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2016年04月25日

ロシアの冒険家、アンナさんインタビュー!

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もマンモスの背に乗ってシベリアの大氷原を横断していますか?

さて、Facebookの「The nihongo learning community」で最近会員になったばかりのAnna Melnikovaさんが独学でJLPTのN1に合格しているというので、その冒険談を聞いてみました(吉開さん、お知らせありがとうございました)。彼女も以下の点で典型的な冒険家です。

・主体的にオリジナルの学習方法を採用している。
・早い時点から日本語話者とソーシャルメディアでコミュニケーションしている。

その上で今回僕が驚いたのは、高校3年生といういわゆる「臨界期」をかなり過ぎた時点から日本語学習を始めているのにも関わらず、初級の段階からほとんど教科書を使わずに日本語の習得に成功しているという点です。カザフのカリナさんのように10代の早い時期からアニメを大量に見ている人がネイティブに近い習得過程を経て日本語をマスターする例はそれまでの言語習得理論からも(日本人が全くいない地域でそれが可能であるという点を除いて)それほど珍しい例ではないと思うのですが、チャットのような文字中心のコミュニケーションを通して結果的には体系的な語彙や文法を身につけることができるというのは、なかなかすごいことなのではないかと思います。

ただ、ここで思い出しておきたいことは、當作靖彦先生のソーシャル・ネットワーキング・アプローチで言われる「畳の上で泳ぎ方を教えるのではなく、まず海に放り込んでしまえ」という手法です。つまり、従来の
・まず言語知識(語彙や漢字や文法)を学ぶ
・学んだ知識を覚える
・覚えた言語知識をコミュニケーションに利用する
という順番ではなく
・まずコミュニケーションする
・そのために必要な言語知識をその場で調べる
・役に立ったら覚える
という順番になっているのです。(この点については、以前「使ってから覚える学習法について」という記事をこのブログに書いたことがありますので、参考記事のところをご参照ください。)

このためにはもちろん、時代背景としてブラウザ組み込み型の辞書や、機械翻訳などのようなほぼリアルタイムに使えるツールの登場があります。まさにソーシャルメディア時代の自律的な語学学習者、つまり冒険家の学習方法ですね。

それでは、以下にアンナさんとのインタビューのまとめをご紹介します。これはあくまでも要約なので、実際の会話に忠実な文字おこしではありません。実際の会話をお聞きになりたい方は、上の埋め込み動画をご覧ください。

【アンナさんってどんな人?】
名前:アンナさん
ロシアのサンクトペテルブルグに住んでいる大学4年生。
大学では日本語の授業もあるがN4,N3だけなので面白くない。
専門は地域研究。アジアやアフリカの政治や地理や経済などを勉強している。
日本も含まれるがアフリカや中国や韓国などについても勉強した。
JLPTのN1に合格している。日本に一ヶ月の短期留学をしたことがある。

【日本語を勉強しようと思ったきっかけは?】
よくみんなに日本語勉強のきっかけはアニメだと決めつけられるが、私の場合は違う。
日本に興味を持ったきっかけは地理だ。日本地図を見たときに形が面白くて興味を持った。この本の地図を見た(スマホに保存してある画像を見せる)。これが人生で初めて見た日本地図だった。ロシアの古い百科事典に載っていた。
日本は名前しか聞いたことがない国だったけど、形がこんなにきれいだったのかと思った。

【日本に興味を持って、最初にしたことは?】
日本のことをいろいろ調べて、いい国だと分かってから日本に住みたいと思った。それで日本語が分からないと困るだろうから勉強しようと思った。大学を卒業したら日本に留学して就活しようと思っている。

【冒険の地図は?】
平仮名さえ知らなかった時は実家の町に知り合いの日本語の先生がいたので、その先生から平仮名と片仮名だけ教えてもらった。その時の教科書は、その先生の先生が作った「子供向けの日本語」という教科書だった。イラストとか日本についての情報が書いてあった。ロシア人のためにロシア語で書いてある教科書だった。でも内容は平仮名と片仮名だけだった。
そのあと「みんなの日本語」という教科書を少し使ったがあまり面白くなかったからすぐにやめた。簡単な漢字の上にもルビがあっていらいらもした。
教科書らしい教科書はそれほど使っていない。いろいろなサイトを見た。勉強が好きじゃないから教科書を見ないでネット上の情報を見た。

【冒険の仲間は?】
最初から日本人と話した方がいいと思ったので、日本人の友達を探したり、日本語でブログを書いたりした。
探すのに使ったのはFacebookやVK(ロシアでいちばんユーザー数の多いSNS)。日本語を勉強する人のコミュニティがたくさんあって、そこで日本人とたくさん知り合った。ameba.jpでも友だちを作った。そこでブログも書いたりしていた。ブログには趣味とか日常とか、特に好きな音楽について日本語で書いていた。アメーバピグというキャラが作れるサービスもあって、そこで会ったり話したりチャットをしたりもできた。ブログにコメントをくれる人はいろんな人。自分からも積極的に多くの人を友達に追加したりした。アメーバでお互いに友だちになったりした。でもブログは飽きたのでもう削除してしまった。

【教科書がなくても文法は勉強できるのか】
自分が記事を書くときに何かの表現をどのように言えばいいか分からない時に、そのための文法をネットで勉強した。(つまり、まず文法を勉強してから書くのではなく、書くことが先にあって、そのために必要な文法を勉強した。)

【VK、Facebook、アメーバの他に便利な道具は?】
言語交流のためのアプリは好きじゃないからぜんぜん使わない。日本人と友だちになるためであって、勉強のためだけの人とは知り合いたくない。
AnkiとかLang-8は使っていない。

【認知スタイル】
スカイプもたまにするがLINEでチャットがするのが多い。たまにLINE電話も使うが、親しい友達は一桁。親しくない人も入れたらもっといるが100人よりは少ない。
チャットする時間は、即レスするので、朝から夜まで1時間おきに話してる。日本語でツイッターも使っている。Facebookは先生や研修に行っている会社の人と連絡する手段なので友達とは話さない。

【日本語を勉強していて、困ることはありますか?】
語彙を増やすことに困っている。集中力が低くて記憶力も悪いから新しいことを覚えるのが苦手。JLPTのN1に受かったのはたくさんチャットをしたりしたから。でも教科書はほとんど使わなかった。日本では「総まとめ」の教科書を買ったけど、ほとんど使わなかった。
でも朝日新聞やNHKの記事は毎日読んでいる。難しい文章でも興味がある記事なら読む。政治とか最近の大地震についての記事も読んでいる。語彙の覚え方は、難しい言葉が出てきた時にその場で調べること。コピペしてGoogleで検索。コトバンクやGooなどが出てくる。日本でロシア語の入っている電子辞書も買ったが、普通はパソコンを使っている。

【訪日経験】
日本には一ヶ月の留学を二回した。教室でみんなと一緒に勉強するスタイル。教科書で何時間も勉強するのは辛かったけど短時間にたくさんの勉強ができたのはよかった。ずっと座って同じことをするのが辛かった。(日本人と交流するのは勉強だとは思っていないが) 1日に4時間も勉強があったし休憩も短くて休めなかったから疲れた。ロシアで地域研究の勉強をしているときは寝たり携帯をいじったりするから辛くない。その間も日本語でチャットしたりする。

【その情熱はどこからくるの?】
友だちができて、その友達と色々なことを話したいから、だから勉強しなければいけないと思ったし、日本に行きたいし、日本語が分からないと生活できないからモチベーションをあげた。
好きなのは日本の人自体。国民性が好き。日本の生活の便利さ、安全さ。気候もロシアより暖かいこと。いろいろある。

【外国語教師はもう必要ないと思いますか?】
そうは思わない。先生が必要かどうかは時代じゃなくて人によるのではないか。何でも人に説明してほしい人とかいるから。
たとえば何か文法があってそれをそのまま使う人もいるし、由来や構成なども説明してもらいたがる人もいる。でも私は説明がなくてもそのまま受け入れる。
わたしは先生に頼らずにJLPTのN1には合格したが、ずっと先生と勉強していたらもっと早く上達していたと思う。いつもダラダラしていたから早く上達しなかった。
ちなみに、最初に地図を見て日本語に興味を持ったのは12,3歳の頃だが、勉強し始めたのは高校3年の時だったと思う。合計5年ぐらい勉強している。
先生と勉強した日本での体験は辛かったが、1日4時間じゃなくて、たとえば1時間か2時間ぐらいだったらちょうどよかったと思う。

【他の冒険家にアドバイスをお願いします】
モチベーションを失わないように日本人の友達をつくることを勧める。でも友達を選ぶことも大切。Facebookにもいろいろな人がいる。友だちになるなら、年が近くて共通の話題がある人がいい。変な人がいたら無視する。しつこい人はブロックもする。

そして冒険は続く。

【参考資料】
むらログ: ソーシャル・ネットワーキング・アプローチとは
http://mongolia.seesaa.net/article/371368295.html

むらログ: それは人間であり教材ではない。もしくは、使ってから覚える学習法について。
http://mongolia.seesaa.net/article/371875444.html



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posted by 村上吉文 at 14:07 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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