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2016年08月10日

George Couros『The Innovator’s Mindset』

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


海と本とサンダル




冒険家の皆さん、今日も帆船のマストに登って水平線の向こうに思いを馳せていますか?

さて、おかげさまで一週間あまり、職場を離れてゆっくり休暇を取ることができました。
休暇中はネットに繋がらない環境にいたので、観光などの他に、集中して本を読む時間が取れました。

今回は"The Innovator’s Mindset: Empower Learning, Unleash Talent, and Lead a Culture of Creativity"をKindleで読みました。僕も英語はそれほど速く読めないのですが、この本はかなり読みやすいです。内容も専門的ではありますが学術書ではないので、ハリー・ポッターやハンガー・ゲームなどの英語表現よりずっと簡単です。

お値段は、プリント版は2715円とちょっとお高いですが、Kindle版は1199円ですし、月980円のKindle unlimited に登録していればもちろん無料で読めます。(ちなみに僕はUnlimitedには登録していません)

非常に面白かったので、読みながらハイライトした部分を中心に、本の内容をご紹介しますね。なお、Kindleではハイライトした部分をまとめてメールに送ってくれる機能があり、いちいちキーボードで打ちなおしたりする必要がないので、こういった読後の振り返りには非常に便利です。

著者George Couros氏は現在カナダのアルバータ州エドモントンに在住で、これまで教員、校長を経て今は日本でいう教育委員会のようなところで「Division Principal of Innovative Teaching and Learning」という仕事をしていらっしゃいます。校長の経験者というと日本ではかなりご高齢な方を想像されると思いますが、写真を見るかぎり、30代か40代ぐらいに見えます。Twitterで@gcourosとして活発に発言されていて、僕がこの本を読もうと思ったのもTwitterでの各種の情報発信に触れてからのことです。

なお、以下に出てくる「位置情報」というのは紙の本でいう「ページ」のようなものです。電子書籍では文字を拡大したりできるのでページが固定されていないため、本の中の特定の箇所について言及するときにこういう言い方をすることがあります。

1.【現代の教育制度への批判】

引用は前後しますが、著者は現代の画一的な教育制度を鋭く批判しています。

位置No. 3153
Textbooks are symbols of centuries of old education. They’re often outdated as soon as they hit students’ desks. Acting “by the textbook” implies compliance and a lack of creativity.
「教科書は何世紀もの古い教育の象徴だ。学習者がそのページを開くときにはすでに時代遅れになっている。「教科書通り」の行動は従順であることと創造性がないことを示唆する。」

位置No. 3020
エリカという高校生の卒業スピーチが引用されています。以下のリンクで全文が読めますが、これはすごいです。自分が首席になったのは創造性も自主性なく言われたとおりに課題をこなしていただけで、優秀な奴隷であることの証明にすぎないと言い切っています。本人はそのつもりはないのかもしれませんが、このように現代の教育制度の問題点を鋭く指摘できる視点を持っているというのはすごい才能で、彼女は単なる奴隷以上の役割を社会において果たしてくれるものと思います。ただし、ここで指摘されている教育制度への批判を僕たちは重く受け取らなくてはならないでしょう。
http://americaviaerica.blogspot.hu/2010/07/coxsackie-athens-valedictorian-speech.html

位置No. 418
“In our world today, what is a student more likely going to need to be able to write: an essay or a blog post?”
「現代の世界で、生徒たちは(入試以外に)もっとも書けるようになる必要があるのは何だろうか。小論文? それともブログ?」
もちろん「ブログに決まっているよね」という文脈なのですが、自分でブログを書いていない人には伝わらなかったりするかもしれませんね(^^) ブログを書くことによって自分が成長する理由などもこの本では何度も触れられています。例えば僕がこの本を読んでそのままにしておく場合と、こうしてブログにまとめる場合では、どちらが僕の勉強になるでしょうか。

位置No. 1916
If we are only accessing the same information that previously existed in textbooks and handing in assignments with this technology, computers are no more than the equivalent of $1,000 pencils.
(中略)In the same way, throwing a bunch of high-tech devices into a classroom, with no shift in mindset on teaching and learning, is cosmetic. There’s no depth, no real change.
(中略)Technology can actually be transformational, and it provides opportunities that didn’t exist before.
(中略)In the world of education−where resources are often scarce−not understanding the potential of a device leaves us continuing with traditional learning but at a higher cost.
 教育と技術に関して非常に重要な指摘として僕も同感なのですが、アナログな教育観のままデジタルなツールを使っても「1本10万円の鉛筆を使っているだけ」なんですよね。たとえばFacebookなども宿題の提出と教師からの連絡などに使うだけでは従来の教室と何ら変わらないので(それでも教室外でそれが可能になったというだけでも価値はありますが)、Facebookで学習者が世界中の人と繋がることができるようにしなければ、結局、古い教育概念のままコストだけかかるだけで終わってしまっているように思います。
 著者は「技術は実際に世の中を変える力を持っており、それ以前には提供できなかった機会を提供できるようになった」と書いています。ここは、「技術は単なるツールにすぎない」という自分の主張への補足としての文脈があります。技術はツールにすぎないので教育観が変わらなければ意味がないのですが、その一方で技術があるからこそ新しい教育観による教室運営が可能になったという側面があるわけです。

位置No. 2059
If a kid stabs someone with a pencil, he might be writing with it again by the end of the school day. Yet if there’s a cyberbullying issue with one student, some schools respond by blocking social media altogether. It seems like quite an overreaction.
 これも日本でもありそうな例ですが、教育界の技術への偏見に著者もずいぶん我慢を余儀なくされているようです。「こどもが誰かを鉛筆で刺しても、彼はずっと鉛筆を使い続けることができるだろう。しかし誰か1人ネットでのいじめをしただけで、全校の生徒がソーシャルメディア禁止になってしまう。これは過剰反応だ」

位置No. 2510
There are many reasons why we don’t model the learning process as adults, but one of the biggest ones is ego. We feel like we have to be the “experts” instead of co-learners. Administrators can show no weaknesses in front of teachers. Teachers and parents can show no weaknesses in front of children.
 カナダの教育界も日本と同じような病根を抱えているのだなと思えるのはこんな描写です。
「大人が自分の学びの過程のモデルになることができない理由はたくさんあるが、一番大きい物一つはエゴだ。運営者(校長とか?)たちは教師に弱みを見せたくないし、教師は子どもたちに弱みを見せたくない」
 ただ、これは日本語教師の中の日本語母語話者にとってはそれほど大きな問題ではないかもしれません。というのもハンガリーで日本語を教える僕の場合は、僕がハンガリー語を学ぶ過程を共有しても、もともとハンガリー語が母語である彼らより上手であるはずがないからです。それよりむしろ、外国語の学び方は教員である僕たちのほうが詳しいに決まっていますから、その学び方のモデルとなることが重要なわけですね。(日本語が母語の日本語教師で、外国語の学び方を学習者より知らない人は、自分の職業を再考した方がいいと思います)

位置No. 1043
If leaders spend the majority of time trying to manage and protect people from their own mistakes, not only are they wasting time, but they are losing the confidence of those they serve.
 「もし指導者がその時間の多くを人々が間違いを起こさないようにしているのなら、それは時間の無駄であるだけでなく相手に自信を失わせることにもなっている」


2.【進んでいるカナダの教育現場】

ここまで著書による教育制度への批判をご紹介しましたが、その一方で本書の中で触れられているカナダの教育現場の様子からは、日本よりずっと先進的な試みが普及していることがうかがえ、非常に羨ましいです。

位置No. 580
A mantra that’s often repeated when we talk about innovation in education is that failure is an important part of the process.(中略)But even more important to the process are the traits of resiliency and grit.
 「教育におけるイノベーションについて話すときに繰り返されるのは、失敗は(成長の)過程の重要な一部だということだ」 
 この本では、でもそれだけじゃ足りないよね、と続くのですが、それ以前に日本では失敗は減点の元になってしまうのが普通ですよね。著者の主張は、失敗を通して、失敗に負けない心とGritを育てることにあるとのことです。

位置No. 1000
Today, this teacher’s initiative may not seem innovative; communicating through social media is the norm for many educators.
 ここもカナダは進んでいるというか、日本の教育がいかに遅れているかを如実に示しているところ。
 「今日ではこの教師のソーシャルメディアを使ったコミュニケーションはイノベーションとは見られず、標準にすぎない」
 日本ではまだまだソーシャルメディア禁止なんていうところが少なくありませんし、教育的効果に気づいて推奨している人なんてほとんどいませんよね。

位置No. 1022
 しかし、そこまで来るにはカナダでもやはり簡単ではなく、「なぜあの教師以外はソーシャルメディアを使わないのだ」という苦情が相次ぎ始め、結果的にソーシャル・メディアの利用を校長が中止させなければならなかったという例もあったそうです。
The great teachers I work with also wanted to use the tool, and parents began to ask why I was the only one using it. This made my principal need to address the situation, and the final solution is closing it down.
(中略)Years ago, another educator shared a similar story, explaining that she wanted to try something new called “blogging.” The teacher asked her principal if she could try it out and, at the time, was told “no.” The reason? The principal was concerned that if the venture succeeded, everyone on staff would be expected to do it.

位置No. 2565
EdCamp has been sweeping the entire world and is a great way for educators to have ownership of their learning.
 これもうらやましいと思ったところの一つ。彼は「EdCcampが世界中を席巻している」なんて書いていますが、日本語教育の世界でEdCampやってるところなんて聞いたことありませんよね。EdCampは自分たちの学びに主体性を持つすぐれた方法だと著者は述べています。


3.【実践例】

ここからは、具体的な教育現場の実践例を幾つかご紹介してみたいと思います。

位置No. 457
"And although the main objective was to focus on plant growth, these six- and seven-year-old students also learned about their digital footprint and about what to post−and what not to post−online."
 教師の活動例として紹介されていたInstagramのアカウントですが、ここでは植物の成長の様子が記録されています。最新の写真は、それを食べたらしい料理の様子や、サラダのレシピなどが載っています。著者によるとメインの目的は植物の成長だったにも関わらず、6−7歳の子供たちはデジタルフットプリントと、何を投稿し、何を投稿してはいけないかも学んだということです。

位置No. 1292
The notion of “Genius Hour,” which is an idea that has spread throughout schools all over the world, came about because educators noticed what was going on outside of schools and modified those ideas to meet their students’ needs.
 「Genius Hour」というのはカナダなどでは「それが何なのか」を説明する必要のないほど普及しているらしく、この本でも説明がほとんどないのですが、検索してみると自律学習の一種で夏休みの自由研究のような成果物を共有するタイプの授業のようです。授業と言っても一斉授業ではなく自律学習なのでみんな違う内容に取り組んでいるわけですが。ツイッターなどでも最近はよく見かけますね。

位置No. 2240
The “whole child” approach might meet the same writing and reading goals by having students use their blogs as portfolios of their work. The students write their initial entries and are then encouraged to comment on five other classmates’ blog entries. Instead of only writing once, the students are now writing at least six times, more when they respond to comments on their own blogs.
 これは日本ではアナログな「書き込み回覧作文」などとして実施されていますが、それをブログでデジタル化するとお互いに読み合い、コメントしあうことができるようになるという例です。書き込み回覧作文だと、フィードバックにかけられる時間が短すぎるんですよね。ブログの場合は複数の学習者が同時に同じ記事を読むことができるので、時間に追われる心配がありません。その分、フィードバックの数自体は減少しますが、質が高くなるわけです。

位置No. 2545
Twitter’s 2014 release of the ability to post thirty-second videos inspired me to initiate #EDUin30, where I would ask a question through a thirty-second video prompt, and others from around the world would reflect and respond.
 これも面白い実践例の一つですが、著者が30秒の動画で問いを投げかけて、それに対して30秒で振り返り、回答する「#EDUin30」という企画もあります。以下でいろいろな教員の話している30秒ずつの動画を見ることができます。https://twitter.com/search?f=videos&vertical=default&q=%23EDUin30


4.【印象的なエピソード】

実践例というよりエピソードとして非常に印象に残っているものもいくつかあるのでご紹介します。

位置No. 688
Since she was new to Twitter, I showed a video called “Twitter in 60 Seconds” to give her a quick, introductory explanation of how teachers can use Twitter. A week later, Lisa sent me the following tweet: “@gcouros you inspired me to do this lesson−here is one of the products!”[28] She included a link to a student-produced YouTube video titled “Mitosis in 60 Seconds.”
 この本には刺激的なエピソードがたくさん出てくるのですが、中でも非常にインパクトがあったのはこれ。
産休後に現場に戻って「細胞分裂」を教えたらすっかり時代遅れになっていることを感じてしまった教師に、著者George Couros氏が「ツイッターを使ってみれば?」と提案して、その時に紹介したのが「60秒で分かるTwitter」という動画。
 そして、一週間後にその教師が著者に送ってきたのが、自分たちのクラスで作った「60秒で分かる細胞分裂」というYoutube動画。感動的ですよね! なお、クラスの誰も落第しなかったのはこの時が初めてだったそうです。その時のツイートがこちらです。 https://twitter.com/lisat_jones/status/527809537164988416

位置No. 1326
I then tapped him on the shoulder, and he looked at me, surprised, and mouthed the words, “I’m deaf.” As we drove, I thought about how technology had provided a great opportunity for this man to create a career for himself.
 Uber(ネットタクシー)の運転手が聾唖者だったというエピソードも非常に印象的でした。

位置No. 1346
As I sat beside him and marveled at what he was creating, I asked him how he learned how to use the program. He looked at me as if I was crazy and responded with one word: YouTube.(中略)YouTube has become the biggest library of information in the world.
 こちらは中学2年生が自動車を設計するためのソフトを使いこなしているのを見た時のエピソード。CADでしょうか。どうしてこんな難しいソフトが使えるのか聞いたら、バカでも見るような顔で「YouTube」と言われたそうです。

位置No. 1908
what really struck me about this video is how, before children even walk into a school, they have both the opportunity to learn from and teach others. Technology invites us to move from engaged to empowered.
 著者の姪が4歳の時に作ったコスメのチュートリアル動画のエピソードも印象的でした。学校に行く年齢にもなっていない子どもが、学ぶだけでなく教えることもできる時代なんですね。技術は他者に関わることだけではなく、そういう力を与えることもできるわけです。ちなみに、この動画はこちらでご覧になれます。https://www.youtube.com/watch?v=FfBSvEMob5g

位置No. 2893
Maddisyn shared an inspiring message with others around the world and is learning that her voice matters. Within twenty-four hours of her post being published, the author commented to Maddisyn (a grade four student at the time):
 これも印象的なエピソードの一つですが、小学校の4年生がある本の書評を書いたら、その本の著者が24時間以内に御礼のコメントをしてくれたということです。僕も『ウェブ進化論』の梅田望夫さんからブログをブックマークしてもらったことがありますし、この本の著者Couros氏に簡単な感想をツイートしたら数時間後に返事が来ました(https://twitter.com/Midogonpapa/status/762191692250447872)。以下のMaddysinちゃんは4年生だったから珍しい事例だとは思いますが、ブログで自分の本について触れられていたらコメントするという著者の方は少なくありませんし、Google AlertやRSS配信などでリアルタイムに自分の著書についての書き込みを把握することも簡単にできるようになっていますので、皆さんにも積極的に本の感想などをシェアすることをおすすめしたいと思います。


5.【提案】

これまでに実際に行われた実践例とは別に、今後このようなこともどうだろうかと提案している中にも、いくつも面白いものがありました。

位置No. 634
For example, for students who are trying to share their understanding of any curriculum objective, is writing it down every time the only way they can show what they understand? Could they create a video, share a podcast, create a visual, or do something else?
 著者は学習者の多様性も重視していて、たとえば自分の理解を示すために、レポートを文字で表現するだけでなく動画やポッドキャスト(ネットラジオのようなもの)でもいいのではないかと提案しています。実際に学習環境にはいろいろあるので、成果物が文字中心である必要もないわけですよね。

位置No. 1615
If I were in the classroom today, I still wouldn’t be the best person to teach science, but a scientist might be. And that’s where connected learning comes in.
(中略)Another way we can connect is through social media, which makes it possible for students to get feedback from others.
(中略)Think about it: From whom would you rather learn about space? An astronaut or a teacher? The answer seems obvious. We want to learn from the experts. Since that’s true, let’s take advantage of technology and facilitate those connections.
 この本で強調されていることの一つが「つながること」です。上記の例は僕も本当に同感なのですが、苦手な分野はどんどん専門家にアウトソースしてしまえばいいんですよね。日本でも古くから「餅は餅屋」と言われてきました。

位置No. 2421
Two high schools in the same district used the same hashtag to show and share their work. The collaboration between the schools was beneficial to the teachers and, more importantly, the students.
 ハッシュタグのオープンで競争的で協働的な教育目的の使い方の一つとして提案されているのがこれです。二つの学校で共通したハッシュタグを決め、そこで学習者の成果物などを共有するのです。面白いですよね。当たり前すぎて著者は文中で触れていはいませんが、「いいね」やRTなどの数が成果物に対する評価が数値化されますから、それを利用することもできますね。

位置No. 2431
Using a hashtag is a simple way to create connections between teachers in our own buildings.
(中略)What if all teachers tweeted (using their school’s hashtag) about one thing a day that they did in their classrooms and took five minutes to read other teachers’ tweets? Imagine the positive impact that simple action would have on learning and school culture.
(中略)My own school district uses the hashtag #PSD70.
 そして著者は自分の勤務する学校で一つのハッシュタグを決めることを提案しています。そして、もし先生がみんな毎日一つだけでいいので振り返りのツイートをして、5分でいいから他の人のツイートも読むようになればどれほどいいだろうと書いています。彼の学校で使っているハッシュタグは「#PSD70」だそうですが、確かにいつも一緒に働いている同僚とこんな情報交換ができればすごいなあと思います。
https://twitter.com/hashtag/psd70?f=tweets&vertical=default


6.【教師の役割】

こうした実践や提案の背景には、教師の役割が大きく変わったという認識があるようです。

位置No. 986
As leaders in education, our job is not to control those whom we serve but to unleash their talent.
「教育の指導者としての仕事は、相手をコントロールすることではなく、その才能を解き放つことだ」
 この本の副題にもあるとおりですね。

位置No. 2381
My intent is to help these teachers see that what they are doing, even if it seems commonplace to them, could be extremely helpful or insightful to someone else. Derek Sivers illustrates this point in a beautiful, short video titled, “Obvious to You. Amazing to Others.” (Go watch it on YouTube.)
 人はなかなか自分が得意なものって気が付かないんですよね。上の方にも出てきた教師の役割(子供たちの才能に気づかせて解き放つこと)にも関連しますが、自分では普通だと思っていることが他の人から見れば参考になったというようなことがいくらでもあります。
この動画はこちら。https://www.youtube.com/watch?v=xcmI5SSQLmE

位置No. 3000
In eighteen years of school as a student, writing paper after paper, I never once saw myself as a writer. But when I finally began to explore my own passions and started to deepen my own learning, I discovered that I actually enjoy writing. And only after completing a book and almost 1,000 blog posts am I starting to see myself as a writer.
 僕にとっては非常に刺激的なこの本の著者は、ご自分に書き手としての才能があることを知らなかったということで、本を書き始めるまで自分が書くのが好きだと思ったことがないそうです。そして、自分にそういう才能があることに気づいたのはブログ記事を1000以上も投稿した後だったとか。
 僕自身はもともと書くのは嫌いではないのですが、同じようなことは走ることについて経験したことがあります。学校の時も持久走などがありましたが、実は楽しかったとか気持ちよかったとか学校で思ったことは一度もないんですよね。本当に「走るのって気持ちいいな」と思ったのは、24歳になって協力隊の訓練所で自分のペースで走ってみてからです。学校ではタイムを測ったりするばかりで、走ることを楽しむという発想はまったくありませんでした。でも、健康を維持するためには、速く走れるようになることよりも、楽しく走れるようになったほうがずっと効果的でしょう。教師に言われて走っているだけの人は卒業したら走らなくなってしまいますから。学びもそれと同じだと思います。

位置No. 3006
The question I have, though, is why didn’t I see my own passions and talents earlier? More importantly, as an educator, how do I help students see their gifts?
 著者は続けて、どうして自分はもっと速く自分の情熱と才能に気が付かなかったのだろう、教育者として子供たちがそれを見つけるのをどうやって支援すればいいのか、と問いかけます。
 僕自身は今は年少者教育に関わっていないので、むしろ日本語教師になりかけたばかりの人などについてよく考えることがあります。ITエンジニアだった人が日本語教師になったら当然ITエンジニアに対する日本語教育にかけては一般の日本語教師よりも高い能力を発揮することができると思うのですが、まだ日本語教育の業界の中のことをよく知らない場合は、そういう自分の才能が活かせる現場が存在すること自体を知らなかったりするんですよね。
 年少者が対象の場合は上記の“Obvious to You. Amazing to Others.”の通り、自分が普通にできることが他者にとってはそうでないことにそもそも気づいていないこともあるので、さらに簡単ではないでしょう。この本の別の箇所で触れられている「Strength Finder」などのツールで年少者にも使いやすいものが充実することが望まれますね。
 実は学習方法にも同じことが言えて、僕はよく学習者に自分の好きな学習スタイルを知ってもらうための自己診断ツールなどを紹介することがあります。


7.【その他】

上記の実践例や提案、エピソードなどには該当しませんが、勉強になったところや印象的だったところを以下にご紹介しておきます。

位置No. 794
Social scientists have identified something called the audience effect−the shift in our performance when we know people are watching.
 読者を意識すると作文のレベルが上がることは自分の経験から知ってはいましたし、それを元にした実践などもしてきたのですが、それに「audience effect」という名前があることは知りませんでした。検索してみると日本語でも「観客効果」という用語があるみたいですね。実践例のところでご紹介したブログなどがまさにこの例ですよね。

位置No. 1592
That’s why author and blogger Howard Rheingold emphasizes the importance of “crap detection.” He explains, “It’s up to you to sort the accurate bits from the misinfo, disinfo, spam, scams, urban legends, and hoaxes. ‘Crap detection,’ as Hemingway called it half a century ago, is more important than ever before.”
 こうした時代に必要になってくるのが、情報の価値を評価できるネットリテラシーですよね。この本では「Crap Ditection」という表現が使われています。僕も教育上の問題だけでなく、一般社会人の常識としてもう少しネットリテラシーが浸透しないと、デマに踊らされたり、社会的に深刻な問題が多すぎるんじゃないかと思っています。

位置No. 2345
Liz Wiseman and Greg McKeown explain in their book, Multipliers, “It isn’t how much you know that matters. What matters is how much access you have to what other people know. It isn’t just how intelligent your team members are; it is how much of that intelligence you can draw out and put to use.”
 技術について強調していても、著者は人との関係性を非常に重視していて、「教育で重要な三つのことは、関係性と関係性と、そして関係性だ」というような表現もこの本には何度も出てきます。上記では「特定のことについてどれほど知っているかは重要ではない。他の人が知っていることにどれほどアクセスできるかが重要だ。」というLiz Wiseman and Greg McKeownの言葉を引用しています。

位置No. 2357
I quickly learned that the best way to become a better educator is to have access to other teachers.
 僕は地域の先生がたのネットワークづくりなどに取り組んでいるのですが、その理由がまさにこれです。
「私は、よい教育者になるためのいちばん良い方法は、他の教員とのアクセスを持つことであることにすぐに気づいた」

位置No. 2361
Will Richardson, a provocative thought leader in education (who I did not know at the time),
 僕がよくこのブログでも引用しているウィル・リチャードソンとの最初の出会いも触れられています。それまで著者はほとんどシェアというものをしていなかったらしいのですが、彼に「君はシェアといういものをしないのかね?」と問われてから、考えが変わったとのことです。


さて、本日はちょっと長くなってしまいましたが、"The Innovator’s Mindset"をご紹介しました。
著者のCuoros氏のTwitterはこちらです。僕もフォローしていますが、おすすめですよ!
https://twitter.com/gcouros

そして冒険は続く。

【参考資料】

http://amzn.to/2aRL7vV

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https://twitter.com/Midogonpapa/status/763237689210638336
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posted by 村上吉文 at 13:32 | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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