです。
独習が好きな人や、オンラインで学ぶことが好きな人の中には、「そんなコースのためにわざわざお金を払って家からセンターまで来る人がいるはずがない」と心配するというか、呆れる人もいましたが、実際に申込者は年間を通じて何人もいます。ハンガリーはもともと日本語学習者の数がそれほど多くはないのですが、センターの一斉授業のコースと比べると、初年度と2年次のクラスの学習者よりは少ないものの、3年次、4年次とほぼ同じぐらい、5年次の学習者よりは多いという人数を保っています。
こうしたコースを開講したい教員の皆さんには、上記の青木先生のご著書の他、桜美林大学の『自律を目指すことばの学習 ―さくら先生のチュートリアル― 』や、もちろん10月10日刊行予定の『冒険家メソッド』がおすすめです。

【3つめは学習方法を一斉授業で教えること。】
これはまだ僕もパイロットコースをFacebookの「日本語」グループでやっただけで、業務としては9月からコソボ向けのオンラインコースが初めてなのですが、以下の三つを柱にします。
1.オンライン日本語学習コンテンツの体験(https://minato-jf.jp/ など)
2.学習ツールの体験(ANKIなど)
3.ソーシャルメディアを使って、自分と相性のいい日本人を探して交流する体験
こうした内容が自律学習者を指導するのに必要だと思ったのは、これまでに実施してきた「冒険家インタビュー」で得られた知見によります。

もちろん、学習者の生活にソーシャル・メディアが浸透するようになったのは2006年以降ですから、保守的な人が多い教育界ではまだまだ実践が進んでいるとはいいがたく、今後も改善の余地はあるでしょう。しかし、現時点でもこのような対応は可能であり、今すぐにでも日本語教育界は一斉授業だけの現状を根底から見直す必要があるのではないかと思います。

以上、台湾の自律学習者の調査を受けての緊急提言でした。

そして冒険は続く。

【参考資料】
やさしい日本語ツーリズム研究会のプレスリリース
https://drive.google.com/file/d/0B_YYwiD-_l6lVndhRUNuY1YxRGc/view

Facebook「日本語」グループでの自律学習方法を教えるオンラインコース(グループ外からは見えないかもしれません)
https://www.facebook.com/events/1746815242224999/



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posted by 村上吉文 at 15:48 | TrackBack(0) | 主張 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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