2015年11月30日

学習スタイル診断サイトを活用しよう!

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、今日も山奥の洞窟の中でお香を焚いて瞑想していますか?

さて、冒険家と一言で言っても、ヨットによる太平洋の単独横断に初めて成功した堀江謙一さんと、80歳でエベレストに登頂した三浦雄一郎さんでは、まったくタイプが違いますよね。三浦さんが船酔してしまうようなタイプだったら海での冒険はできないでしょうし、堀江さんが高所恐怖症だったら山には登れないでしょう。

ソーシャル・メディアを使って自律的に学習する冒険家メソッドの実践者の皆さんも、自分のタイプをよく知り、それにあった学習方法を選択する必要があります。自分に合っていない学習方法を選択すると、それに気がついた場合はすぐに方向転換できるからいいのですが、それに気が付かないと、単にその学習方法や教材が自分に合っていないだけなのに、何となく「英語の勉強っておもしろくないなー」などとモチベーションが落ちていってしまって、いつの間にか忙しい日常に紛れて学習自体から遠ざかってしまうことになります。まあ、僕自身にもそういう経験が何度もあります。

冒険家メソッドでは、学習を開始した時点で手当たり次第にいろいろな学習方法や教材をためしてみることを推薦しているのですが、それにはこうした背景があります。つまり、まずは自分に合った学習方法を発見するのです。

それでは、「自分」とは何なのでしょうか。

僕自身もこの分野は実際に僕とは違うタイプの独習者の話を聞くようになってから興味を持つようになったばかりなのですが、学ぶときに大切な[自分」と言うのは、要するに自分自身の学習スタイルや認知特性をきちんと発見するということではないかと思います。

就職活動するときに、まずは「自己分析」から入りますよね。それは自分がどの業界のどの企業で働きたいかを知るのに非常に役に立ちます。就活生も学習者も、その多様性においては同じなのに、どうして学習者の場合はみな同じ教科書で同じ進度で学ぶのでしょう。おかしいと思いませんか?

さて、学習スタイルというのはいろいろな分類があって、僕自身もその全てを知っているという自負は全くないのですが、とりあえずいろいろなところで一番よく見かけるのはVAKという分類ではないかと思います。VAKというのは視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、運動感覚(Kinesthetic)の3つの言葉のそれぞれの頭文字をまとめたもので、人によっては視覚に偏っている人や、聴覚に偏っていることがあります。視覚に偏っている人がスマホで何度も聴きこむような覚え方をしても楽しめないだろうということは、たぶん想像に難くないでしょう。体を動かすことが好きな人がじっと座ってフラッシュカードを見るのも、たぶん苦痛ですよね。

ただ、問題は自分がVAKのどのタイプなのかを知るのが、ちょっと面倒くさいことです。古めのページなどで紹介されているものとしては、以下の2つがあります。

VAK Learning Styles Survey
http://www.nwlink.com/~donclark/hrd/styles/vak.html

Free VAK visual auditory kinesthetic learning styles test questionnaire
http://www.businessballs.com/vaklearningstylestest.htm

この2つはプリントしてペンなどでチェックすることが前提になっているようで、パソコン等のない教室で使うのには向いています。ただ、チェックしたものを自分で集計しなくてはならないので、そこが面倒くさいです。

自分の回答をウェブ上で入力できるものとしては、以下のものがあります。
Discover your learning style - questionnaire
http://www.brainboxx.co.uk/a3_aspects/pages/vak_quest.htm
これは入力して記録はできるものの、集計はしてくれません。ただし、問題数が20問だけなので、「VAKのうち、どれが一番多いか」ぐらいを知るのはそれほど大変ではありません。また、色を使って記録されていくので、結果の一覧性も非常に高いです。ちなみに、僕は20問のうち最多は9問(つまり45%)のKでした。ただ、それが分かっても、このウェブサイトが自動で診断してくれるわけではないので、「あなたはKに偏っていますからこういう学習方法がいいですよ」というアドバイスがもらえるわけでもありません。(同じサイト内の別のページにはありますが、自分で探さなければなりません)

その点で、以下のサイトは便利です。

What's Your Learning Style? 20 Questions
http://www.educationplanner.org/students/self-assessments/learning-styles-quiz.shtml

このページは実は昨日、ロシア在住の知人に教えてもらったばかりなのですが、このページ上で入力すると、自分がVATのどの要素が多いのかも教えてくれますし、その結果に基づいて「こういう学習方法があなたには向いている」というアドバイスも貰えて、しかもそれが全部一つのページ内なので、非常に分かりやすいです。

ちょっと待て、「VAT」? 

・・・と思ったそこのアナタ、はい、正解です。ここは一般的なVAKの分類じゃなくてVATなんですね。視覚、聴覚、触覚の3つなんです。とは言っても、別にVATという分類にも、おそらくそれなりの理由があるのでしょうし、VやAに分類される人は結果的にVATでも同じでしょう。

VAKに限らなければ、以下のサイトも便利です。全部で7つの指標について、みなさんの傾向を評価してくれます。おまけにレーダーグラフまで表示されますよ。今回の記事の冒頭にご紹介したのが僕のグラフです。

Free learning styles inventory (test, quiz or questionnaire)
http://www.learning-styles-online.com/inventory/questions.php?cookieset=y

難点といえば、質問が70問もあるので、それに答えるのが面倒くさいということでしょうか。最後に名前とメールアドレスを聞かれますが、診断結果がメールで送られてくるというわけではないので、個人情報を入力するのに抵抗がある人は、適当なメールアドレスを入れてしまっても問題ありません。

さて、このようにいくつか学習スタイル診断サイトを体験してみて思ったことは、まだまだ質問の精度に向上の余地があるのではないかということです。一番最後に紹介した70問に答えなければならないサイトが、僕自身の理解の学習スタイルの認識の中では、いちばん自然だったように思います。(ただし、最初に申し上げたように、僕はこの分野を専門とする研究者ではありません)

それから、「学習スタイル」と非常に近い分野に「認知特性」というのもあります。これも最近読んだばかりの本なのですが、医師のつくった「頭のよさ」テスト〜認知特性から見た6つのパターン〜も非常に参考になりました。これを読むと、学習スタイル関係の質問の中に、入力(認知)側の特性と、出力側の特性が混在しているように見えるのですが、僕の個人的な経験では「聞いて書くのが好き」(入力はAで、出力はKかV)というような例とか、「朗読こそが効果的」(入力はVで出力はAかK)というような例もよくあるので、これらは分けたほうがいいのではないかと思っています。

以上のように、まだまだ学習スタイルの研究は発展の余地があるようには思いますが、強調したいことは、使えないレベルでは決してないということです。小学校の一年生だって、今ではずいぶん多様化が進んでいます。大学生や社会人を対象に教える機関では、そろそろ「よい教授法」などを追求するのをやめるべきではないでしょうか。どんな教授法であっても、学習者の認知特性や学習スタイルによって、合う時と合わない時があるのです。学習者に合っていれば、それが「よい教授法」、もしくは「よい学習方法」なのです。

多様化の進んだ現代において、教師の役割は、「よい教え方」ができることなのではなく、「相手に合った学び方」を提供できることにあります。そのためには、まずは相手のニーズやレディネスはもちろん、学習スタイルや認知特性なども知る必要があります。

そして冒険は続く。

【参考資料】
「学習スタイルの概念と理論 ― 欧米の研究から学ぶ」
青木 久美子
http://www.code.ouj.ac.jp/media/pdf2-1-3/No.3-18kenkyutenbou01.pdf
(いろいろな理論やモデルを俯瞰的に見るのに適しています)

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posted by 村上吉文 at 00:54 | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加

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