2007年05月29日

映画教材選択の悩み

映画「有頂天ホテル」のチャプター23なんですが、これは教材として非常に惜しいところです。授業で扱えれば非常に素晴らしい要素があるのに、たった一点だけの欠点で、使えません。

問題のシーンは松たか子扮する客室係ハナが、宿泊客の振りをしつつ、その宿泊客の交際相手の息子と話しているうちに、宿泊客に同情してしまうというシーンです。

何が素晴らしいかというと、相手に「不思議な言い回しをするな」と言われてしまう日本語表現。別人の振りをしているので、当然、自分のこととして言わなければならないのですが、その別人について
だんだんかわいそうになってきた。
とか
満たされない気持ちを、そうやってごまかしているだけなの。何で分かってあげないのよ。
とか第三者的な表現をしてしまう部分があるんですね。このあたりを学生に考えてもらうのは、とても楽しそうな気がします。

で、何が問題なのかというと、その「不思議な言い回し」について、もう一人の登場人物(交際相手の息子)が「日本の方ではないのか?」と聞いた上で「オーライ、シェイシェイ」と、民族を特定しているところです。まあ、それ以上特に愚弄するような言葉や仕草があるというわけでもないのですが、そこにはストーリー上「自分の父親の愛人」に対する否定的な感情も込められているので、該当する民族性を持っている人はいい気持ちはしないでしょうね。

ただ、上記の台詞によって民族が特定されていると言えるので、海外のそれ以外の地域では、あまり問題なく使えるのではないかと思います。モンゴルやインドなど、関係ない地域で今度仕事をする機会があったら、ぜひ使ってみたい教材です。


なおこの部分は、かつて有名政治家の愛人だった自分を、社長の愛人である宿泊客へ重ね合わせていく内面描写なんかも、個人的にはとても好きですし、日本語的には、別人の振りをしているときよりも、その別人を自分と重ね合わせて同情してしまうに連れて、表現的にはむしろ第1人称から第3人称的になっていくところも興味深いですね。

この映画を使って学習しているwikiはこちらにあります。
http://wiki.livedoor.jp/uchouten_hotel

なお、言うまでもなりませんが、映画を授業で使うときには、海賊版は使わないでくださいね。
posted by 村上吉文 at 05:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加
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